2010年6月17日木曜日

【菅政権】 小野理論 21日追記

経済オンチ菅首相が学んだ
「小野理論」と消費税増税
(AERA 2010年6月21日号掲載) 2010年6月17日(木)配信


新内閣は、懸案の消費税シフト。引き上げに積極的な顔ぶれが並ぶ。
参院選の結果次第では、早ければ来年4月。慎重なはずだった新首相の転換点は?

「苦手」とされる経済政策をめぐり、菅直人首相の強気の発言が続いている。発言の裏を探っていくと、「苦手」ゆえの悪戦苦闘ぶりと微妙なバランス感覚が浮かび上がってくる。

 今年初め、副総理兼財務相だった菅氏は、日銀に対し、しきりにインフレターゲットの導入を促していた。適度な物価上昇率を目標にすることでデフレからの脱却を目指す狙いだ。

 このインフレターゲットの考え方を伝授したのは、本人は認めたがらないが、「霞が関埋蔵金」を暴露した財務省OBの高橋洋一・嘉悦大学教授。菅氏は何度も接触していたが、高橋氏は財務省出身としては異端中の異端で、財政再建のための増税には賛成していない。

「経済成長で再建したほうがいいに決まっている。3%の成長率があれば、ほんの少し歳出削減するだけでいい。自然増収があり、増税の必要はない」

 と高橋氏。インフレターゲットによるデフレ脱却という理論に、菅氏は強い関心を示した。

 しかし、それは2月まで。同月なかばには、反対に増税の可能性を語り始めた。この「転身」に、高橋氏は「財務省に取り込まれたのではないか」と見るが、事情はそれほど単純ではないようだ。

経済数学も勉強し

 インフレターゲットをめぐる菅氏の発言を追ってみると、目標の成長率については1%から2%の間に置き、高橋氏の言う「3%」は慎重に避けている。

 このころ菅氏は、経済学者の小野善康・大阪大学教授と、マクロ経済に関して集中的に勉強会を開いていた。2月から5月まで月に2回ほどの間隔で、合計6回ほど開いた。

 菅氏と小野氏は、出身の東京工業大学時代に数年間重なっているが、互いに面識はなく、10年ほど前、月刊誌の対談で初めて顔を合わせた。

 勉強会は、小野氏の著書『金融』の内容の解説で始まった。過去に何十人もの政治家を「生徒」にしてきた小野氏は、最初は初心者向けの簡単な話をしていたが、すぐに経済数式を展開するレベルに入っていった。

 菅氏は一生懸命ノートを取り、「ちょっと待ってくれ」「もう一度レクチャーしてくれ」と繰り返した。理学部出身の菅氏には経済数学に対する違和感はなかったようだ。

 勉強会では何度も議論を繰り返した。両氏とも納得しなければ引っ込まなかった。

「自分の頭で考える、政治家としては稀有な存在」

 というのが小野氏の菅氏評だ。その議論の果てに、最初は、

「増税かあ。選挙に負けるなあ」

 と言っていた菅氏の姿勢が、転身した。

 菅氏に増税路線を促した小野氏の理論はシンプルだ。

「増税して、その分をすべて何かの事業の給料で支払い、人々に働いてもらう。そうすれば、人々のお金は減らずに失業率が減り、消費が増えて税収も増える。デフレは消えますよ」

「雇用が消費を決める」

「増税すれば消費が冷え込む」とするのが一般的な見方で、菅氏も当初、その見方にこだわったが、小野氏は「消費が冷え込む原因は増税ではなく、その裏で実施する財政緊縮政策だ」と答えた。

「今日の所得だけでは消費は決まらない。明日の雇用が確保されているかどうかで決定的にちがってくる。だから、一番大事なことは雇用を増やすことだ。まず借金を返すための増税ではなく、経済をよくして税収を増やし、その分で借金を返すということです」

 小野氏によると、菅氏はじっと耳を傾けていた。菅氏が増税路線を示し、記者会見のたびに口にした「強い経済、強い財政、強い社会保障」という言葉。このうち「強い経済と財政」は、小野氏の理論によるようだ。

 増税分を使ってどのような種類の雇用を増やしていくか。小野氏は、どんな種類の事業も経済効果は同じだと見ている。

 菅氏が「成長分野」として挙げる介護や医療などの社会保障、環境、教育の分野は、菅氏の独自の考えのようだ。

 菅氏は、小野氏の理論を聞く一方で、財務省主税局の官僚には、その理論の現実性などについて意見を求めている。主税官僚は、増税を打ち出す小野氏の論理を否定はしないが、「少数派」という見方をあげた。

まずは所得税で

 財政再建を第一に考える主税官僚にとっては、小野氏の増税論はうれしいが、入ってくる税収はそのまま財政再建に充てたい。このため、「まず借金を返すための増税ではない」という小野氏の論理がじゃまになる。「少数派」と位置づける報告の裏には、菅氏と小野氏の間を遠ざけておく財務省の深謀遠慮が見える。

 菅氏は、小野氏と財務省の考えを見据えながら、微妙にバランスを保っている。その上で菅氏が真っ先に手をつけたい税制改革は、所得税の累進性強化だろう。

 現在の所得税は、課税所得に応じて、5%から40%までの6段階の税率構造になっている。1986年当時の15段階(最高税率70%)に比べると、格段にゆるやかになり、高所得者優遇の税率になっている。

 市民運動家から出発して総理にまで上り詰めた菅氏は、まず、金持ち優遇のこの構造を変えたい。圧倒的に人数の多い低所得者に加えて、連合組合員の多い中所得者の支持を集めるうえでは効果的な政策だ。高所得者を束ねる圧力団体もなく、比較的容易な改革でもある。

参院選後に動く

 しかし、高所得者が少ないため、この改革で上がる税収は小さい。最低税率の5%を6%に上げれば7千億円弱の税収が入るが、40%を41%に上げても400億円弱しかない。

 このため、1%の税率アップで2兆5千億円が転がり込んでくる消費税の増税が早い機会に日程にのぼってくることはまちがいない。

 その際、税率アップが低所得者に痛い消費税の逆進性をゆるめるために、民主党の政策集に入っている消費税額控除制度が導入されそうだ。低所得者に限り、あらかじめ決められた消費税額分を還付する仕組みだ。民主党の支持基盤に極力配慮し、「市民派・菅総理」のイメージを保つ戦略だ。

 ただ、「増税によって家計の可処分所得が減ると、消費を冷え込ませる」(上野泰也みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)という心配は、依然として経済界には根強い。

 菅氏は、11日の衆院所信表明演説で「税制の抜本改革に着手することは不可避」と明言し、参院選のマニフェストにも税制改革の与野党協議機関設置が盛り込まれることになった。参院選後、早ければ来年度の増税を目指して政局が動いていく公算が強い。

編集部 佐藤 章、山下 努

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インタビュー:失業率3%へ消費税上げも=小野・阪大教授
2010年 06月 21日
http://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-15903920100621

 [東京 21日 ロイター] 菅直人首相の経済ブレーンで、内閣府参与を務める小野善康・大阪大学教授はロイターのインタビューに応じ、菅氏が提唱する「第三の道」とは雇用創出を起点に需要拡大やデフレ克服、財政再建を進める政策と説明し、そのために資金が必要であれば増税も構わないと語った。

 雇用創出に向けて「消費税は来年からすぐにでも上げたほうがいい」とし、現在5%程度の失業率を「3%に下げるまで人を雇えるお金が必要だ」との見解を示した。

 また、増税分は借金返済に充てるのではなく、雇用創出とその所得支払いにまわすべきだと主張するとともに、税収の使途は、福祉目的税のように限定しないほうがいいとの見解を示した。

 デフレ克服については、デフレギャップを残したまま「お金の発行量を増やしてもデフレはなくならない」と指摘するとともに、日銀にデフレの責任を押し付けるべきではないと述べた。その上で、日銀は金融緩和をすでにかなりの程度やっており「これまで通りの金融緩和の姿勢を保ってほしい」と語った。

 インタビューは18日に行った。概要は以下の通り。

 ――菅首相の目指す「第三の道」という経済財政政策はこれまでの政策とどう違うか。

 「過去の自民党政権下で取られた第一の道は、消費者にお金をばらまけばいいというオールド・ケインジアンの発想であり、無駄な公共事業や減税、補助金を指す。第二の道は構造改革そのもので、1990年代以降に生産能力が余っているにもかかわらず生産能力を上げようとした小泉・竹中改革。双方に共通するのは、労働資源を活用することが頭になく、お金を使うか倹約するしかないこと。これでは需要と雇用は生まれない」

 「第三の道は、人に働いてもらうことが目的。そのために資金が必要なら、増税しても構わない。そうすれば当初の増税分は家計に所得として返るので、その時点で家計負担はないし、サービスや設備も提供される。雇用が増加してデフレも雇用不安も緩和されるため、消費が刺激され、経済も成長して税収が増え、財政も健全化していく」

 ――大きな政府になるとの懸念がある。

 「日本の公共部門の対GDP比の財政支出、人口1人当たりの公務員数は、OECD(経済協力開発機構)加盟国中でも最低水準。その意味で1990年代から最小政府だった。そもそも私が言っているのは公務員を増やせということでなく、あくまで余った労働資源を活用するということであり、民間へのサポートを政府がするということ。たとえば介護士の待遇をよくして雇用を増やせば、若い福祉職員の所得が上がり、デフレも緩和され消費も増えて税収も上がる。逆に民間に任せきりで政府が活動を減らせば、かえって失業者が増える。それは小泉構造改革で明らかになった」

 「財政支出を行う際、お金を渡すだけでは家計に埋もれて需要に結びつかない。また、必需品を供給しても、それまで買っていた分を減らすだけ。必需品ではなく、政府が何もしなければ十分に供給されないが、全くの無駄ではない分野に配分する。例えば介護や教育、壊れそうな橋の修繕や自転車道の整備など社会資本整備がよい。私は規制改革や公共事業反対論者ではない。人を働かせて雇用と新しい需要を創ることこそが重要だ」

 ――具体的に政府がすべき支援策は。

 「雇用などの助成金がわかりやすいかもしれない。政府が必要施設を作って無償で提供し、あとは民間で自由に競争してもらってもいい。介護ロボットの支給でもいい。どれも公務員を増やさず、民間の需要や雇用を増やすことができる」

 「子ども手当の現金支給は愚策。必需品を配るのも意味がない。あったらいいが、何もしなければ買われない物やサービスなら、その分の便益が増え、新たな雇用も生まれる」

 ――菅首相は消費税の増税を含む税制改革について2010年度内に取りまとめたいと表明。当面の消費税率は10%を1つの参考にするとしている。

 「消費税は来年からすぐにでも上げたほうがいい。数字については示せないが、失業率を3%に引き下げるまで人を雇えるお金が必要で、そうであればかなりの増税が必要となる。私は消費税が特にいいと言っているのではない。本来なら所得税を引き上げ、特に最高税率を上げて累進性を高めればいい。高所得者はお金を使わないからだ。また相続税の増税でもいい」

 「要は増税分を借金返済ではなく、雇用創出とその所得支払いにまわすということだ。それによって増税分の雇用が生まれる。低所得者の収入が増えれば、消費も増えて税収も上がる。増税による税収の使途は、福祉目的税のように限定しないほうがいい。使途は国民が意見を出して政治家が判断すべきことだ。目的税化してお金を配るだけでは雇用は生まれない」

 ――菅首相は2011年度までのデフレ克服を重要課題に挙げているが、これに対して日銀の政策をどう評価するか。

 「デフレギャップを残したままでは、お金の発行量を増やしてもデフレはなくならない。デフレの克服は総需要と雇用の拡大によってデフレギャップを減らすことでしか達成できない。バブル以前の需要不足でなかった時代には、ハイパワードマネー拡大が物価上昇につながったが、バブル以降はまったく効いていない。日銀も財務省も、それぞれ貨幣と国債という金融資産によって、最大限の信用拡大を行っている。国債への不安の高まりも、これが限界に近づきつつあることを反映している」

 「いま日銀ができるのは、貨幣の信用を維持できる範囲で、できるだけ金融緩和をすることだが、すでにかなりやっている。したがって、これ以上、日銀に責任を押し付けるべきではなく、これまで通りの金融緩和の姿勢を保ってほしいと言うべきだ」

 *小野氏の略歴は以下の通り。

 小野善康(おの・よしやす) 東工大卒、東大大学院博士課程修了。経済学博士。菅首相とのつき合いは10年前に雑誌で対談して以来。菅氏が前任の財務相就任後は、本格的に政策立案について助言を行っている。59歳。

 (ロイターニュース 梶本哲史記者、竹本能文記者、伊藤純夫記者)

【菅内閣】 消費税発言

今回のマニフェストは、小沢幹事長時代に設置された「政権公約会議」が主導し作成された。
これは、間違いない。

ただし、途中からメンバーが入れ替わり、当初作成されていたものと内容が違うことになる。つまり、枝野や野田が、玄葉がマニフェストは前執行部が決めたと言うのは正確に言うと正しくない。

*マニフェストは企画委員会で素案を作成し、政権公約会議で最終的な調整をする事になっていた。

企画委員会には3つの研究会があり、その中に「消費税などを担当する分権・規制改革研究会」があり玄葉光一郎が会長であった。

*4月2日地域主権・規制改革研究会 第1回総会 「財源なくして政策なし」
この玄葉は当初から消費税率引き上げ推進派であった。
*5月6日地域主権・規制改革研究会の提案が提出される。

当初「政権公約会議」には高嶋良充副幹事長や山岡賢次・前国対委員長といった小沢氏側近と言われるが方がメンバー入っていた。

彼ら小沢氏に近い方々は増税反対派であり、消費税率の引き上げを前面に出した税制の抜本改革をマニフェストに盛り込むなどもってのほかであった。そのため消費税の扱いについて「政権公約会議」ではかなり揉めていたという。(新聞情報)

6月2日に小沢氏が幹事長を辞任した事により高嶋氏・山岡氏が政権公約会議のメンバーから外れたのではなく、外されることになった。(党の関係者

6月11日、その結果、高嶋氏・山岡氏等の消費税率の引き上げに反対する人がいなくなり、消費税の引き上げマニフェストへ盛り込むことが、全会一致で決まったと。(党の関係者)


6月17日、民主党マニフェスト発表会見で菅自らマニフェストの8ページに明記された「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」との部分について、説明し始め。

ア)今年度中に消費税制の改革案を取りまとめたい。
イ)税率は自民党がマニフェストで提案している10%を参考にする。
ウ)引き上げ実施前には、国民に信を問う。

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菅の頭には、財務省の引き上げ率15%が頭にあったのだろう。それから考えたら自民党の10%が出てきたことで、超えられないハードルだとは思わなくなってしまったのだろう。

参院選後に「与野党協議会」を設置し、具体的な議論が開始する。同時に、マスコミに作られた、「財源が足りなくなりますが、消費税の引き上げに賛成か反対か」という設問で作られた消費税率引き上げ論の賛成多数というマヤカシの世論調査に菅は乗せられたと言うことである。

一番、驚いたのは、民主党議員と有権者である。一年前(2009年夏)に4年間は消費税を引き上げないとする公約を掲げ衆議院選挙を戦ったのである。それが、「引き上げ実施前には、国民に信を問う。」と言うことは、状況により引き上げ実施を早めるつもりであれば来年でも総選挙を行うこともあると言うことになる。国民の信を問うて民主党が負けても、自民党と連立をしたならば法案は通る事になる。