日本」では、マスメディアに対する信頼度が高いようである。しかし、世界的にみたら、それが異常な事のようである。なぜなら、新聞社もテレビ放送会社も企業なのである。企業であれば当然、利益優先の部分があるのが当然と考えるべきであろうか。
宮脇磊介「騙されやすい日本人」より
新潮文庫, 2003.3.1 発行、ISBN 4-10-116421-5
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4101164215
#(主張の全体的方向性には、ある種の危惧を感じたが、政府の中枢近くにいた著者による、現代日本の構造的問題の全貌についての貴重な証言になっている。以下、国会運営とマスメディアに関する部分だけ紹介。)
p23 「国民の目を永田町の実態から隔離してきたカベは、いわゆる55年体制下において限りなく有効に機能してきた。それは、与党自民党の中での密室政治にとどまらず、与野党間の密室談合によって作られたシナリオに沿った国会運営をもたらすことで、その真骨頂を発揮する。
これがいわゆる国対型国会運営、「国対政治」といわれるものである。そして、政治記者はシナリオ通り国会対策委員会のいわゆるウラ国対で党利党略の調整の結果まとめたシナリオを尊重して、そのシナリオにあった記事作り、紙面構成をしてきた。
・・・自民党は国会対策上、重要法案を最終的に会期内に可決するために、いかにも野党の立場を尊重して五分五分の与野党対決をしているかのようなシナリオを、野党と談合の上で作る。国対委員長が、そのシナリオライターであった。政治記者は、そのシナリオを作成する経緯がわかっていても、紙面で暴露するようなことはしない。むしろ、時にはシナリオ作りに加担することさえあったといわれる。このシナリオには、必ず、「審議拒否」が重要な意味を有する。つまり、白熱シナリオのクライマックスである。
・・・野党は審議に復帰し、法案成立のタイムリミットにぎりぎりで間に合う。
・・・与野党談合、政治記者黙認の共同作業が生んだお決りの展開が繰り返されていく。」
#(国立大学法人法案の審議では、与野党間は談合はなかったと信じたいが、参議院文教科学委員会の最後2回の審議では、民主党議員の質疑内容と態度に、その疑念を抱かせるものがあった。)
p186「 行政とジャーナリズムのとの癒着の最大の場は、つとにその弊害が指摘されている記者クラブ制であろう。記者クラブは、政・官・業いずれとの間にも存在するが、政治家と番記者との関係に次いで癒着度が高いのは、官庁記者クラブであるといわれる。長年の記者クラブと行政官庁との間の歴史の中で、次第に記者の独自取材や調査報道の力が削がれ、行政官庁のいわゆる「発表もの」に依存するようになってしまった。「新聞の官報化」は、かねてから指摘されているところである。」
p192 「癒着によりジャーナリズムが書かないこと、ジャーナリズムの腐敗である。マスメディア自身も国民も「癒着は腐敗である」との厳しい見方で臨まないと、マスメディアのモラルハザードが進行する。日本のマスメディアの場合には、ニュースソースとの関係において、意識的・理性的に選択されたポリシーとしてのオープンな協力関係と、こうした癒着とがはっきり区別して意識されていないために、緊張感が欠けて腐敗を生んでいるのであろう。」
p194 「私が内閣広報官の仕事をしている間に自分自身で感得した言葉に、"毒をまわす"という語がある。・・・「魂を奪う」とか「肝を抜く」という言葉は承知していた。「毒をまわす」とは、丁寧に言えば「ご理解いただき、ご協力を賜る」ということである。
・・・毒をまわす手法は、
・・・システムとしても形成されている。
・・・その最も有効なシステムが「叙勲」をエサに魂を奪い虜にすることである。
そのシステムの典型は、政・官が特に役所を窓口として、政・官においてこれから実現しようとする政策に対して批判勢力になりかねないマスメディアの関係者・評論家・学者や財界人などを懐柔するための段階的システムである。・・・新聞関係では、特定の新聞社の社長が新聞協会の会長を順に務めるとになっているが、会長経験者には、勲章、それも勲一等瑞宝章が授与されるとが慣行として定着しつつある。新聞人にあっては、叙勲を辞退した人がどれだけいるであろうか。・・・」
国立大学独立行政法人化問題週報 NO118 目次
Weekly Reports No.118 2003.7.21
http://ac-net.org/wr/wr-118.html
総目次:http://ac-net.org/wr/all.html
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[0] 内容紹介
[0-1] 与野党の談合が推測された国対政治
[0-2] 最大の功労者はマスメディア。
[0-3] 諸問題の基盤をなす構造的問題の解決が大学復興の近道
[0-4] 国公私立大学通信の転載
[1] 7/9 12:30 am 国立大学法人法案に対する議員別投票結果
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/vote/156/156-0709-v001.htm
[2] 宮脇磊介「騙されやすい日本人」
新潮文庫, 2003.3.1 発行、ISBN 4-10-116421-5
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4101164215
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[0] 内容紹介
[0-1] 与野党の談合が推測された国対政治
国立大学法人法が7月9日に参議院本会議で可決されました[1]。
この週報は、国立大学の独立行政法人化政策の問題性を大学内外に理解してもらうことを主目的として2000年3月に発刊を始めたものでしたが、最後の段階では、当事者である国立大学関係者自身の意見表明などの行動を喚起する方に時間をとられ、大学外のみなさまに訴える余裕がなく、残念でした。
前号を発行した6月16日以降、参議院文教科学委員会での審議が紛糾し、会期末の6月18日までには成立せず、国立大学法人法案等は廃案または継続審議となるべきものでした。しかし、会期延長の中で、実質的な審議がないまま、委員長の職権による強行採決が行なわれ、可決されました。本会議では賛成131反対101で、与党議員の中でも棄権が9名あるというきわどい結果でした。しか
も、23項目もの付帯決議がなされ、国会自身が「欠陥法案」であるという註釈付きの可決となりました。
百年の一度の大改革にたいしても、数を頼む与党の無責任で粗雑な政権担姿勢が、国会対策委員会による議事運営[2]に現れていたと感じましたが、最終的には、野党の一部の「談合」的姿勢にも、失望は禁じえませんでした。
[0-2] 最大の功労者はマスメディア。
旧文部省が1999年に国立大学を独立行政法人化する方針に転換したときから、国立大学全体が独立行政法人化を既定事実として法人化対策に終始しようとしていたことに、当事者意識の希薄さに編集人は驚きました。また、独立行政法人化で大学の自主性が増すという政府見解を執拗に報道しながら、その問題点は一切報道しようとしないメディアの偏向に驚きましたーー国立学校設置法・国立大学特別会計法・教育公務員特例法などの法によって運営的・財務的な独立性がかなり保障されている国立大学制度を廃止し、政府の強い管理下に大学を置く、という点を一切報道しようとしなかったのです。
これらのことに危惧を頂き、主に大学関係者に対し、慣れない広報活動を行ってきましたが、焼け石に水のようでした。マスメディアにより毎日数千万人にばらまかれる偏った情報の効果を、週に一回、千数百人に配布するメールマガジンの情報で打ち消すことなど、できようがはずはありません。(その点で、4月以降に野村さんが中心となって行われた4回にわたる意見広告は多大な効果がありました。)
国立大学法人法可決の最大の「功労者」はマスメディアです。その功の中心にいた「文教族記者」の一部が、教員あるいは理事として国立大学法人に「天下る」ことは必至でしょう[2]。
[0-3] 諸問題の基盤をなす構造的問題の解決が大学復興の近道
今後は、国立大学法人制度の「白紙」の部分を文部科学省と国立大学協会が協力して埋めていくのでしょう。しかし、国立大学協会が政府の言いなりの存在であることが、この4年間の行状により、そしてなにより、法案公表から可決までの4ヶ月間の沈黙により、白日の下に曝されましたので、政府が国会の委任を受けて思いのままに国立大学法人制度を作っていくことを妨げるものはもはや何もないでしょう。
長期的に種々の弊害の発生が予期されている国立大学法人制度への移行が断行されたのと同じような問題は、種々の分野で起きています。問題の解決を阻む諸政策が一部の人たちの利益のために実現されることを可能にする構造が存在することの方が、ここの問題より深刻ですが、特に、情報支配に伴う重い責任への自覚がマスメディア界全体に欠如していることが深刻な問題です。
マスメディアによる情報支配を無効化するための技術的契機はすでに準備されていますが、ここでも問題となるのは情報の「信頼性」や「質」です。これを組織的に確保するためには、大学関係者の多岐わたる取組みが必要となります。そのような活動を通して、荒廃した日本の復興が可能となる土壌が形成されていけば、大学の存在意義は明確となり、場当たり的な大学政策の連発で疲弊し荒廃が進んでいる日本の大学界全体の復興は、おのずとなされることでしょうーー夢物語のようですが、そういった社会全体の行く末とリンクした長期的なビジョンを大学界内外で多くの人が共有しなければ、大学の復興などありえないと思います。
[0-4] 国公私立大学通信の転載
今後は「国公私立大学通信」を配信させて頂くことにします。これは、「国立大学独立行政法人化の諸問題」サイトのウェブログの見出しとリンクを紹介するものです。(編集人)
行政を代弁して憚らない記者達
朝日新聞2003年7月21日 社会部 長谷川 玲 記者
「自立に向け意識改革をーー法人化される国立大学」
報道機関から政府広報紙への大手紙の退化を証明する歴史的記事といえるだろう。大学関 係に長く携わっていて文科省とも知己の多い「族記者」の一人なのであろうか、 毎日新聞2003年6月23日付の横井信洋記者のエセー「国立大学教員よ甘えるな」と同じ趣旨の内容であることにも驚きを覚える。どこまで政府の肩を持てば気が済むのであろうか。大手紙(読売・朝日・毎日)のみが示す余りに偏った記事は、安く土地を譲ってもらった政府への負い目 を証明してしまっていると言えるのではないか。なお、都立大学の長谷川宏氏が長文の公開質問状を長谷川玲記者に送っている。
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