2009年4月3日金曜日

【日米同盟】 海賊対策

<なぜ すぐ自衛艦 ソマリア>

海保の国際的取組み黙殺

梅田正己
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/watching000.htm 

 海賊対策のためとして、護衛艦2隻が「給油海域」のインド洋を越えソマリア沖へ出航した。

 しかし海賊取締りは戦争ではない。戦争ではないのに、なぜすぐ「軍艦」出動となるのか。この疑問をマスコミも素通りしたまま事態は突き進む。

海賊対策は海保の役割

 海賊の取締りは、本来海上保安庁の仕事だ。だから海上保安庁の巡視船も武器を装備し、ヘリコプターも搭載している。

 そして実際、そのための訓練も行われてきた。同庁のホームページを見ると、今年1月の「海保ニュース」№9に、「官民連携による海賊対策訓練の実施」として、次のような記事がある。

 「(昨年)11月17日及び12月12日の両月、東南アジア公海上において、東南アジアへ派遣中の巡視船「しきしま」と日本関係船舶及び関係者により海賊対策訓練を実施しました。

 同訓練には、日本関係船舶が海賊船から追跡・接近等を受けた場合を想定した実働訓練を実施し、同船へ海上保安官を移乗させ安全確認を行う訓練……等を実施しました」

 こうした共同訓練は以後も継続して行なわれている。2月20日付の朝日には同社の松井健記者による訓練光景の写真と記事が掲載された。

 「フィリピンのマニラ湾で19日、日本の海上保安庁とフィリピン沿岸警備隊が海賊対策の連携訓練をした。海賊に襲われた日本の商船をフィリピン沿岸警備隊の特殊部隊が制圧するシナリオ。マニラに派遣された第11管区海上保安本部の巡視船乗組員がフィリピンの隊員に臨検などの方法を指導した」

海保の国際貢献の実績

 海保の巡視船の船腹には、JAPAN COAST GUARDと書かれている。「日本沿岸警備隊」だ。しかし東南アジア海域まで出かけて他国との合同訓練を積んできた。

 『世界』3月号の前田哲男さんの寄稿「海賊対策にはソフト・パワーを」によると、IBM(国際海事局)の統計では、00年当時世界の過半数を占めた東南アジアの海賊発生件数(262件)は、08年にはインドネシア海域で28件と9割減、マラッカ海峡ではわずか2件に激減したという。

 そしてこのめざましい成功の基礎には日本のODAによる巡視船提供や共同訓練などがあったとして、前田さんはこう評価している。

 「日本は海上保安協力を通じ、海上警察の執行機関として重要な国際貢献を果たしてきた」

 日本の海上保安庁はこのような国際的実績をもつ。一方、海上自衛隊は海賊取締りの訓練などやってはこなかった。今回のソマリア沖にも海上犯罪対策の専門家である海上保安官が同行する。

 海賊対策は海上保安庁の仕事だ。にもかかわらずソマリア沖海賊問題に関しては、どうやって自衛艦を出すかだけが取り上げられてきた。海保が取り組んできた国際的な努力は今も黙殺されたままだ。

 冷戦後、自民党と自衛隊幹部を突き動かしてきたのは、何とかして自衛隊を海外に出したいという衝動だった。カンボジアからルワンダ、ゴラン高原、インド洋、イラクと、足取りを見れば、それは明らかだ。そして今回も、その衝動が海保の国際的取組みの実績をはじき飛ばし、護衛艦2隻を遠くアフリカ沖へと向かわせたのである。

機関紙ジャーナリスト 2009年3月25日号

追記

ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文について
平成21年4月3日

 平成21年4月3日、中曽根外務大臣とユスフ・ジブチ外務・国際協力大臣は、「ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の書簡」の署名及び交換を行いました。

 この交換公文は、海賊対処に従事する自衛隊等が円滑に活動を行うことができるよう、自衛隊の基本的な活動拠点となるジブチとの間で、ジブチにおける自衛隊や自衛隊員等の法的地位を適切な形で確保することを目的とするものです。

 我が国としては、ソマリア沖海賊の根絶に向け、引き続き、ジブチを始めとする周辺諸国と緊密に協力していく考えです。