2014年8月11日月曜日

原発利権

関電、歴代首相7人に年2千万円献金 元副社長が証言 藤森かもめ、村山治 2014年7月28日03時41分 関西電力で政界工作を長年担った内藤千百里(ちもり)・元副社長(91)が朝日新聞の取材に応じ、少なくとも1972年から18年間、在任中の歴代首相7人に「盆暮れに1千万円ずつ献金してきた」と証言した。政界全体に配った資金は年間数億円に上ったという。原発政策の推進や電力会社の発展が目的で、「原資はすべて電気料金だった」と語った。多額の電力マネーを政権中枢に流し込んできた歴史を当事者が実名で明らかにした。 • 金を渡すと角さんは「頂いたよ」 • 関電からの2千万円 元首相側「初耳」「わからない」  内藤氏が献金したと証言した7人は、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登の各元首相(中曽根氏以外は故人)。  内藤氏は47年に京大経済学部を卒業し、関電前身の関西配電に入社。62年に芦原(あしはら)義重社長(故人)の秘書になり、政財界とのパイプ役を約30年間務めた。関電の原発依存度は震災前は5割を超え業界でも高く、原発導入を円滑に進めるには政界工作が重要だったという。  内藤氏は2013年12月から今年7月にかけて69時間取材に応じ、11年3月の東京電力福島第一原発の事故について「政府の対応はけしからん」「長年築いてきた政・官・電力の関係に問題があった」と指摘した上、多額の政治献金を電気料金で賄ってきた関電の歴史を詳細に語った。  さらに「関電には芦原さんが直接、総理大臣や党の実力者に配る資金があった。トップシークレットだった」と証言。 首相や自民党有力者らに毎年2回、盆暮れのあいさつと称して各200万~1千万円の現金を運ぶ慣行があったと明かし、授受の様子や政治家の反応を細かく語った。  当時は政治家個人への企業献金は法律で禁止されていないが、電力各社は74年、「政治献金分まで電気料金を支払いたくない」という世論を受けて企業献金の廃止を宣言。内藤氏は当時の業界は「そんなことを出来るわけがない。政治家を敵に回したら何も動かない」という雰囲気だったとし、その後も政治献金を水面下で続けたと証言した。  献金の理由は「一に電力の安泰。二に国家の繁栄」とし、「天下国家のために渡すカネで、具体的な目的があったわけではない。許認可権を握られている電力会社にとって権力に対する一つの立ち居振る舞いだった。漢方薬のように時間をかけて効果が出ることを期待していた」と強調した。  関電広報室は「承知していない」と取材に答えた。(藤森かもめ、村山治) ■元首相側は否定  内藤氏が献金したと証言した7人の元首相側は取材に対し、「そのような事実はないと思う」「わからない」などと答えた。  政治資金規正法は金権スキャンダルのたびに改正を重ねた。ロッキード事件後の1980年に政治家個人が受けた献金の収支報告が義務化され、リクルート事件や東京佐川急便事件を受けて99年に政治家個人への企業・団体献金が禁止された。99年までは政治資金収支報告書に記載していれば問題ないが、記載の有無は取材で確認できなかった。      ◇ ■痛烈な自己批判、過去に例ない  《歴史の関係者から話を聞き取る「オーラルヒストリー」第一人者の御厨貴東大客員教授の話》  電力を独占供給する巨大公益企業の政界工作を中枢の元役員が明かした衝撃の告白だ。これほど痛烈な自己批判は過去にない。歴史をこの国に記録として残そうとする勇気ある行為だ。  関電は電気料金を使って政治家を値踏みし、政界のタニマチ的存在になっていた。巨額献金が独占支配を強め、自由化を嫌がる自己改革のできない組織にさせたに違いない。内藤氏は電力業界に誤りはないと信じてきたが、原発事故で過信だったと気づいた。関電にとって目指すべきモデルで超えるべき対象だった東電の事故は、裏方仕事が国家のために役立つと信じてきた彼の価値観を画期的に変えたのだろう。  電力を各地域の独占企業が担い続けていいのか。この告白は業界への戒めであり、世論への問いかけだ。 (原発利権を追う)金を渡すと角さんは「頂いたよ」 2014年7月28日03時50分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:1  《関西電力社長・会長を歴任した芦原義重の政治担当秘書を務めた内藤千百里は、田中角栄秘書だった佐藤昭子と長い友人だ。田中の首相在任中の1972~74年に政治献金を持参した場面から、内藤の告白は始まる》 • 関電、歴代首相7人に年2千万円献金 元副社長が証言 • 特集「原発利権を追う」  芦原さんが角さんの事務所で1千万円を渡すと、角さんは「おーい。頂いたよ」と昭さんに伝える。 昭さんは「そうですかー」と受け取りに来る。 1千万円は紙袋や風呂敷で持っていく。大した重さではなかったね。私が昭さんに電話で「行きますよー」と言えば、「いらっしゃーい」と面会を入れてくれた。  芦原さんが直接、総理や党の実力者に渡す資金がありますねん。会社のトップクラスのみ知っている。総理には盆暮れに各1千万円ずつ計2千万円。総理を辞めた後にも同額を渡した人はいた。辞めたからといって800万円に下げるわけにはいかんでしょ。  《盆暮れに政治家に現金を届けるのが芦原と内藤の「務め」だった。電力各社は74年に政治家への献金をやめると宣言したが、関電はひそかに続けたという》  官房長官、自民党幹事長、政調会長ら実力者と野党幹部には1回200万~700万円。年間総額は数億円になると思う。私が政治家の実績を伝えると、芦原さんが金額をパパッと決めた。芦原さんと一緒に運んだのは年間14、15人はおるでしょうな。他の役員が運んだ分もあった。  芦原さんと新幹線で大阪から行き、東京駅に専用車が迎えに来た。私が秘書に面会の約束をとり、政治家の事務所や自宅へ向かう。総理の場合、人目につかない早朝に自宅を訪ねることが多かった。前の晩に芦原さんと東京へ入り、皇居近くの定宿に泊まる。現金は私が枕元に置いて寝た。  《内藤はいま91歳。政界とのかかわりは62年に社長秘書になってからだ。以来25年間、電力業界を代表する政治担当と呼ばれた。福島原発事故とその後の混迷を見て、自らの歩みを実名で語る決心をした。69時間にわたる独白は、戦後電力史の裏側を浮き彫りにするものだ》 (敬称略) ■原発事故機に心境変化、後世へ証言  関電元副社長の内藤千百里氏は、政治献金について「関電のみならず関西財界を東京と同じ地位までレベルアップする」ことを目的とし、芦原義重元会長はその結果、「総理大臣と一対一でいつでも話し合える関係になった」と証言した。  これまで政界工作を明かすことはなかった。政界、官界、電力業界のつきあいは「天下国家のため」と思い、原発に疑いを抱いたこともなかった。今でも芦原氏と自分が果たした役割への自負はあるという。  芦原・内藤両氏は1987年に経営を私物化していると批判され、取締役を解任された。内藤氏は東京電力福島第一原発の事故を機に心境が変化したという。「なぜ今も汚染水をコントロールできないのか。地質調査をしたはずなのになぜ地下水の影響が大きい場所に原発を建てたのか」  「政府の監督の甘さがあった。長年築いてきた三者の関係に問題があった」とも感じ、自らの足跡をたどって戦後の政官電の関係を再考したいと思った。13年に90歳になったことも「実名告白」の背中を押したという。「死を意識するほど自分の歩んで来た道を思い出した。今まで口を割らなかったことを話す気持ちになった時に記者が来た。後世に役立つと思った」 (原発利権を追う)三木さんは「足りない」と言った 2014年7月28日19時06分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:2  盆暮れに現金を渡した総理大臣は、角さん、三木、福田、大平、鈴木、中曽根、竹さんまで。選挙のあるなしは関係なく、1回1千万円で年2回。 • 関電、歴代首相7人に年2千万円献金 元副社長が証言 • 特集「原発利権を追う」  《関西電力元副社長の内藤千百里(ちもり)は、元会長の芦原(あしはら)義重が現職首相に現金を渡す場面に立ち会ってきた。明確に記憶しているのは田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登。1974年に電力業界が政治献金の廃止を宣言した後も続いたという》  関電の中でやめようという話は出なかったね。 具体的な目的で渡す汚いカネではないという意識だった。天下国家のためのカネ。一に電力の安泰、二に国家の繁栄。  三木さんは事務所で私のひざを触りながら「足りない」と言ってきたことがあった。芦原さんが現金を渡すとニコニコして「お元気で何より」。福田さんは東京の自宅が多かった。何十羽のごっつい大きな鳥が飛んでくる家だ。天下国家の話をして帰り際にあうんの呼吸で置いて帰る。福田さんは玄関まで見送り「ありがとうー」と言っていた。  大平さんも自宅。現金をもらうと「いやあ、お疲れさん」。鈴木さんは照明の暗い家だった。中曽根さんは事務所。「ありがとうございます」とさっと受け取った。竹さんも事務所やね。ベテラン秘書が一手に仕切っていた。  私が現金の入った紙包みを関電の経理から受け取った。総理の家や事務所に着いて、車を降りる時に芦原さんに「はい、これ」と手渡す。総理との現金のやりとりはトップ同士。代わりがするわけにはいかん。芦原さんも「自分でやる」とプライドをもってやっていた。私はその間、秘書と前室で雑談しながら待っていた。(敬称略) (原発利権を追う 「関電の裏面史」独白:3)献金、秘書に「領収書を書いて」 2014年7月30日05時00分 《関西電力元会長の芦原義重とともに政治献金を配った内藤千百里の重要な任務は、政治家秘書から領収書をもらうことだった》  角さん(田中角栄)の秘書の昭さん(佐藤昭子)に「領収書を書いてくれよ」と言うと、「そう?」と書いてくれた。中曽根さん(中曽根康弘)にもしっかりした秘書がいて、彼の部下が領収書をくれた。  どの政治家からも必ず領収書は頂いた。後で会社に送ってもらった。会社から着服を疑われないためにね。向こうの都合で領収書は3~5枚(の政治団体名)に分けて届くことが多い。私の秘書数人が経理と処理した。社内で保管して税務署には見せなかった。  《関電は当時、税務申告ではお金の支払先を明らかにせず、使途不明金として処理した疑いがある》  芦原さんと部屋にいた時、木川田(一隆元東京電力会長)さんから「政治献金をやめざるを得ない。協力してくれ」と電話があった。芦原さんが「内藤君、東電が献金を廃止すると取締役会で決めた。どうするかな」と言うので、「表向きは賛成した方がよいけど、取締役会で決めると約束を破った時に法的問題になりうる。常務会決定にしましょう」とアドバイスした。  《1974年に「政治献金分まで払いたくない」として電気料金不払い運動が起き、東電は政治献金廃止を決定。関電を含む8電力が追随したが、内藤に献金をやめる考えはなかった》  関電は木川田さんの考えに反対だった。政治家を敵にしたら何も動きはしません。その後も盆暮れの献金はひそかに続けました。  《中部電力元幹部も1980年代から90年代にかけ自民党有力議員に100万~300万円を渡したと朝日新聞に証言した。電力業界の政治献金廃止宣言は骨抜きだった》(敬称略)      ◇  関電広報室は領収書を保管し、税務署に見せなかったとの証言について「承知していない」としている。 (原発利権を追う 「関電の裏面史」独白:4)「献金も宴席代も電気料金から」 2014年7月31日05時00分 政治家に盆暮れのあいさつで渡す献金は電気料金から出てますねん。官僚、政治家、学者との宴席代ももちろん電気料金。本社や支店長の専用車、専用の運転手も、役員のゴルフ会員権の費用も、すべて電気料金。ね、玉手箱。   《関西電力元副社長の内藤千百里は、有力者と関係を築くため使ったお金はすべて電気料金が原資だったと語る。電気料金は電気をつくり届ける費用と電力会社のもうけから算定した金額だ。内藤は当時は費用のチェックが甘いうえ、もうけ計算に使う「事業報酬率」も高く、政治資金や交際費を潤沢に捻出できたと証言した。事業報酬率を関西なまりで「フェアーレターン(Fair rate of return)」と呼んだ》  何でも経費に入れる。フェアーレターンも現在は2~3%に下がったけど当時は7~8%。アメリカの計算をまねしただけや。「こんないい加減なものでよろしいのかな」と思ったけど「アメリカがやっているならそれで行きましょ」と決まった。だから電気料金から献金や宴席代が出る。それじゃなければ、どこからカネが湧いて来ますねん。  《内藤は若い頃、月1回電力各社でつくる電力中央研究所に通い、電気料金の英文資料を翻訳して各社に配る仕事をしていた》  フェアーレターンは「高すぎる」「科学性に欠ける」と議論されてきた。学者も百も承知。ほかに方法がなかったというけど、本当は公益企業としてやったらあかん。フェアー(公正)じゃなかったわけよ。  《内藤は日本の事情に応じた価格を検討すべきだったと言う。事業報酬率は導入時の1960年は8%。改定を重ねて現在は2・9%に下がった》(敬称略) ◇  関電広報室は「交際費は必要な範囲で適正に支出し、ゴルフ会員権は業務に必要な範囲で所有している。少なくとも80年代以降は料金原価に含めていない。それ以前は資料がなくわからない。社用車は業務遂行、情報セキュリティー、安全性確保の観点から利用し、料金原価に含めている」としている。 (原発利権を追う)芦原さんは欲深くまじめな人 2014年8月1日04時16分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:5  《関西電力で政界工作を担った元副社長の内藤千百里は、大阪出身で6人兄弟の末っ子だ。高校で召集されて陸軍に配属された》 • 連載「原発利権を追う」  昭和18(1943)年に学徒兵に召集された。幹部候補生だったけど、中国大陸へ行く前に門限に遅れ格下げされた。終戦の数カ月前に姫路に移された。広島に原爆が落ちた日は、はっきり覚えている。終戦の詔勅を姫路で聞いて「やっと帰れる」と思ったら、連隊がすでに移っていた九州に行くことを命じられた。1カ月ほどで除隊になり、仲間とポンポン船を借りて大阪を目指した。嵐で船が木の葉のようになってしもうて死ぬかと思った。気づいたら船は四国の浜辺に着いていた。ドラマでしょ。  《47年9月に京大経済学部を卒業し、関電の前身の関西配電に入社した》  兄貴が関西配電に入っていたので、軽い気持ちで試験を受けたら採用された。「通訳の勉強をしたい」と神戸支店を希望した。  《東京支社などを経て62年に関電社長だった芦原義重の秘書に就く》  「社長、この男が内藤です。いくらしかりつけても大丈夫です」。これが私の秘書の始まり。身体が丈夫で、ものおじしないから選ばれたと聞いた。芦原さんは一言で言えば非常に欲の深い人。それは生命力の深さでもあった。真面目で頭が良く考えは柔軟だった。  秘書になった時、政治担当という役割はありませんでした。私は東京支社に勤務したことがあるので顔が利いた。秘書をしつつ立地環境本部長や副社長を兼務した。芦原さんは、私をずっと離さなかった。私的な問題もずいぶん助けました。芦原さんは恥ずかしがって自分から頼み事を出来ないので、私が感じ取って対応した。常識を超えた関係は男女の仲に近いかもしれません。  《芦原は内藤と築いた人脈で力を増した。内藤も「関西財界の官房長」と呼ばれた》(敬称略) (原発利権を追う)政治献金、じわじわ効く漢方薬 2014年8月2日03時00分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:6  《死者171人。世紀の難工事となった富山県の黒部川第四発電所(1963年完成)の発電量は原発1基の半分に満たない。関西電力元会長の芦原義重が抱く原発推進への強い思いを側近の内藤千百里は感じていた。そのために必要なのが政治献金だったという》 • 連載「原発利権を追う」  芦原は電力需要がどんどん増える中、安定した電源として原子力を増やそうと考えた。電力業者はふんだんに電源を持ちたいが、水力は黒四ダムで限界が見えた。火力も石油危機で不安定さがわかった。  世の中は業者、官僚、政治家の三角関係で成り立っている。電力会社は許認可を握る官僚に弱い。官僚は大臣を務める政治家に弱い。政治家は献金と票を集める電力会社に弱い。だから、電力会社は日頃から政治家と仲良くしておく。 政治献金はフレンドリーな関係をじわじわとつくる漢方薬。権力への一つの立ち居振る舞いや。即効性のある頓服薬では(贈収賄で警察や検察に)やられる危険が大きい。政治家がもらったと意識しない程度に時間をかけて渡す漢方薬が大事。これは民間が長い間に学び取った知識なの。  《その効果は、複数案でもめた北陸新幹線のルート決定で出た。福井県は関電美浜原発のある若狭湾沿岸の開発につながる西側ルートを望んでいた》  琵琶湖の西側を通して欲しいと角さん(田中角栄)に頼んだことがありました。当時の福井県知事が周りから責められていて「新幹線を通して欲しい」と頼んできたので、角さんの目白の自宅に芦原と頼みに行きました。私が家の前で待っていると、芦原が出てきて「意見を聞いてもらえた」と。当時の芦原は東京でも通用しました。  《田中は73年、西側ルートを決断する。時は流れて一昨年、金沢市から福井県敦賀市までの延伸がようやく認可された》(敬称略) (原発利権を追う)若手に100万円「はい、どうぞ」 2014年8月5日03時05分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:7  佐藤内閣の時、歴代総理と関西財界人が定期的に飯を食う「吉兆会」が始まりました。 • 特集「原発利権を追う」  《高級料亭「吉兆」は1930年に大阪市で開業、61年に東京・銀座に出店した。関西電力はここで政治家や官僚と親交を結んだ》  吉兆会に来たのは角さん(田中角栄)、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登。芦原は東京に昵懇(じっこん)の料理屋がなく、関西出身の吉兆を可愛がった。財界人が一堂に会するから、大事な話はあらへん。総理と顔をつないで、企業が個別に付き合った。  《「関西財界を東京と同じ地位までレベルアップする」ことを悲願とする関電元会長の芦原義重と元副社長の内藤千百里にとって歴代総理との料亭会合は献金と並んで重要だった。さらに有望株の若手議員に対しても布石を打っていく》  80年代初め、将来性のある若手議員を芦原につなぐ会合もつくりました。知り合いだった自民党の林義郎(元蔵相)に「あんたがいいと思う若手10人を紹介してくれ」と頼み、月1回、東京のホテルで朝食会を開きました。毎月の当番議員を決めて、その議員の話を1時間半聞いた。  彼らにはお盆と暮れの会合で1人100万円ずつ配った。封筒に入れて帰りしなに「はい、どうぞ持って行って」と渡す。アットホームなものですわ。領収書は後で秘書から受け取った。電気料金のおかげ。朝食会は3年ほど続いた。「電力」が名目と言った途端に汚職になるから「天下国家を担う人間との会合」という位置づけ。政情が荒れた時、彼らは非常に芦原の役に立ちました。新進気鋭の彼らの話で政治状況がわかった。(敬称略)     ◇  林義郎氏側の事務所は「質問には答えられない」としている。 (原発利権を追う)建設促進「瀬島さんが相談に来た」 2014年8月6日03時33分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:8  《関西電力元会長の芦原義重と元副社長の内藤千百里は、元大本営陸軍参謀で戦後は政財界のブレーンとなった瀬島龍三を招く勉強会も催した。場所は銀座の高級料亭「吉兆」だ》 • 特集「原発利権を追う」  戦は負けたのに大した男がおるぜと聞き、私から瀬島さんに申し入れた。瀬島さんは、芦原さんのお役に立つなら喜んでと。末広がりの八を入れ「八兆会」と呼びました。2カ月に一度で3年ほど続いたと思う。一部高級将校だけ閲覧できた旧日本軍資料「統帥綱領」を講義してもらった。経営学に当てはまる内容で瀬島さんがガリ版刷りのレジュメを作ってきました。  《内藤の手元に残る1978年11月28日の八兆会の案内状には、出席者欄に東京電力社長の平岩外四、通商産業事務次官の濃野滋、翌年大蔵事務次官となった長岡実ら9人の名があった。瀬島は当時、伊藤忠商事会長だった》  メンバーは私が仲間と選んだ。我々は電力会社だから、今の通産次官は誰や、それを入れておくかと。長岡は大蔵省のボス。本当にベストメンバーをそろえたんですよ。政治家も入れた方がいいんですが、いい若手がおらんかった。平岩は忙しくて来なかった。  瀬島さんは(2007年に)亡くなる数年前、「原発の建設促進はどうしたらよろしいか」と相談に来た。私は「それほど安全というなら、大阪湾と東京湾に一つずつ建てれば誘致合戦になる」と。瀬島さんは心を打たれたようで「いいことを聞きました。早速、通産大臣に言います」と帰った。めったに自分の意見も本心も言わない人が賛成した。(敬称略)      ◇  長岡氏は取材に「会には参加した。会費は払っていない。電力会社のことが話題になったことはない」と話した。濃野氏の家族は「本人は高齢のため答えられない」とした。 (原発利権を追う)官僚接待「建前は割り勘」だけど 2014年8月7日03時00分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:9  《関西電力元会長の芦原義重と元副社長の内藤千百里は1987年、「経営私物化」と批判され、取締役を解任された。その後の90年代も東京・銀座の高級料亭「吉兆」での宴席は続いた。小沢一郎や田中角栄の秘書だった佐藤昭子が参加したという》 • 連載「原発利権を追う」  小沢や昭さんと2カ月に1回は飯を食った。「あの首相は絵に描いた餅ばかりを言って許し難い」とか、天下国家をさかなにして仲良く話した。  芦原は解任された後も良好な関係を維持したかった。自分を解任した関電の後任者に政治家や官僚とのパイプは譲らなかった。芦原は高齢だったので、途中からは私が内容を報告した。支払いは電気料金や。 《90年代の吉兆での宴席には、霞が関の官僚やOBも参加した》  通産省や建設省の事務次官とも飯を食ってたの。人物本位で一流を選んだ。関電のかの字も言うたことがないが、高いレベルの情報がほしいだけでね。  大蔵省はなかなか警戒が強いが、外すわけにはいかない。他の場所でも局長や課長クラスと飲み食いして天下国家を語りました。大蔵省は通産省に比べてタテ社会なので、事務次官は辞めた後も権力があった。  《官僚側の出席者が接待批判を受けないように、内藤は配慮を欠かさなかったという》  あとから問題が起こった時のために、建前は「割り勘方式」にしてある。あとでまとめて請求しますと。そうしないと危ない。相手に傷がつく。実際は違うし、後で請求しない。向こうもわかっているわけ。こちらがそういう気遣いをしないと、一流の官僚は来ない。(敬称略)      ◇  小沢一郎氏の事務所は取材に対して「回答できない」としている。 (原発利権を追う)核のごみ処分「離島を買おう」 2014年8月8日03時08分 ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:10  《鹿児島県の馬毛島(まげしま)は種子島の西12キロにある小さな島だ。旧平和相互銀行の伊坂重昭監査役(当時)が関西電力の内藤千百里にこの島の売却を持ちかけたのは1980年代初めだった》 • 連載「原発利権を追う」  伊坂が「内藤さん、あの島をいりませんか」と聞いてきました。平和相銀はまとまったカネが必要だから、「島を240億~250億円で買わないか」と言いました。  《馬毛島のほぼ全島を買収した平相銀の関連会社は当時、レジャー基地建設を目指したが頓挫し、売却を急いでいた。伊坂は86年に摘発された平相銀の巨額不正融資事件で中心人物として逮捕、有罪となった人だ》  住民がいない離島なので私は高レベル廃棄物の処分地に適地だと考えた。本土では地下水が流れていると問題だが、離島ではそれもない。レジャーランドにするぐらいの平坦(へいたん)な土地で広さも十分だった。  《原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、現在も作られていない。原発が「トイレなきマンション」と批判されるゆえんだ。その候補地探しは電力業界の重要課題だ》  芦原(義重・関電元会長)に「買い取りませんか」と話をした。技術屋の芦原も「それはいい考えだ」と同意してくれた。すぐに東京電力の平岩(外四元会長)さんに連絡し、芦原・平岩会談が開かれた。平岩さんは「電事連(電気事業連合会)で買います」と明言したんです。  《平岩は当時、業界団体の電事連会長でもあった。電力業界の東西トップの会談がまとまり、馬毛島を最終処分場の用地として買収する計画はそのまま進むかに見えた》  ところが、風向きが変わったんです。(敬称略) (原発利権を追う)「馬毛島買っていたら、楽できた」 2014年8月9日03時03分   ■関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白:11 連載「原発利権を追う」 •  《青森県は核燃施設を受け入れたが、最終処分場は拒否し、国から最終処分地にしない確約を得た。電力業界も青森県での最終処分を表明していない。だが電事連は馬毛島の選択肢を捨てた時点で青森での最終処分場建設をめざしていると芦原と内藤千百里は受け止めた》 •  あの時馬毛島を買っていたら、電力業界がどれだけ楽をできたか。売り込んできた伊坂(重昭・旧平和相互銀行元監査役)と私をつないだのは、元右翼の豊田一夫さん。暴力団などの裏社会に顔が利くので、表に出せないトラブルを解決してもらったこともある。電力は立地や送電線下の補償費でしょっちゅうトラブルを抱えていますから。 •  《内藤は一時期、関電のトラブル処理を担った。水面下で処理する人物とのつながりは不可欠だったという》(敬称略) •      ◇ •  関電広報室と電事連はこの経緯を「承知していない」としている。

2013年8月17日土曜日

小沢一郎インタビュー(抜粋)

小沢一郎インタビュー(マスコミで「巨悪」のイメージを作られてしまった小沢だが、田中角栄直系の良質な保守である。

宮崎 あれはどういう判断だったんですか。

小沢 たぶん負けることは分かってたんだと思いますよ。だけど岡田君や枝野君や前原君達は、みんなやれでしょ。彼らはもともと自民党とやりたかったんじゃないですか。

宮崎 自民党と連立を?

小沢 そう。だから、若い連中はもうみんな死ね、残った連中でやると。それで、自民党はたぶん過半数取れないだろうから自民党と連立を組む。というのが、彼らの考えだったという人がいるが、確かにそうかもしれない。そうでなきゃ解散なんてあり得ないもの。

宮崎 ということは、今回のちょっと意味不明みたいな解散は、野田さんの決断の背景にあったのは、反小沢グループの生き残り策ということなんですね。

小沢 どっちみち解散が年明けになったって負けるだろう、でも自民党もたぶん過半数は獲れないだろう、という中でやったということでしょうかね。

宮崎 (20数%で70%近い議席をとる小選挙区制の問題点を指摘)。

小沢 だけど次の選挙でまた変わりますよ。そういうふうにつくったんだから。
宮崎 小選挙区制をですか?

小沢 そういう選挙制度にしたんですよ。1党で権力を持ち続けるのはいけない。
政権与党がいい加減な政治をすればいつでも野党にとって代わられる。そういう緊張感の中で、政党がお互いに競い合って良い政治を実現する。それが民主主義だということです。だから、ちょっとの得票でもって政権交代できるようにと。その中でだんだん大人になっていけばいいと。

小沢事件の検察捜査については次のように述べている。

「完全に政権交代を防ぐためでしょうね。

阻止するためです。

それ以外に民主主義社会で選挙の5、6ヵ月前に野党の第一党の党首を何の証拠もなしにやるなんて言うことはありえないことです。

民主主義が成熟していないほとんど独裁国家のやることだ」

「青年将校の暴走というのは実は彼らのカムフラージュで、結局、法務・検察全体の意思だと思う。

そうでなきゃできっこない」

「彼らは私を有罪にしたかったんだろうけど、無罪になってしまった。

しかし、結局彼らは成功したんですよ。

だって、3年半も私の行動を束縛できたんですから。

その間に民主党はダメになっちゃったんだから。

恐るべきことですよ。国家権力というのは」

「日本においては、政治家はまったく権力を持っていないですね。

権力を持っているのは、みんな官僚です。

それはシステムがそうだということと同時に、やっぱり資質の問題があります。政治家の資質であり、それはイコール国民の資質です。残念ながらこのレベルが低い。

私に言わせると、自立していない国民が選んだ自立していない政治家だから、役人の権力集団に勝てない」

「イギリスでは、テロが頻発した結果、警察がものすごく強くなっていったわけですが、そうした中で、ある国会議員が十分な根拠もないまま逮捕されました。

その際、英国議会では与野党がすぐ警察に抗議して、結局警察はこの議員を釈放せざるを得なくなったということがありました。

そういう意味で、政治家が見識を持ち、民主主義を理解し、それを国民が支持することが大切なのです。

しかし日本の国民はまだそこまできていません。

自立していないですね、日本人というのは」

「いま永田町では「小沢一郎は終わった」「小沢一郎の時代ではない」という声があるがどう思うか」と聞かれて次のように応えている。

「日本にはまだ民主主義が根付いていない。

日本にはまだ形だけの民主主義しかない。

民主主義の基本的な機能は「政権交代」です」

「国民にも、「政権交代はもうない」と思っている節があります。

でも、いまの状態は、あの2003年に自由党と民主党が合併する前の状態に戻ったようなものです(合併当時の衆院勢力は民主114、自由22)。

必ずしも政界再編に議員の数は必要ない。

要は政策の意思決定が明確で、国民に対して正しいメッセージを訴えることができればよいのです」

「私は、安倍政権はそう長く続かないと見ています。

今のうちに自民党に代わる受け皿をつくっておかないと、日本の政治は究極の大混乱に陥ってしまう」

「次の衆議院選挙の結果、再びいまのようなかたちで自民党政権が続き、野党がバラバラの状態だったら、日本には議会制民主主義が永久に定着しない恐れがある。

自民党のごたごたが行き着くところまで行き、日本は大混乱に陥ります」


「政権与党が少しでも油断すれば政権交代が起こりやすい制度にしたわけです。

かつての自民党も民主党も、国民の期待を裏切る政治をしたので、政権交代が起きた。

第2次安倍政権の政策が国民のための政治ではないと気づかれたら、また自民党政権を失うでしょう。

だから、我々を含め、野党の政治家がしっかりしていれば、3度目の政権交代は決して不可能なことではありません」

「新しい受け皿ができたと国民が感じるのは、数の多少ではありません。

そこに国民が納得できる政策、政治思想が備わっているかどうかが重要です。

かつての自由党も民主党に合流した時は30人にも満たない国会議員しかいなかった。

当時、我々が政権を取るとは誰も思っていなかった。だから、いまの状況は、あの時期にもどったと考えればいい」

「参院選後の早い段階で、安倍政権は持たなくなると思う。

安倍政権の政策では、いつまでたっても国民の生活が良くなりませんからね。

アベノミクスの行き詰まりがはっきりすれば、期待していた国民の数が多いだけに、左記の民主党と同様、自民党に対する国民の失望は大きなものになる。

「自民党には任せられないから、野党はまとまるべきだ」という国民からの声が必ず湧き上がってくる」

70歳の小沢はいまだ政権交代に執念を燃やしているのだ。

小沢の「志」は受け継がれていくだろう。

2013年3月1日金曜日

遺伝子組換え食品


松永和紀氏の記事を残しておこうと思う。



遺伝子組換え食品 海外での
“大事件”が報じられない日本
「遺伝子組換えトウモロコシに発がん性」?~消費者の『知る権利』だけでは語れない表示制度問題
20130121日(Mon2013年02月01日  松永和紀 (科学ジャーナリスト)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2498?page=1
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2505?page=4
遺伝子組換え食品について2012年、海外で大きな “事件”がいくつもありました。フランス人研究者によって書かれた「遺伝子組換えトウモロコシに発がん性がある」とする論文をめぐる大騒動、米国カリフォルニア州で行われた表示をめぐる州民投票、米国で遺伝子組換えサケの食品としての認可へ近づいたこと……。
 どれも、欧米のマスメディアは大々的に報道しています。今後の遺伝子組換え食品の動向、つまりは、世界の食料情勢を検討するにあたっての重要材料だと思いますが、日本ではほとんど報道されていません。これでは、日本人は井の中の蛙になりかねないではありませんか! 2回にわけてご紹介しましょう。
フランス発
「ついに遺伝子組換えの有害性が明らかに」?
 まずは、発がん性研究の顛末。フランスCaen大学の分子生物学教授Gilles-Eric Séralini (セラリーニ)らが昨年919日、「除草剤耐性トウモロコシNK6032年間にわたってラットに与えたところ、乳がんや脳下垂体異常、肝障害などになった」とする論文を学術誌で発表し、一般メディアでも大々的に報じられました。
 このトウモロコシは既に米国やEU、日本でも安全性評価が行われ、「問題がない」として認可されています。それが発がん性あり、というのですから、本当なら非常に深刻な問題です。2年というのはラットのほぼ寿命にあたる期間で、こうした長期試験はこれまでほとんど行われた例がなく、「ついに遺伝子組換えの有害性が明らかとなった」と、EU内のメディアの多くがおどろおどろしい写真と共に報じました。
実は問題山積の研究だった
 しかし、発表後、すぐさま多くの研究者から反論が上がりました。実験がさまざまな条件を満たしておらず、信用に値しない、というのです。「食べさせたら、がんができたのだから、証拠は明白ではないか」と思う人が多いでしょうが、そうとは言えません。じつは、この手の食品の安全性を評価する動物実験をきちんと実施するのは難しいのです。
 食品はそもそも、非常に多くの物質を含みます。栄養成分や未知の成分があるほか、土壌中にある重金属や化学物質等も吸収し、栽培中にカビがつくとカビ毒が多くなり、農薬が使われれば残留します。そして、品種や栽培方法や気象条件、貯蔵方法等で、それぞれの含有量は大きく変わります。
こうした試験では通常、安全性の評価対象となる食品を与えるグループと、そうではない食品を与えるグループとを同じ条件で飼って比較します。今回の場合、遺伝子組換え技術が導入されているかどうか以外はすべて同じトウモロコシを2種、揃えないと、遺伝子組換え技術の影響を見る比較試験はできません。
 しかし、「同じ条件に揃える」というのは極めて難しいので、この手の発表が行われた時には、科学者たちは真っ先に、どのようにしてエサを調製し、どんな実験系を組んだかを吟味します。
 ところが今回の場合、論文にそもそも、飼料の詳しい情報が掲載されていませんでした。成分組成や貯蔵方法、含まれる可能性のある有害物質の含有量など、なにも書かれておらず、各々のマウスがどれだけの量を食べたかも不明です。まともな研究者の論文ではありえないことです。
 しかも、比較に必要なグループ数を満たしていません。また、こうした発がん性を検討する試験においては、一つのグループにおけるラットの数は最低50匹必要というのが国際的なガイドラインなのに、各グループのラット数はわずか10匹でした。これでは、統計学的に妥当な解析をすることはできません。
 そのほかにも問題が山積している研究でした。科学者らが次々に欠陥を明らかにして、最初は騒いだマスメディアも急にトーンダウン。最終的に、EUで食品の安全性についてリスク評価を行う「欧州食品安全機関」(EFSA)が11月、「実験設計と方法論の深刻な欠陥があり、許容できる研究水準に達していない。したがって、これまでのNK603のリスク評価を見直す必要はない」という見解を明らかにしました。6つのEU加盟国も独自に評価して同じ結論に達し、これにより騒動は終息しました。
「第三者には取材しない」というとんでもない条件
 これだけなら、おかしな科学者のおかしな実験結果で済むところ。しかし、この問題は、欧米でより深刻にとらえられています。それは、発表したセラリーニ氏にマスメディアやフランス政府が当初、やすやすと手玉にとられてしまったからです。
 学術論文は通常、掲載の少し前に報道関係者には公開され、掲載日までエンバーゴ、つまり「報道してはいけませんよ」という縛りがかけられます。報道関係者はその間に執筆した科学者に取材し、第三者にその研究に対する評価などを聞き、論文がオープンになったその日に、一般市民にもわかりやすい記事やニュースにして報じます。ところが、セラリーニ氏は記者に事前に論文を見せる条件として、第三者には取材しないことを約束させたのです。
 実は、セラリーニ氏は、遺伝子組換えにこれまでもずっと反対して来た研究者で、しかも、「遺伝子組換えが危険」と主張する論文や報告書を何度も発表し、そのたびにEFSAなどに「ずさんな研究」と批判されて来た経緯があります。
 セラリーニ氏は、取材する記者が論文を吟味し批判する力がないことを見越して、「第三者には取材しない」というとんでもない条件と引き換えに、記者たちに論文を見せました。そして実際に、新聞等にはおどろおどろしい写真と共に「遺伝子組換えに発がん性」という見出しが大きく出ました。フランスの首相も「研究が確かなら、欧州全土での禁止措置を要請したい」と発言しました。
 センセーショナルに報じられたのはわずか数日の話。でも、その後に、いくら「批判する科学者が多い」という続報が出たところで、それが最初のニュースの爆発的な拡散力に比べて小さく、影響力を持ちにくいことは、本欄読者も思い当たるところが多々あるのではないでしょうか。つまり、セラリーニ氏は「遺伝子組換えは危険」という宣伝に大成功したのです。
 メディアの取材力の低さ、エンバーゴの悪用、学術誌による掲載審査の甘さ、EUの中でも強硬な遺伝子組換え反対国であるフランス政府の軽率さ等々、さまざまな問題が、今回のセラリーニ氏の騒動で露になりました。
 興味深いのは、アメリカの経済誌「Forbes」。同誌は、セラリーニ氏の研究を一貫して批判し、マスメディアの一部が手玉にとられた顛末を報道しました。つまり、これは、一部メディアの科学報道の稚拙さ、という問題に留まらず、社会的、経済的に影響がある重大事だ、というのが、この雑誌の見解です。遺伝子組換え作物を全世界に売ってゆきたいアメリカ農業界、経済界の思惑が当然、反映されているでしょう。
一連の議論を知らない日本の一般市民
 ところが、日本のメディアはこの騒動をほとんど報じませんでした。セラリーニ氏が発表した時と、それに対する批判を「時事通信」がごく短く伝え、AFP通信の配信ニュースを翻訳し掲載するAFPBBNewsも伝えた程度です。
 遺伝子組換え作物は日本に大量に輸入されています。ISAAA(国際アグリバイオ事業団)によれば、日本は年間1800万トンの遺伝子組換え作物を輸入し、主に食用油や異性化糖などの原料、飼料として消費しています。日本の米の消費量が年間約860万トン(農水省まとめ)なのですから、遺伝子組換え作物の動向を無視はできないはず。なのに、今回の問題を社会的な事件として報じたマスメディアは、日本にはなかったのです。
 日本の食品安全委員会は、今回の研究結果について見解を表明しています。また、市民団体「サイエンスメディアセンター」日本支部は、セラリーニ氏の発表の翌日には、批判する科学者のコメントを翻訳してメディア関係者に流しましたし、「食品安全情報ネットワーク」もウェブサイトで、一般財団法人残留農薬研究所毒性部長の青山博昭氏のコメントを掲載しました。国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部第三室長の畝山智香子氏も、ブログで解説しました。
 ちなみに、私が運営している消費者団体「Foocom」のウェブサイト「Foocom.net」でも、10月はじめには有料会員向けのメールマガジンで「疑わしい研究」と報じ、どなたでも読めるウェブサイトでも10月末、宗谷敏氏が詳細な解説をしています。
 しかし、一般市民はこの欧米で大騒ぎだった事件を知りません。メディアが取り上げなかったのはこの時期、政局がらみの報道や原発問題、アメリカの大統領選などニュースが多く、細かくややこしい、この手の科学にまつわる動きを伝える必要性などなかったからだろう、と推測します。
 「みんなが政局がらみの取材をしているわけではないだろうに」と思われるかもしれませんが、新聞、週刊誌にしてもテレビニュースにしても、掲載される記事量や放送時間は限られるので、ほかの話題が食い込む余地はそれほど大きくはないのです。
科学報道の受け止め方
経験なしには“免疫力”もつかない
 その結果、「遺伝子組換えに発がん性」という間違った情報が日本の市民には伝わらず、よかった、という意見も、食品メーカーや組換え作物関係者にはあります。でも、世界から取り残された感は否めません。こうした経験は、市民が科学報道の受け止め方を学ぶ機会でもあるのですが、経験なしには“免疫力”もつきません。
 それに、遺伝子組換えの反対運動を繰り広げる市民団体などは、やっぱり断片的にセラリーニ氏の研究結果を利用しています。市民団体だけならよいのですが、民主党所属の参議院議員が11月末、参議員会館内で開かれた「映画を観て遺伝子組み換えとTPPを考える院内集会」を自身のブログで紹介した際、文頭で「フランスでGMトウモロコシの発がん性に関する衝撃的な実験結果が公表されました。GM作物は安全性が確認されていない事と、雑草も害虫も耐性を持ち結局農薬の使用は増え農業が破綻してしまうという問題があります」などと記しています。
11月末の時点で、セラリーニ氏の研究を持ち出して「GM作物は安全性が確認されていない」とするのは、参議院議員としては不適切でしょう。それに、「雑草も害虫も耐性を持ち結局農薬の使用は増え農業は破綻してしまう」という内容も、誤解を招きます。前半の「雑草や害虫も耐性を持ち」の部分は、米国で実際にそうした現象が指摘され、同国ではたびたび報道されています。しかし、「農薬の使用は増え農業は破綻してしまう」という証拠はなく、同国の農業関係者は、問題点を踏まえ遺伝子組換え作物を上手に利用していくためのさまざまな対策を講じています。でも、日本ではどちらの動きも一般市民には伝わらないのです。
 遺伝子組換えはやっぱり革新的な技術ですから、人によって賛否が分かれるのは当然です。が、賛成するにせよ、反対するにせよ、科学的な根拠、妥当性がなければ建設的な議論とはなりません。ところが、科学的な議論どころか、その前段階の、新しい情報、世界が白熱して議論している情報が市民に届かない、という状況に、日本は陥っているのです。
 アメリカ合衆国では2012年、大統領選で熱い闘いが繰り広げられ、オバマ大統領が116日圧勝しました。実はこの時、カリフォルニア州では遺伝子組換えの表示義務化の是非を問う州民投票も行われました。
 合衆国政府は、遺伝子組換え作物は非組換え作物と食品として同等である、という理由で、表示を義務づけていません。そこで、カリフォルニア州で独自の表示制度の立法運動が起こり、州民投票にまで持ち込まれたのです。そして、「表示イエス派」と「表示ノー派」が激しい運動を繰り広げました。
 日本では、食品としては同等であっても消費者には区別して選ぶ権利があるとして、検査で組換えと非組換えを識別できる食品については、表示が義務づけられています。
 カリフォルニア州法案も、消費者の「知る権利」を尊重すれば当然と見えます。ところが、法案の中身や解説文書をよくよく読んでみると、じつはそれほど単純な話ではありません。
有機食品を優遇する表示制度案
 消費者の知る権利、と言いながら、制度案の細部は矛盾だらけで、消費者の知りたいことがわかる、という制度にはなっていませんでした。制度案の中で目立ったのは、有機(オーガニック)食品を優遇する項目。世界の遺伝子組換え生物(GMO)の動向について詳しい宗谷敏氏は、FOOCOM.NETのコラム「GMOワールドII」の中でこう解説しています。
 『要するに、この表示制度はGM嫌いでこの世からどうしても抹殺したい一部の消費者運動活動家と、訴訟頻発による収入目的の弁護士たちと、シェア拡大を目論む有機食品のグループに、もしかしたら有機農産物の拡販に熱心な州政府も荷担しての「消費者の知る権利」をお題目にしながら、実は市場での一人勝ちを画策する「有機食品の、有機食品による、有機食品のための表示制度」でしかないのだ。』
 (提案された制度の細部については、宗谷さんのコラムをお読みください。複雑怪奇なこの案が、4回にわたって詳細に解説されています)
 有機食品については、FAO(国連食糧農業機構)とWHO(世界保健機構)が設置した食品の国際規格を決める組織「コーデックス委員会」で、ガイドラインが定められています。その中で、遺伝子組換え技術と技術を利用して作られた生物は利用しない、と決められています。
 そのため、有機農業関係者と遺伝子組換え関係者は常に対立してきました。カリフォルニア州は、アメリカの中でももっとも有機農業が盛んな州であり、これまでも郡や地区単位で、遺伝子組換え作物の商業栽培禁止を求める市民運動が起こされてきた経緯があります。
 カリフォルニア州はさまざまな環境運動、市民運動が盛んで、ハリウッドなども抱えてとかく目立つ州。市民団体の中には、カリフォルニア州で運動を仕掛け映画人を巻き込んでPRに努め、全米への波及効果を狙うところもあります。遺伝子組換えの表示制度は、他州の中にも検討中のところがあり、カリフォルニア州の州民選挙でもし制度が成立すれば、影響は小さくありません。
州民投票の結果は……
表示義務化イエス派の1位は、Dr.Joseph Mercolaの企業。「天然」などをうたうサプリメント を販売し、FDAから違法な表示や宣伝を止めるように何度も警告されているシカゴの有名医師。2位は有機農業を推進する活動家。3位以下にも、有機関係の企業や団体等がずらりと並ぶ。一方、表示ノー派には、遺伝子組換えの開発メーカーのほか、大手食品メーカー等が寄付をした。州民投票が「知る権利」というよりも、利害をめぐる闘いという側面が大きかったことが伺える (出典:MapLight
http://votersedge.org/california/ballot-measures/2012/november/prop-37/funding
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 こうしたことから、この州民投票は全米の注目を集めることに。「表示イエス」運動は有機食品の生産や販売関係者が後押しし、「表示ノー」は遺伝子組換え開発メーカーや大手食品メーカーなどが中心となり主張を展開しました。それぞれ、920万ドルと4600万ドルの資金を投入してPRし、全米のマスメディアがたびたび報道しました。表示制度が義務化されると、消費者の金銭的な負担が増えるという研究結果も、コンサルタント企業から公表されました。また、学術誌「Science」を発行している学術団体The American Association for the Advancement of Science(AAAS)は、10月に反対意見を表明しています。
 さて、州民投票の結果は?
 ロサンゼルス・タイムズはじめ主要各紙が、こぞって反対への投票を勧める社説を掲げたこともあってか、「表示ノー」が僅差で勝利をおさめました。
 日本人にとっての注目ポイントは、一見「知る権利」論争に見えて、内実は自らの利害を冷徹に計算し尽くした壮絶な攻防戦がカリフォルニア州で繰り広げられた、という事実でしょう。他州でも、遺伝子組換えの表示制度や栽培禁止を模索する運動が出てきています。前述の宗谷さんは、日本の食品製造や価格に影響を与える可能性を指摘しています。
 日本でも、組換え反対派(そこには、多くの有機農業者が含まれます)が表示制度の変更を求めており、一部の評論家などはカリフォルニア州の州民投票の結果が出る前は、「アメリカでもうすぐ、すばらしい表示制度ができる。それに引き換え日本は…」などと発言していました。そうした際には必ず、消費者の「知る権利」が引き合いに出されました。
実態は、そのような“きれいごと”ではない。ところが、このカリフォルニア州の州民投票も、日本のマスメディアは簡単に結果を報じたのみで、その内実に踏み込む報道はありませんでした。
「フランケンフィッシュ」?
遺伝子組換えサケの行方
 最後に、遺伝子組換えサケについて。遺伝子組換え作物はこれまで、トウモロコシや大豆など、飼料や油の原料などとして主に使われてきました。どこの国でも、消費者が直接食べる食品、いわゆるテーブルミートに組換え技術を導入することへの抵抗感は強くあります。そのため、組換え小麦等の開発もアメリカやEUなどで行われながらも、まだ遅々とした歩みです。
 ところが、アメリカで年末も押し詰まった1221日、食品医薬品局(FDA)が環境アセスメントにおいて、組換えサケが環境に重要な影響をもたらさない、とする結果を発表したのです。FDAは、すでに食べても非組換えサケと同等に安全とする評価を公表しています。今後は、環境アセスのパブリックコメントを経て、食品として認可するかどうか、最終ステップに差し掛かる、ということになります。
同年齢の遺伝子組換えサケ(大きい個体)と、非組換えサケ。開発したAquaBounty 社は、1950年代から60年代にかけて農業が飛躍的に生産性を高めた「緑の革命」にならい、海洋資源を守るための「青の革命」と位置づけている
(出典: Aquabounty社)  http://www.aquabounty.com
 この組換えサケは、別種のサケが持つ成長ホルモンの遺伝子が導入されており、成長スピードが2倍程度早いとされています。よく、組換えされた大型のサケと、同年齢の小さい非組換えサケが並んだ写真が掲載されるため、組換えサケはばかでかい、と思っている人が多いようですが、成魚の大きさ自体は変わりません。
 少ない飼料で育ち、しかも海ではなく内陸のタンクで養殖します。こうすることで、環境、消耗が激しい海の資源も守ることができるというのが、開発した企業の主張。たしかに、魚は中国の人口増で消費量が増えているうえ、欧米でもDHA等体によい成分が含まれ肉に比べて健康と推奨され、人気を集めています。今後も消費量は増えるとみられ、養殖にも期待がかかります。
 FDAは、環境アセスを行った結果、内陸で養殖され、しかも不妊化されたメスを飼育するので、逃げ出して野生のサケと繁殖して自然に影響を及ぼすリスクはきわめて低い、と結論づけました。しかし、遺伝子組換えには比較的寛容なアメリカ人であっても、食卓の皿の上に乗る魚が……と考えると抵抗感を覚えるのか、「フランケンフィッシュ」などと表現するメディアもあり、2013年のアメリカはおそらくこの問題で、大揺れになるはずです。
 そもそも、FDAのこの環境アセス案は、201254日の日付。FDAはこの内容の公表を何カ月も“塩漬け”にしていたのです。この行動は、賛成派、反対派の双方に波紋を呼んでおり、「今年は大統領選の年だったからね」とコメントしている市民団体もあることを、Natureニュースも伝えています。食は身近な問題で関心が高く、なおかつ、だれでも一家言持っているもの。オバマ大統領が選挙前の論戦を避けた、というのは、あながち外れていないだろう、と思えます。
 この問題、日本では朝日新聞が20121222日、報じました。しかし、G-searchの新聞・雑誌記事横断検索で調べても1321日現在、ほかのメディアはこの環境アセス案をまったく取り上げていません。
アバウトな情報ばかりで
是非を論じることもできない日本
 主な“事件”を駆け足で追いかけてきました。2012年が遺伝子組換え技術を巡って世界が大きく揺れた年であったことを、わかっていただけたと思います。
 2013年も年明け早々、英国の英国環境・食料・農村地域省のOwen Paterson大臣が「オックスフォード農業会議」の席上で、遺伝子組換え技術は農薬やエネルギーの使用量を減らし、リスクとベネフィットのバランスを検討すると、ベネフィットが非常に大きい技術だとして、支持を明確にしました。英国はこれまでも、遺伝子組換え技術を食料増産の一方策と位置づけ、近年はリスクコミュニケーションに力を入れています。改めてその姿勢を明確にしたのです。また、これまで過激な反対運動を続けてきた活動家が同じ会議で「科学的に検討した結果、これまでの活動をお詫びする」と謝罪し、遺伝子組換え推進の姿勢を明確にしました。この“転向”は英国だけでなく米国や他のEU各国、アジア、アフリカ等でも、大きな話題となっています。
 では、日本は? 日本人も前篇で書いたように、遺伝子組換え作物を食用油や清涼飲料水などの糖分などとして大量に摂取し、家畜の飼料に用い、その家畜の肉や卵、乳などを食べています。なのに、世界の動きが一般市民には伝えられず、報道されるのは、「TPPに参加すると、アメリカの制度と同じになるに決まっている」というような、あまりにもアバウトな話ばかり。これでは、是非を論じることもできない。この危機をこそ、皆さんに気づいてほしいのです。
参考文献>
FOOCOM.NETGMOワールドII」バックナンバー
http://www.foocom.net/category/gmo2/
・コーデックス委員会の有機食品ガイドライン(農水省訳)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/standard_list/pdf/cac_gl32a.pdf
Los Angeles Times社説
http://www.latimes.com/news/opinion/endorsements/la-ed-end-prop37-20121004,0,2668604.story
ScienceInsider Scientists Spar Over Wisdom of California Ballot Effort to Require Labeling of Genetically Modified Foods
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/11/s
FDAの遺伝子組換えサケにかんするページ
http://www.fda.gov/AnimalVeterinary/DevelopmentApprovalProcess/GeneticEngineering/GeneticallyEngineeredAnimals/ucm280853.htm
NaturenewsTransgenic fish wins US regulatory backing
http://www.nature.com/news/transgenic-fish-wins-us-regulatory-backing-1.12130
The GuardianGM food: British public 'should be persuaded of the benefits'
http://www.guardian.co.uk/environment/2013/jan/03/gm-food-british-public-persuaded-benefits?INTCMP=SRCH
FOOCOM.NET 編集長コラム「遺伝子組換えサケ、あなたはどう思う?」
http://www.foocom.net/column/editor/8459/
・英国オックスフォード農業会議
http://www.ofc.org.uk/

2013年2月2日土曜日

グアム移転費用

①沖縄海兵隊のグアム移転経費は、グアム協定によって総見積額102億7千万ドルのうち60億9千万ドルを日本が負担するが、そのうち28億ドルは直接的に提供する資金(いわゆる真水まみず)。これは、既に昨年(H.21年度)から始まっており、その額は約346億円。つづく  #futenma

②日本の防衛省の平成21年度予算の沖縄海兵隊グアム移転経費約346億円の内訳は、フィネガヤン地区基盤整備事業(第一段階)約129億円、アンダーセン空軍基地北部地区基盤整備事業約28億円、アプラ地区基盤整備事業約174億円、『設計費』約16億円。つづく #futenma

③H.21年度グアム移転経費の中の設計費・約16億円の内訳は、消防署(フィネガヤン地区)、下士官用隊舎(フィネガヤン地区)、港湾運用部隊司令庁舎(アプラ地区)、診療所(アプラ地区)。この段階での在グアム米海兵隊は10名!日本の税金で一から建設が始まったのだ。続く #futenma

④H.22年度のグアム移転経費の真水は約468億円。内訳はフィネガヤン地区基盤整備事業(第二段階)約290億円。建設工事:消防署(フィネガヤン地区)約24億円、港湾運用部隊司令部庁舎(アプラ地区)約23億円、診療所(アプラ地区)約90億円。設計費:約41億円。続く#futenma

⑤④の設計費の内訳は、基地本部庁舎、海兵後方群司令部、警察署、複合体育施設、下士官用庁舎、下士官用複合隊舎(全てフィネガヤン地区)。もし報道通り米議会でグアム移転経費が7割削減されるなら、日本側の予算も執行停止し、早急に普天間の危険性除去の措置をとるべきだ。終 #futenma

2013年1月27日日曜日

Atlantic Charter


The President of the United States and the Prime Minister, Mr. Churchill, representing His Majesty's Government in the United Kingdom, have met at sea.
They have been accompanied by officials of their two Governments, including high-ranking officers of their Military, Naval, and Air Services.
The whole problem of the supply of munitions of war, as provided by the Lease-Lend Act, for the armed forces of the United States and for those countries actively engaged in resisting aggression has been further examined.
Lord Beaverbrook, the Minister of Supply of the British Government, has joined in these conferences. He is going to proceed to Washington to discuss further details with appropriate officials of the United States Government. These conferences will also cover the supply problems of the Soviet Union.
The President and the Prime Minister have had several conferences. They have considered the dangers to world civilization arising from the policies of military domination by conquest upon which the Hitlerite government of Germany and other governments associated therewith have embarked, and have made clear the stress which their countries are respectively taking for their safety in the face of these dangers.
They have agreed upon the following joint declaration:
Joint declaration of the President of the United States of America and the Prime Minister, Mr. Churchill, representing His Majesty's Government in the United Kingdom, being met together, deem it right to make known certain common principles in the national policies of their respective countries on which they base their hopes for a better future for the world.
First, their countries seek no aggrandizement, territorial or other;
Second, they desire to see no territorial changes that do not accord with the freely expressed wishes of the peoples concerned;
Third, they respect the right of all peoples to choose the form of government under which they will live; and they wish to see sovereign rights and self-government restored to those who have been forcibly deprived of them;
Fourth, they will endeavor, with due respect for their existing obligations, to further the enjoyment by all States, great or small, victor or vanquished, of access, on equal terms, to the trade and to the raw materials of the world which are needed for their economic prosperity;
Fifth, they desire to bring about the fullest collaboration between all nations in the economic field with the object of securing, for all, improved labor standards, economic advancement, and social security;
Sixth, after the final destruction of the Nazi tyranny, they hope to see established a peace which will afford to all nations the means of dwelling in safety within their own boundaries, and which will afford assurance that all the men in all the lands may live out their lives in freedom from fear and want;
Seventh, such a peace should enable all men to traverse the high seas and oceans without hindrance;
Eighth, they believe that all of the nations of the world, for realistic as well as spiritual reasons, must come to the abandonment of the use of force. Since no future peace can be maintained if land, sea, or air armaments continue to be employed by nations which threaten, or may threaten, aggression outside of their frontiers, they believe, pending the establishment of a wider and permanent system of general security, that the disarmament of such nations is essential. They will likewise aid and encourage all other practicable measures which will lighten for peace-loving peoples the crushing burden of armaments.
FANKLIN D ROOSEVELT
WINSTON S CHURCHILL
(The Ministory of Foriegn Affairs "Nihon Gaiko Nenpyo Narabini Shuyo Bunsho : 1840-1945" vol.2,1966)

大西洋憲章

(一九四一年八月十四日大西洋上ニテ署名)
アメリカ合衆国大統領及ヒ連合王国ニ於ケル皇帝陛下ノ政府ヲ代表スル「チャーチル」総理大臣ハ会合ヲ為シタル後両国カ世界ノ為一層良キ将来ヲ求メントスル其ノ希望ノ基礎ヲ成ス両国国策ノ共通原則ヲ公ニスルヲ以テ正シト思考スルモノナリ
  • 一、両国ハ領土的其ノ他ノ増大ヲ求メス。
  • 二、両国ハ関係国民ノ自由ニ表明セル希望ト一致セサル領土的変更ノ行ハルルコトヲ欲セス。
  • 三、両国ハ一切ノ国民カ其ノ下ニ生活セントスル政体ヲ選択スルノ権利ヲ尊重ス。両国ハ主権及自治ヲ強奪セラレタル者ニ主権及自治カ返還セラルルコトヲ希望ス。
  • 四、両国ハ其ノ現存義務ヲ適法ニ尊重シ大国タルト小国タルト又戦勝国タルト敗戦国タルトヲ問ハス一切ノ国カ其ノ経済的繁栄ニ必要ナル世界ノ通商及原料ノ均等条件ニ於ケル利用ヲ享有スルコトヲ促進スルニ努ムヘシ。
  • 五、両国ハ改善セラレタル労働基準、経済的向上及ヒ社会的安全ヲ一切ノ国ノ為ニ確保スル為、右一切ノ国ノ間ニ経済的分野ニ於テ完全ナル協力ヲ生セシメンコトヲ欲ス。
  • 六、「ナチ」ノ暴虐ノ最終的破壊ノ後両国ハ一切ノ国民ニ対シ其ノ国境内ニ於テ安全ニ居住スルノ手段ヲ供与シ、且ツ一切ノ国ノ一切ノ人類カ恐怖及欠乏ヨリ解放セラレ其ノ生ヲ全ウスルヲ得ルコトヲ確実ナラシムヘキ平和カ確立セラルルコトヲ希望ス。
  • 七、右平和ハ一切ノ人類ヲシテ妨害ヲ受クルコトナク公ノ海洋ヲ航行スルコトヲ得シムヘシ。
  • 八、両国ハ世界ノ一切ノ国民ハ実在論的理由ニ依ルト精神的理由ニ依ルトヲ問ハス強力ノ使用ヲ抛棄スルニ至ルコトヲ要スト信ス。陸、海又ハ空ノ軍備カ自国国境外ヘノ侵略ノ脅威ヲ与エ又ハ与ウルコトアルヘキ国ニ依リ引続キ使用セラルルトキハ将来ノ平和ハ維持セラルルコトヲ得サルカ故ニ、両国ハ一層広汎ニシテ永久的ナル一般的安全保障制度ノ確立ニ至ル迄ハ斯ル国ノ武装解除ハ不可欠ノモノナリト信ス。両国ハ又平和ヲ愛好スル国民ノ為ニ圧倒的軍備負担ヲ軽減スヘキ他ノ一切ノ実行可能ノ措置ヲ援助シ及助長スヘシ。
  • フランクリン・ディー・ローズヴェルト
  • ウィンストン・チャーチル

2013年1月22日火曜日

バックエンド総事業費



バックエンド総事業費約19兆円とは?

バックエンドとは、原子力発電が終わった後に生じる後始末に関わる部分。

約19兆円というのは、電気事業連合会が2003年11月11日に開かれた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電気事業分科会の小委員会に報告した数字。

六ヶ所再処理工場を40年動かすとして、その建設・操業費と、工場の廃止措置(2078年まで)が合わせて約11兆円。海外からの返還分も合わせた高レベル廃棄物の貯蔵および処分、輸送、中間貯蔵など他の「バックエンド」事業も合わせた総額が約19兆円との計算。

六ヶ所で再処理されると想定されているのは、2004年度までに生じている1.4万トンと2005年度から2036年度までに生じる分のうちの1.8万トン(残りは中間貯蔵)の使用済燃料。この合計3.2万トンを2046年度までの40年間で再処理するとの想定(年間800トン)。2046年度までに中間貯蔵が3.4万トン生じる計算。

業界 18兆8000億円と試算  
 負担の合意形成が課題

 核燃料サイクル政策の見直し論で焦点となっているのがバックエンド費用の取り扱いだ。電気事業連合会の試算では十八兆八千億円。このうち約十兆円は既に電気料金で回収する仕組みができているが、残る約九兆円の回収の仕組みづくりはこれからである。いずれにせよ、その大半は国民の負担が避けられず、徹底した論議が求められる。

 試算は、再処理工場が二〇〇六年から四十年間運転することを前提に、その後に解体・処分に必要な七八年ごろまでの期間が対象。内訳は、再処理工場の操業や廃止などが十一兆円と最も多く、次いで再処理した際に出てくる高レベル放射性廃棄物の輸送・処分が二兆七千四百億円。プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料の加工工場の操業や廃止で一兆千九百億円、使用済み燃料の中間貯蔵も一兆百億円かかると算定された。

 再処理関連だけで十一兆円もかかることから、次期長計の策定に当たっては、米国などのようにウラン燃料を一回しか使わずに処分するワンススルー方式も検討すべきだという「柔軟路線」への変更を求める声が出ている。

 ただし、ワンススルー方式にも多くの欠点がある。再処理では廃液をガラス固化した高レベル放射性廃棄物を地中深く埋めるが、使用済み燃料をそのまま処分するとなると容量が大きいため、処分コストが高くつき、処分場の選択も難しくなる。放射能レベルもガラス固化体より強い。

 さらに、一回の使い捨てだとウラン資源が約六十年しかもたないため、最低でも千年単位で動かせる高速増殖炉を中心とした核燃料サイクルと比べてエネルギーの安定供給に不安を抱える。

 一方、バックエンド費用で鍵を握るのが費用負担の問題である。十八兆八千億円のうち、既に十兆千億円については電力会社が引当金制度を設け、電力料金から回収する仕組みがあるが、残る八兆七千億円については制度が未整備だ。

 これについて、経済産業相の諮問機関である総合エネルギー調査会が現在、費用負担の枠組みづくりを検討中。年内にはまとまる見通しだ。

 今月二十二日に開かれた同調査会電気事業分科会では、MOX燃料の加工費など約四兆円は燃料コストに当たるとして除外し、残る約五兆円について家庭に負担してもらう仕組みを了承した。

 試算では標準世帯で月額約五十円程度の負担増となる。これまで制度化されていた分も合わせると、バックエンド費用全体の国民負担額は月額約百七十円という。
 ただ、これもあくまで現時点での想定だ。

 再処理工場の建設費が当初計画の三倍に膨れ上がったように、費用が今後、さらにかさんで国民負担が増す可能性があると指摘する声もある。



原子力発電の後処理(バックエンド)費用(電気事業連合会)
事業内容 費用(兆円)
再処理工場の操業や廃止など 11.00
海外から返還される高レベル放射性廃棄物の輸送や貯蔵など 0.30
海外から返還される低レベル放射性廃棄物の輸送や処分など 0.57
海外返還分以外の高レベル放射性廃棄物の輸送や処分など 2.74
再処理・MOX燃料工場などで発生する超ウラン元素(TRU)の地層処分 0.81
使用済み燃料の輸送 0.92
使用済み燃料の中間貯蔵 1.01
MOX燃工場の操業や廃止など 1.19
ウラン濃縮工場の後処理 0.24
合計 18.80
【注】端数処理の関係で合計は合わない
出典:業界18兆8000億円と試算 負担の合意形成が課題 中国新聞2004年5月30日

再処理の費用は最初はどのくらいと考えられていたか。

ゼロ。

回収されたウランとプルトニウムの価値が大きく、それによって再処理費用はまかなえると考えられていた。だから料金原価上も再処理費用を費用の中に入れていなかった。それが途中で、再処理費用の方が回収核物質の価値を大きく上回ることが分かって、あわててこの費用を電力消費者から取り立てることにしたと次の文書にある。

電気事業審議会料金制度部会中間報告(1981年12月2日「原子力バックエンド費用の料金原価上の取扱いについて」(pdf)
【問題の所在】

原子力バックエンドのうち、使用済核燃料の再処理は、減損ウラン及びプルトニウムの回収と高レベル放射性廃棄物の分離、凝縮との両面の性格を併せ持っている。現在の電気事業会計は、回収されるウラン及びプルトニウムの価値により再処理費用を賄えるという前提に立って設定されており、料金原価上も、再処理費用を費用とせず、資産としてレートベースに算入することとしている。しかしながら、最近に至って再処理費用が回収されるウラン及びプルトニウムの価値を大幅に上まわることが明らかになってきており、現行の取扱いを継続していくことは、電気の消費者の世代間の負担の不公平を招くという問題が生ずる。したがって、現行の取扱いの改善につき検討が求められている。また、再処理費用以外の原子力バックエンド費用についても、将来確実に発生することが明らかであるので、これについても将来の消費者に負担させることの適否が問題となっており、同様に検討が求められている。

【結論】

(1) 原子力バックエンド費用のうち、高レベル放射性廃棄物のガラス固化費用を含む使用済核燃料の再処理費用については、炉内で燃焼している時点で引当金を積立てる方式により、料金原価に算入することが適当である。なお、引当金方式の採用に伴い、企業会計及び税制上の取扱いとの整合性が図られることが望ましい。

(2) 放射性廃棄物の処分及び廃炉の費用については、現時点では、処分方法等につきなお不確定な要素が多く、将来の費用を合理的に見積もることが困難であるので、引続き内外の事態の推移を見極めながら、その取扱いを検討していくことが適当である。

六ヶ所再処理工場の建設費は?

1999年日本原燃は、建設費の見積もりをそれまでの「1兆8,800億円」から「2兆1,400億円」に変更した。1989年に事業許可申請が出されたときの建設費見積もり額は7600億円だった。


工事費について

ア.総工事費

 再処理工場の総工事費については、現在の「1兆8,800億円」から「2兆1,400億円」に変更します。

バックエンドが問題になってきたのは?

18.8兆円のうち、六ヶ所再処理工場建設・操業費や高レベル廃棄物処分費用などの10.1兆円については回収する仕組みがあったが、工場の廃止措置費用など残りの8.7兆円を誰がどう負担するかが問題になった。

東奥日報2004年7月3日(土)

核燃料直接処分は再処理の半分以下/政府が試算を公表せず

 原発から出る使用済み核燃料を地中深く直接埋めて捨てれば、再処理方式に比べて半分以下と大幅に安くなるとの政府試算がありながら、公表していなかったことが二日明らかになった。核燃料サイクル見直し論議が高まるのを政府が恐れたためとみられる。重要な情報開示を怠っていたことで、核燃サイクル政策の是非を検討する原子力委員会の議論にも影響を与えそうだ。

 試算は一九九四年と九八年に実施し、再処理方式が直接処分方式の二―四倍割高となる。当時の議論で電力会社側が「割高との試算が公表されると、サイクル事業が成り立たなくなる」などと主張。政府は、今年三月の国会でも「試算はない」と答弁していた。

 経済産業省資源エネルギー庁は二日、試算があったことを認め、原子力委員会に資料を提出することを明らかにした。

 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)は六月、再処理の総費用は十八兆八千億円との試算をまとめており、一部は電力料金に上乗せする計画。

 三月の参院予算委では、直接処分の費用に関する福島瑞穂(ふくしま・みずほ)社民党党首の質問に、日下一正(くさか・かずまさ)資源エネルギー庁長官(当時、現経済産業審議官)が「再処理しない場合の試算はない」と答弁した。

 これについて日下審議官は二日、「試算があることは知らなかった」と述べた。エネ庁の柳瀬唯夫(やなせ・ただお)原子力政策課長は「当時の経緯は分からないが、議論は非公開なので、公表しなかったのは不思議ではない」としている。

 九八年三月に通産省(当時)の外郭団体、財団法人原子力環境整備センター(同)が行った試算は、直接処分の場合は約四兆―六兆円、再処理後に処分する場合は約三・四兆―五兆円としている。処理期間など前提条件は違うが、現在、再処理工場の操業や解体などのコストとされている約十一兆円を加えると、再処理方式は十四・四兆―十六兆円となり、直接処分の二―四倍程度になる計算だ。

 ◇

重大な問題

 鹿内博県議(無所属) 試算しておきながら政府が公表をしなかったことは重大な問題である。再処理ありきの前提で、政策の選択肢の提示を意図的に抑えてきたことになる。情報がきちんと示されていない以上、六ケ所再処理工場のウラン試験は実施すべきでない。

 ◇

推進変わらず

 滝沢求自民党県連政調会長 核燃サイクルを推進する立場に変わりはない。このたびの報道に関しては事実関係が分からないのでコメントしようがない。


バックエンド措置についての電力会社の言い分は?

既に原発の電気を使った顧客が、2005年から本格化する電力自由化のために、特定規模電気事業者(PPS=Power Producer & Supplier)から電気を買うようになった場合に、その顧客から既発電分について回収しておくべきだった分をどうやって回収するかが問題になるから、制度を完備する必要があったというもの。

原子力事業本部原燃計画グループ
 チーフマネジャー 小田英紀

原子力発電の「バックエンドコスト」に注目が集まっている。原子燃料を繰り返し有効利用するリサイクル路線を堅持する一方、電力市場の自由化も加速度的に進むなか、バックエンドコストは誰が、どのように負担すべきなのか──原子力事業本部原燃計画グループの小田英紀・チーフマネジャーに訊いた。

──そもそも「バックエンド」とは何か? //////////
バックエンド(後処理)とは、原子力発電所でウラン燃料を燃やした後の工程のこと。使用済み燃料を再処理し、燃え残ったウランや新たに発生したプルトニウムを取り出してMOX燃料に加工したり、再処理工場などから出る放射性廃棄物を処理処分したりすることをいう。
これらの工程全般を指して「バックエンド」と呼ぶが、実際の工程は発電後すぐに行えるものではないし、短期間で終わるものでもない。例えば使用済み燃料は再処理前に数年間の冷却期間が必要だし、高レベル放射性廃棄物は最終処分までに30~50年間冷却して放射能レベルを下げる。さらに最終処分(地層処分)した後も、何十年間もモニタリングする。つまりバックエンドとは、100年オーダーの長々期にわたる事業だということをまず知ってほしい。

──そのバックエンドコストとして電気事業連合会は2003年末、再処理工場を40年間運転した場合、総額約18.8兆円が必要との試算を公表した。非常に莫大な費用という印象だが? //////////
18.8兆円という数字は、再処理工場やMOX燃料加工工場の操業費から、これらの工場が運転終了した後の廃止措置に関わる費用、さらにはその際に発生する放射性廃棄物の処分費用まで、バックエンド事業全般を網羅したもの。これらの中には、今までの電気料金に含まれていたものもあれば、含まれていなかったものもある。確かに巨額だが、今後「新たに」18.8兆円必要ということではない。今回改めてバックエンドコストを──これまでにプールしたものも、していないものも含めて──全部積み上げたら18.8兆円かかる計算になった、ということだ。

──具体的には、今までの電気料金には何が含まれており、何が含まれていなかったのか? //////////
代表的なものを挙げると、含まれていたのは、使用済み燃料の再処理費用、高レベル放射性廃棄物の最終処分費用など。これらは再処理引当金制度や、NUMO法(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)に基づく積立金制度に則り、電気料金に織り込まれている。一方、含まれていなかったものには再処理工場の廃止措置費用や、TRU廃棄物(超ウラン核種を含む放射性廃棄物―燃料集合体の被覆管など)の処分費用などがある。
バックエンド事業は非常に長期にわたるため、不確定要素も多い。だからこれまでは見積が可能なものから、あるいは制度の整ったものから、順次電気料金に織り込むという方法でやってきた。結果、本来は過去の電気料金に含まれるべき費用も、未回収になってしまっているものもある。

──その「未回収分」はどうするのか? 電気料金に上乗せされるのか? //////////
未回収分がどれくらいあり、どのような措置を講じるかは、今後、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会電気事業分科会で議論されることになっており、現時点では未定だ。ただ、電事連としては、自由化範囲の拡大に伴い、過去に原子力発電による電気を使用したお客さまから回収することが現実的には不可能となるため、これまで原子力の恩恵を受けてきた国民の方々に「広く薄く」負担していただきたいと主張している。

なぜなら未回収分とは「過去の発電」に起因するコスト。つまり自由化拡大以前の、すべてのお客さまが原子力発電所でつくった電力会社の電気をお使いいただいていた時点で、本来回収させていただくべきだったものだ。合理的見積もりができない等の理由により、電気料金として回収することが適当でなかったため回収が遅れてしまったが、だからといって電力会社のお客さまだけから回収したのでは、新規参入者に乗り換えたお客さまが過去に使った電気のコストを、一般家庭など自由化対象外のお客さまに強いることにもなりかねず、公平性を損なう。従って過去の発電に起因する未回収分だけは、なんらかの形で「広く薄く」国民のみなさんにご負担いただきたいと考えているのである。ただ、広く国民のみなさんにと言っているのは、あくまで自由化拡大以前の発電に起因する部分で、18.8兆円のすべてではない。

また、エネルギーセキュリティや環境適合性といった原子力のメリットは、特定地域や特定のお客さまだけでなく、国民誰もが享受しており、その意味でも「広く薄く」負担していただくことが公平性に適っている。

──ただ、それでは国民は、未回収分を負担したうえ、さらにバックエンドコストを上乗せした高い電気を買うことになる。そもそも原子力は経済優位性もメリットのひとつだったはずだが、その優位性が崩れるのでは?

そんなことはない。実際、今回のバックエンドコスト試算と同時に電源別の発電原価も試算したところ、運転年数40年、割引率3%の場合、原子力は5.3円、石炭火力が5.7円、LNG火力6.2円、石油火力10.7円(いずれもkWh当たり)。発電所建設コストの低減などもあり、前回試算の5.9円よりさらに安くなる。確かに石炭火力との差は接近しているが、長期的に見れば依然として最も割安な電源といえる。
もちろんこの5.3円は、バックエンドコスト0.81円を含んだ数字。0.81円の中には、これまで電気料金に含まれていなかった再処理工場の廃止措置費用なども入っている。つまりバックエンドコスト18.8兆円の項目をほぼ網羅して、これを織り込んだ発電原価が5.3円だ。従って巷間囁かれている「バックエンドコストを加味すれば割高になる」というのは間違い。バックエンドコストを含めても、原子力の経済性は他の電源との比較において遜色はない。

──とはいえ今後の政策如何によっては、原子力を取り巻く情勢が大きく変わる可能性もある。電力会社は相当のリスクを抱えることにならないか?

確かにそうだ。もちろん今回試算した18.8兆円は、絶対的・確定的なものではなく、ある程度の変動幅も見込んだ数字。規制の見直しや設計・施設の合理化など、合理的範囲内での環境変化には対応できるが、大きな政策転換までは考慮していない。従来の規制下なら、原価主義に基づくコスト回収が可能だった面もあるが、将来の自由化拡大に伴い、いかに経営努力を重ねようと大きな政策変更による増分コスト回収は困難になる。

そうならないためにも、リサイクル路線を進める中での官民の役割を明確化してほしいと要望しており、これについても今後、電気事業分科会で議論される予定だ。

──審議の予定や制度設計の見通しなど、今後のスケジュールは?

契約電力50kW以上のお客さまにまで自由化対象が拡大される2005年がひとつのポイントになる。それまでになんらかの制度をつくっておかないといけないから、2004年1月下旬からの電気事業分科会で審議が行われ、2004年中には結論が出ることになるだろう。議論の結果がどうなるかはまだ分からないが、我々としては、1)バックエンドコスト18.8兆円の試算は、相応の合理性をもって算出したものであること 2)バックエンドコストを含めても原子力の経済性は、他の電源と比較において遜色はないこと 3)自由化拡大以前の発電に起因する未回収分については、公平性の観点から「広く薄く」負担していただくのが望ましいこと──この3点を主張し、公平かつ妥当な制度設計を要望していきたいと考えている。

電力自由化との関係とは?

2005年度から50kWの顧客まで自由化の範囲を広げることを盛り込んだ電気事業法改正案が2003年に衆(5月)参(6月)両院を通過した際、次のような附帯決議がなされていた。

我が国のエネルギーセキュリティと環境保全等の両立の観点から、原子力発電を中核的な電源と位置付け、原子力発電の開発・利用を推進するため、優先給電指令制度の整備など電力供給システムの一層の整備を図ること。

バックエンド事業については、国の責任を明確化した上で、徹底した情報開示と透明性の高い国民的議論の下で、官民の役割分担の在り方、既存制度との整合性等を整理し、経済的措置等具体的な制度・措置の在り方について早急に検討を行い、平成16年末までに必要な措置を講ずること。

なぜ未手当のものがあったのか。

電気事業連合会は次のように説明する。

これらの費用が将来発生することは以前から予見できていましたが、費用を明確に見積もることができなかったため、これらを総括原価制度(適正な原価に適正な事業報酬を加えたものが、総収入に見合うように料金を設定する方式)の料金原価に含めることは政府に認められていませんでした。


この19兆円に関する「上質な怪文書」とは?

「19兆円の請求書─止まらない核燃料サイクル─」(pdf, 416kb)

再処理に批判的な官僚が書いた文書とされる。

核燃料サイクル路線を正当化するものは何もないと説明し、最後は次のように結んでいる。

ちょっと待った!サイクル!

この核燃料サイクルを巡る構図は、古くは国鉄、住専、最近では道路公団、年金問題と同じ

(問題の先送りによるツケが国民に回ることに)

      ──>

核燃料サイクルについては一旦立ち止まり、国民的議論が必要ではないか

19兆円の中身を示した詳しい表は?



資料1
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/cost/rireki/1st/cost1--1.pdf

資料3
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/cost/rireki/1st/cost1--3.pdf

http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/seido_sochi/2th/shiryo4.pdf

http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/seido_sochi/1th/shiryo5.pdf


再処理施設の操業費用

再処理施設の廃止措置費用について

MOX燃料加工事業費用について

返還廃棄物管理費用について

高レベル放射性廃棄物の輸送・処分費用について

TRU廃棄物の地層処分費用について

使用済燃料輸送費用・中間貯蔵費用について

ウラン濃縮工場バックエンド費用について

バックエンドコスト算定に係る共通補足事項資料

バックエンド事業費の海外との比較

バックエンドコスト算定における主な変動要因について

モデル計算による各電源の発電コスト


バックエンドコストと今後のバックエンド事業


2005年に定められたバックエンド事業制度・措置は?

2005年5月11日に成立し、10月1日に施行となった法律で定められたのは:

電力料金に上乗せして徴収していた対象を拡大する。
 これまでの対象
再処理操業本体費用
高レベル放射性廃棄物のガラス固化費用
 追加される対象
ガラス固化体貯蔵
返還廃棄物管理
TRU廃棄物の処分
再処理施設の廃止等
これまでは電力会社内部で積み立てていたものを外部積立とする
 既に内部で積み立てられている分については、15年以内に外部積立に移す。
既発電分に関する上の追加対象については、15年に渡って分割回収する。自由化で特定規模電気事業者(PPS=Power Producer & Supplier)から電力を購入するようになる消費者からも回収する。電力会社(一般事業者)の送電線を使って特定規模電気事業者の電力を運ぶ「託送」制度を利用し、送電線使用量に上乗せして回収する仕組み。
これまでは、発生する使用済燃料すべてについて準備金を積み立てていたが、新制度では、六ヶ所再処理工場で再処理される分についてのみ積み立てる。2010年以後中間貯蔵が始まった場合、そこに送られ、その後第二再処理工場か直接処分に向かうものについては、当面、準備金の積立を行わない。



2012年12月2日日曜日

日本未来の党1次候補者&大地・真民主


【北海道】1区 清水やすみろ▽3区 町川ジュンコ▽4区 とまべち英人▽7区 鈴木たかこ▽8区 北出美翔    ▽10区 あさのタカ貴博▽11区 石川ともひろ▽12区 松木けんこう

【青森】1区 横山北斗▽2区 中野渡詔子▽3区 山内卓

【岩手】1区 達増陽子▽2区 畑浩治▽3区 佐藤奈保美▽4区 小沢一郎

【宮城】1区 横田匡人▽2区 斎藤恭紀▽5区 阿部信子

【秋田】1区 高松和夫▽3区 京野公子

【福島】1区 石原洋三郎▽2区 太田和美▽5区 松本喜一

【茨城】1区 武藤優子▽3区 小泉俊明▽6区 栗山天心

【栃木】4区 山岡賢次

【群馬】1区 後藤新▽3区 長谷川嘉一

【埼玉】7区 小宮山泰子▽8区 西川浩▽9区 松浦武志▽10区 松崎哲久    ▽15区 小高真由美

【千葉】2区 黒田雄▽3区 岡島一正▽4区 三宅雪子▽5区 相原史乃    ▽6区 白石純子▽7区 内山晃   ▽8区 姫井由美子▽9区 河上満栄    ▽11区 金子健一▽12区 中後淳

【東京】1区 野沢哲夫▽3区 池田剛久▽5区 丸子安子▽7区 岡本幸三    ▽9区 木内孝胤▽10区 多ケ谷亮▽11区 橋本久美▽12区 青木愛    ▽13区 本田正樹▽14区 木村剛司▽15区 東祥三▽16区 初鹿明博    ▽18区 杉村康之▽19区 渡辺浩一郎▽21区 藤田祐司▽23区 石井貴士    ▽25区 真砂太郎

【神奈川】3区 岡本英子▽5区 河野敏久▽7区 山崎誠▽12区 阿部知子     ▽17区 露木順一▽18区 樋高剛

【新潟】1区 内山航

【石川】1区 熊野盛夫

【長野】4区 三浦茂樹▽5区 加藤学

【岐阜】1区 笠原多見子▽2区 橋本勉

【静岡】4区 小林正枝▽6区 日吉雄太▽7区 野末修治
   ▽8区 太田真平

【愛知】1区 佐藤夕子▽2区 真野哲▽3区 磯浦東▽4区 牧義夫▽5区 前田雄吉    ▽6区 水野智彦▽7区 正木裕美▽8区 増田成美▽9区 井桁亮▽10区 高橋一    ▽12区 都築譲▽13区 小林興起▽14区 鈴木克昌

【京都】4区 豊田潤多郎▽5区 沼田憲男

【大阪】1区 熊田篤嗣▽2区 萩原仁▽6区 村上史好▽7区 渡辺義彦    ▽15区 大谷啓▽17区 辻恵▽18区 中川治

【兵庫】3区 三橋真記▽6区 松崎克彦

【奈良】2区 中村哲治

【広島】1区 菅川洋▽6区 亀井静香

【山口】1区 飯田哲也

【愛媛】2区 友近聡朗
 
【福岡】2区 小谷学▽4区 古賀敬章▽5区 浜武振一

【長崎】3区 山田正彦▽4区 末次精一

【熊本】2区 福嶋健一郎

【大分】1区 小手川裕市

【宮崎】1区 外山斎

【鹿児島】1区 渡辺信一郎

【沖縄】3区 玉城デニー