2010年7月9日金曜日

【財政債権】 増税・減税論議

岩上安身氏の呼びかけで「国民財政会議」なるものが開催され、Ust中継もされていた。ゲストスピーカーに経済アナリストの菊池英博氏、ほか元国会議員・二見伸明氏、税理士・荒川氏。

当日の様子は、岩上氏のHPでも確認ができるし、Rolling Bean 女史がブログにアップをしている。
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10581753057.html

このシンポジュームの中で、菊池英博氏が産経新聞に寄稿(インタビュー)をしていると語っていた。下の記事は、その産経の記事である。
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【金曜討論】消費税率引き上げ 菊池英博氏、伊藤元重氏
2010.7.9 08:42
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100709/plc1007090846003-n1.htm

 菅直人首相が「消費税10%」に言及したことにより、消費税率の引き上げ問題が参院選(11日投票)の大きな争点になっている。今度こそ政治は増税問題に正面から向き合えるのか、有権者の関心も高い。「日本の財政は危機的な状況にあり、一日も早く消費税率引き上げに向けた議論を始めるべきだ」という東京大学大学院教授の伊藤元重氏と、「まず景気対策を実施し、『強い経済』を復活させれば税収は自然に増える」と主張する日本金融財政研究所長の菊池英博氏に聞いた。(喜多由浩)

 ≪菊池英博氏≫
 
「強い経済」復活で税収増
 --菅首相が「消費税10%」に言及したが
 「菅首相が掲げた3つの柱(強い経済、強い財政、強い社会保障)には基本的に賛成だ。ただし、順番を間違えてはいけない。日本の経済は平成13年以降、小泉構造改革・自公政権のデフレ政策によって、税収が激減してしまった。今や日本の経済力は20年前、財政力は25年前の水準に戻っている。まずは景気対策をしっかりやってデフレを解消し、『強い経済』を復活させることが先決だ。そうすれば名目GDP(国内総生産)が上昇し、税収は自然に上がる。逆に『財政』健全化と称して、先に消費税を上げると経済が落ち込みマイナス成長になる。(菅首相は)財政出動をしたくない財務省や増税派の政治家に取り込まれてしまったのではないか」

 ●デフレには需要喚起策

 --消費税の問題点は
 「消費税は、すべてにかかわる大衆課税であり、波及が大きい。生鮮食料品から運賃、石油…とみんな上がってしまう。実際アメリカは1930年代のデフレの際に消費税を新設したためにGDPがデフレ前の半分になってしまったことがある。一方、昨年就任したオバマ大統領は就任早々、約70兆円の緊急補正予算を組んで景気対策を取り、同時に法人税、所得税の最高税率引き上げを実施した。日本の民主党政権も、3年間で100兆円規模の緊急補正予算を組んで積極的な投資を行い、需要喚起政策を取るべきだ。デフレは『財政』を使わねば解消しない」

 --90年代から2000年代初めの100兆円規模の財政出動は、「効果がほとんどなかった」と批判されたのではなかったか

 「その評価自体が間違っている。これによって、約100兆円のGDPの押し上げ効果があったことは、平成16年の参院予算調査室の報告にも書いてある。この対策がなければGDPは400兆円程度にまで落ち込むところだった。それをムダにしてしまったのが小泉構造改革の緊縮財政だ」

 ●財政「危機的」ではない

 --積極的に公共投資を行おうにも今の財政状況では難しい

 「そもそも日本の財政は『危機的な状況』などではない。財務省が掲げる『GDP比180%以上』などという債務は実態を表していないからだ。正しくは、(国民の負債ではない)特別会計の債務と社会保障基金の積立金を引いた『純債務』で見るべきで、これなら債務は半分になってしまう。財源もいくらでもある。特別会計のいわゆる“埋蔵金”は昨年度決算で約70兆円。また、日本は世界最大の『債権国』であり、昨年末現在で官民合わせて267兆円の対外債権を保有している。この利息と配当だけで年10兆~15兆円、預金の純増分が10兆円もあり、建設国債の原資になるのだ」



≪伊藤元重氏≫
 
「財政健全化」へ議論急げ

 --「消費税」は「選挙には鬼門」と言われてきた。菅首相が参院選前に「消費税10%」に言及したのは評価できるか

 「(消費税10%は)自民党も掲げているし、持ち出しやすい環境にあったのは確かだろう。日本の財政問題は、過去の積み上がった借金よりも、少子高齢化社会において、今後毎年1兆円規模で膨らんでいく医療や年金などの社会保障費をどう抑え込んでいくかが、より深刻な問題だ。確かにまだまだムダも多いのだが、『歳出カットができるまで増税をしない』としばってしまえば、たぶん永遠にカットできないであろう。日本の財政は危機的な状況であり、『しっかり財政健全化に取り組む』という明確なメッセージをマーケットに向けて出すことが大事だ」

 ○日本の債務は世界2位

 --財政危機といわれても国民にはあまりピンとこない

 「日本の債務(GDP比180%以上)はジンバブエに次いで世界2位だ。他国の例をみれば、だいたいGDP比100%ぐらいの水準で破綻(はたん)している。もっと危機感をもってほしい。『日本は外国に借金がないではないか』という人もいるが、これは持続性はあるが、いったん問題(日本国債の暴落など)が起これば一番危ない。グローバルマネーの選別は厳しく、マーケットは注視している」

 --消費税増税が景気に悪影響を与えるという声が消えない

 「確かに景気の波のタイミングを誤ればそうなるだろうが、経済学の教科書には、増税をしても全部歳出に回せば有効需要は増える、と書いてある。つまり、何に使うのかが大事だ。今の日本は、医療、介護、教育といった分野で財政的に閉塞(へいそく)感があり、そこへ資金を流して刺激してやる必要がある。国民がお金を使わないのはこうした分野に不安があるからだ。そこが安定すれば消費に回るだろうし、地域の雇用も生まれる。それに消費税は今すぐ上がるわけではない。上げるにしても、税率をどうするか、段階的に上げるのか…いずれにしても簡単な話ではない。10年先20年先の国家の計を考えて、できるだけ早く『議論』を始めておくべきだ」
 
○法人税増税では失速

 --消費税は、逆進性(収入が少ない者に負担率が高い)への批判がある。むしろ、法人税や所得税の最高税率を上げるべきだという意見もあるが

 「所得税のフラット化(所得にかかわらず同率を負担)は世界の流れであり、逆進性を問題にしているのは日本ぐらいだ。格差を税で修正するのではなく、歳出面で医療、年金、教育など『平等なサービス』を受けるのが一般的だ。経済のグローバル化が進むなかで、ゆがんだ形の累進課税や法人税増税をやれば、経済そのものが失速してしまうだろう」

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【プロフィル】菊池英博
 きくち・ひでひろ 昭和11(1936)年、東京都出身。東京大教養学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。ミラノ支店長、豪州東京銀行取締役頭取などを歴任。平成7年、文京女子大(現文京学院大)教授。専門は国際金融、日本経済。19年から、日本金融財政研究所長、経済アナリスト。
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【プロフィル】伊藤元重
 いとう・もとしげ 昭和26(1951)年、静岡県出身。東京大経済学部卒。米ロチェスター大大学院経済学部博士課程修了。東京大経済学部教授、同経済学部長、同大学院経済学研究科長などを歴任。財団法人総合研究開発機構理事長も務める。専門は国際経済学、ミクロ経済学。

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