2010年2月5日金曜日

【新聞記事】 産経(ほくそ笑むのはまだ早い)

【小沢氏不起訴】ほくそ笑むのはまだ早い (社会部長・近藤豊和)
2010.2.5 08:03(リンク切れというか削除)


 ロシアの劇作家、ゴーゴリの作品に『検察官』がある。田舎町を訪れた青年を検察官と思い込んだ市長や官吏らが、日ごろの自身の悪事の露見におびえ、穏便に済ませようと金品を青年に渡し、青年は市長の娘をたらしこんだりする。出版時に印刷工や校正係が笑いで作業が進まなかったという逸話が残るほどの名作だ。

 作品の検察官像や話の設定とは全く異なることは言うまでもないが、民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件をめぐって跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する周辺のさまざまな人々を見るにつけ、『検察官』に描かれた「悪事や醜事が、一種の微分子のように空中に瀰漫(びまん)し、人間生活のいたるところに跳梁して、人生を醜悪、陋劣(ろうれつ)なたえがたいものとしている」(岩波文庫、米川正夫氏の解説から)という様相がだぶってみえてきた。

 最高実力者にこびるように検察との対決を声高にする小沢氏シンパの民主党議員たち。「政治とカネ」では同じ流派なのに、これ見よがしの自民党議員ら。何の怨念(おんねん)なのか、古巣批判を執拗(しつよう)に続ける特捜OB。テレビで「検察リーク」などとしたり顔のコメンテーターたち…。

 事件周辺には「微分子」がまさにハエのようにたかっていた。

 政権奪取を主導した小沢氏を軸とした政治状況の転覆をひそかに狙う民主党内の反小沢派も、政権復帰に悲壮感漂う無力な自民党も「検察の捜査頼み」という体たらくでなんとも情けない。

 検察の捜査について、「対決」とか「全面戦争」などとすぐに主張し始め、政治的な意図を絡めて根拠も十分にないような推論が展開されるような状況を“消費”しているだけでは、「政治とカネ」の根源的問題の解決には決してつながらない。

 「政治とカネ」の問題に、政界の自浄作用を求めるのは不可能なのだろうか。「政治とカネ」にもはや食傷気味の国民ムードもある。経済が悪化し、国力が衰退すれば、「政治とカネ」よりも「明日の生活」という思いが強まるのも理解できる。こうしたムードに乗じてか、「国会での不毛な『政治とカネ』の議論。国民は経済対策を望んでいる」などとテレビで公言する民主党議員すらいる。

 金絡みによる政治権力基盤がなくても、国、国民のために身をささげる有能な政治家がよりよい政策を遂行できるような「理想」を希求し続けることは必要だ。

こうした理想を失うと、悪徳政治家の思うツボだ。「ワイロ天国」の評判高いどこかの国のようなありさまにもなってしまう。「政治とカネ」の問題に疲れてはいけない。代償はあまりに大きいのだ。

 今回の事件の捜査は、小沢氏の最側近である石川知裕衆院議員、大久保隆規公設第1秘書らが起訴され、一方で小沢氏本人の不起訴ということで、ひとまずの「到達点」を迎えた。

 しかしながら、捜査の過程で表面化した、陸山会による東京都世田谷区の土地取引に絡む不明朗な億単位の金の出し入れや融資については、腑に落ちないことが多すぎる。また、陸山会による大量の不動産取得や政党助成金の移動など総額数十億円にも上る不明朗な金の動きに至っては、「疑惑の山」であり続けている。

 小沢氏の不起訴の観測が一気に拡大した2日夜。小沢氏側関係者たちは早くも「勝利宣言」をあちこちでし始めていた。この日昼、衆院本会議場で鈴木宗男衆院議員とほくそ笑む小沢氏の姿を報道各社のカメラがとらえていた。

 「疑惑の山」への捜査は継続されることだろう。そして、国民の注視もやむことはない。ほくそ笑むのはまだ早い。

【小沢一郎】 平野貞夫氏からみた小沢一郎

小沢一郎と田中・金丸・竹下の関係 』
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多くのマスコミは小沢一郎を田中角栄元首相、竹下登元首相、金丸信元自民党副総裁の政治的後継者とし、政治手法もそれを発展させたと報道している。これは誤ったものだ。たしかに田中元首相に目をかけられていたし、金丸元副総裁は猫かわいがりしていた。竹下元首相とは縁戚関係であったが、感性が合わず、両方から私に調整をしばしば頼まれていた。

かく申す私は衆院事務局に勤務していたことで、田中・金丸・竹下の三政治家とは、小沢さんより10年近く古くからの付合いだった。第一次佐藤栄作内閣の頃、竹下内閣官房副長官、金丸議運理事とは国会運営でアドバイスを求められたりした。特に園田直衆院副議長秘書時代、竹下・金丸両氏とは毎日会っていた。田中さんは園田副議長の使いで行くと、よく説教をされた。

私が小沢一郎という政治家と仕事を超えた人間関係となったのは、ロッキード事件の後政治倫理制度をつくる時代である。小沢議院運営委員長に就任してからだ。よく政治家としてのあり方を聞かれたが、「マスコミに迎合していては、良い政治はできない」と私の人生の師である故前尾繁三郎衆院議長の考えを伝えたことがある。その後の小沢さんの政治活動をみると、かなり影響を与えたようだ。


ロッキード事件の田中元首相の裁判を全部傍聴したことで知られている。これについて2つの見方がある。1つは被告の田中元首相と同じ発想で、検察憎しという姿勢だ。もう1つは点取り虫で良く思われたいからだろうというものであった。いずれも誤った見方である。

私には「総理までやった人間が、苦境に立ったとき、どのような生き様をするのか、これを学んで おきたかった 」と、語ってくれたことがある。朝日新聞のコメンテータをやっている早野透氏は、政治部記者で活躍している頃、「小沢一郎は田中角栄の内在的批判者だ」と論じたことがあるが、これが正しい見方である。


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『 小沢一郎の政治資金に不正なものがない 』
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自民党単独政権で、47歳で幹事長まで登りつめた小沢一郎について、世間では「さぞかし汚れた資金に手を染めているだろう」との風評がある。これが根本的に間違っている。田中角栄、金丸信、竹下登の3人については、問題のある政治資金に手を汚していたことについて、私も否定はしない。小沢一郎については、それがないことを私は証明できる。

私は国会運営の裏側で、さまざまな仕事にかかわり、昭和40年代から平成初期までの田中・金丸・竹下の3人は、小沢一郎を大事にしすぎて、問題のある政治資金について関わらせていなかったのだ。政治資金について苦労をさせていないのである。もっぱら、政治資金の透明化と政治倫理制度の確立について、衆院事務局職員の私と共に制度づくりの仕事に励んでいたのだ。

そのことを証明する話だが、私が参院議員となり平成5年6月、宮沢内閣不信任案を可決し、衆院総選挙となる。羽田・小沢グループは「新生党」を結成する。綱領と基本政策の政策を担当した私は、念のため羽田・小沢両氏の政治活動での資金問題を、法務検察首脳に調査してもらった。回答は自民党時代の2人の政治資金について、問題なし二重丸だとの返事であった。私はこれで真の政治改革ができると確信した。自民党離党した後の小沢一郎の政治資金に不正なものがないことは、私がもっとも知っている。