【衝撃事件の核心】「花には水を 人には愛を!」…理想とかけ離れた女社長の行状 郵便不正事件
2009.3.1 08:00
大阪地検特捜部が強制捜査に乗り出した広告代理店「新生企業」(現・伸正、大阪市西区)による郵便法違反事件では、同社が障害者団体向けの郵便割引制度の“盲点”を巧みに突き、福祉をエサに130億円にも上る暴利をむさぼっていたことが明らかになった。郵便料金をめぐる過去最大規模の“巨額詐欺”だ。郵便事業会社は「制度が悪用されるという発想がなかった」としているが、制度自体を現場の職員が明確に知らないなどチェックの甘さが事件の背景にある。そのしわ寄せはすべて、新生企業に利用された形の障害者団体に向けられた。
だまされた障害者団体
2月27日午前8時すぎ、大阪地検特捜部の係官4人が雨のぱらつく中、大阪府吹田市内の障害者団体の施設へ家宅捜索に入った。
突然、捜索令状を示された施設職員は驚き顔で、作業中の障害者たちが不安そうに捜索の様子を見守っていた。
この団体の理事長は平成18年秋、知人から「いい話がある。ちょっとぐらいお金が入るかもしれない」と持ち掛けられ、新生企業で社長の宇田敏代容疑者(53)=郵便法違反などで逮捕=と会った。
刊行物の発行を勧められ、1通40銭が団体に入る約束。刊行物の同封で広告用ダイレクトメールの発送料金が15分の1にもなる仕組み。1年半で約240万円が銀行に振り込まれた。
理事長は「そのお金でスタッフの昼ご飯になったし、みんなで忘年会もできた。それがこんなことになるなんて…」とうなだれる。
問題発覚後、郵便事業会社から「発行所の責任」として、正規料金との差額約3億3000万円を請求された。
「このままではつぶれてしまう」
現在は大阪府の指導で弁護士と相談し、郵便事業会社と交渉中だという。
注射器が落下
大阪市内が一望できる同市北区の超高層マンションの38階に住む宇田容疑者。最上階の部屋は有名タレントが所有していることで有名な高級物件だ。
同月26日朝、特捜部の家宅捜索が入った際、近所の住民らが騒然となるトラブルが起きた。
地検係官が部屋に入った後、宇田容疑者の部屋の窓から約130本の注射器が入った箱が落下してきたのだ。当時、マンション玄関付近でカメラを構えていた報道陣にも危うく当たりそうになったという。
宇田容疑者が薬物を使用しているといううわさは新生企業関係者の間で根強く、事実、部屋から乾燥大麻が押収された。
宇田容疑者は昭和51年、化粧品会社に入社。3年後に退社してクラブを一時経営した。平成16年に新生企業を設立してからは、銀色のポルシェに乗り、ブランド服に身を包んで営業活動に回ったという。
「世のため人のため仕事をやっている」「20年以上福祉の経験がある」。宇田容疑者の誘い文句は巧みだった。
「花には水を 人には愛を!」と書かれた名刺を配り、福祉を前面に出していたが、その場では本名を隠して「順子」という偽名を使っていた。
郵便事業会社に批判の声
宇田容疑者の悪質な犯行の裏には、郵便事業会社のチェック体制の不備がある。障害者団体の関係者からも批判の声が上がる。
障害者団体向け割引郵便制度を利用するには、(1)1回の発行部数が500部以上(2)1回の発行部数の8割以上が有料購読(3)広告が全体の5割以下-などの条件がある。
これら条件を郵便局の窓口でチェックしなければならないが、郵便事業会社渉外広報部は「障害者福祉の向上を目的としていたため、不正があるということを念頭に置いていなかった。このため書類上のチェックしかしておらず、そこをつけ込まれてしまった」と話した。
実際に発送作業にかかわっていた障害者団体の関係者は「郵便局の窓口の奥の壁には『目標売り上げ●円!』と書かれた紙が張ってある。売り上げノルマを達成するために不正を黙認していたのでは」と批判している。
郵便不正事件で障害者団体が悪用認識、リベートも
2009.3.18 02:00
大阪市西区の広告代理店「新生企業」(現・伸正)が障害者団体の定期刊行物に適用される割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、東京都内の障害者団体が制度の悪用を認識したうえで、新生企業側から「寄付金」と称したリベートを得ていた疑いのあることが17日、広告関係者への取材で分かった。
大阪地検特捜部もこうした事実を把握し、障害者団体の関与を解明する方針を固めた。
大阪国税局は同日、平成17年3月期からの3年間で約8700万円を脱税した法人税法違反の罪で新生企業社長、宇田敏代(53)と同社元取締役、阿部徹(55)の両容疑者を特捜部に告発。特捜部は18日にも同法と郵便法違反の罪で両容疑者を起訴する。
また、大阪府警は近く、覚せい剤取締法違反容疑で宇田容疑者を再逮捕する方針。
関係者によると、都内の障害者団体は約5年前、新生企業から割引制度の利用を持ち掛けられた。団体は定期刊行物の製作と発送をすべて自ら行い、新生企業からは広告主の紹介を受けていたという。
割引制度を利用すれば、刊行物に企業パンフレットを同封したダイレクトメール(DM)の郵送料が1通8円(通常1通120円)になる場合もあるが、刊行物の発行部数の8割以上が有料購読でなければならない。ところが、この団体は広告主の無料顧客にすべて発送しており、制度対象外であることを認識。新生企業から1通当たり少なくとも50銭以上のリベートを得ていたという。
さらに、自ら広告代理店に“営業活動”に回り、割引制度を紹介していた。ある広告代理店は「『私たちならDMを安く送れます』と売り込んできた。『問題はない』というので信じてしまった」と話す。
団体幹部は産経新聞の取材に対し「違法性の認識は全くなかった」と話している。
ウイルコ会長ら逮捕へ 郵便法違反事件、広告主なども強制捜査
2009.4.16 02:10
障害者団体の定期刊行物に適用される割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、大阪地検特捜部は15日、大阪市西区の広告代理店「新生企業」(現・伸正)社長、宇田敏代被告(53)=同法違反罪などで起訴=らと共謀し、不正に郵便料金を免れた疑いが強まったとして、同法違反の疑いで、東証2部上場の印刷会社「ウイルコ」(石川県白山市)の会長(57)らを16日にも逮捕する方針を固めたもようだ。
強制捜査の対象は、定期刊行物の発行元となった障害者団体「福祉事業支援組織・白山会」(東京都文京区)の会長(69)のほか、刊行物に同封した商品パンフレットの広告主だった大手家電量販会社「ベスト電器」(福岡市)や取引を仲介した大手広告代理店の子会社の幹部ら。逮捕者は10人近くに上り、特捜部は関係先として郵便事業会社新東京支店などを捜索する方針。
新生企業が過去4年半で正規料金との差額約211億円を免れたとされる事件は、新たに障害者団体や広告主などに波及する見通しとなった。
関係者によると、ウイルコなどは平成17年8月~20年2月、白山会などの刊行物とベスト電器の商品パンフレットを同封したダイレクトメール計約1190万通をベスト電器の顧客に郵送。割引制度の悪用で1通7円(通常は1通120円)に割り引かれ、少なくとも計約4億4000万円を不正に免れたとみられる。
不正郵送には新生企業の宇田被告らが主体的に関与。ウイルコはパンフレットなどの印刷のほか、自ら広告主としてかかわったケースもあったという。
白山会をめぐっては、民主党の牧義夫衆院議員(51)=愛知4区=が白山会の競合団体による割引制度悪用の実態を国会で質問し、白山会会長側から計24万円の寄付を受けたことが判明している。
ウイルコ会長ら逮捕へ ベスト電器DM、不正発送
2009.4.16 08:57
障害者団体向け郵便料金割引制度の悪用事件で、印刷・通販大手「ウイルコ」(石川県白山市)や大手家電量販店「ベスト電器」(福岡市)が不正に関与していたとして、大阪地検特捜部は16日、郵便法違反容疑で関係先の家宅捜索を始めた。ウイルコの若林和芳会長(57)やベスト電器の担当部長らを逮捕の方針。
実態のない障害者団体を利用した1000万通を超えるダイレクトメール(DM)の不正な格安発送に、広告主を含む大手企業が深くかかわっていた可能性が高く、特捜部は全容解明を進める。
特捜部は16日朝、東京都文京区の障害者支援団体「白山会」を捜索し、会長を任意同行した。大手広告会社の子会社「博報堂エルグ」(福岡市)の担当者も取り調べるほか、大阪市の広告代理店「新生企業」(現・伸正)の社長、宇田敏代被告(53)=郵便法違反罪などで起訴=ら2人も再逮捕する。
ベスト電器部長を逮捕 通販ウイルコ会長らも
2009.4.16 14:30
大手家電量販店「ベスト電器」が、障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用して大量のダイレクトメール(DM)を格安で発送していたとして、大阪地検特捜部は16日、郵便法違反容疑で福岡市博多区の本社など関連先を一斉に家宅捜索、販売促進部長ら数人を逮捕した。制度を使うことを持ち掛けた疑いがある印刷・通販大手「ウイルコ」(石川県白山市)の若林和芳会長(57)=16日に辞任=らも取り調べており、10人近くを逮捕する。
実態のない障害者団体を使った1千万通を超えるDMの不正発送に広告主を含む大手企業が深くかかわっていた可能性が高く、特捜部は全容解明を進める。
10人は若林会長のほか、障害者支援団体「白山会」(東京都文京区)の会長、大手広告会社の子会社「博報堂エルグ」(福岡市)の担当者ら。
ウイルコ若林会長が辞任
2009.4.16 14:51
障害者団体向け郵便料金割引制度の悪用事件で、東証二部上場で印刷・通販大手のウイルコ(石川県白山市)は16日、若林和芳代表取締役会長(57)が15日付で辞任したと発表した。
同社によると、若林会長は15日に辞任を申し出た。辞任理由は「一身上の都合」としている。
会見で違法性の認識否定 ベスト電器社長
2009.4.17 19:57
障害者団体の定期刊行物に適用される割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、広告主となっていた大手家電量販会社「ベスト電器」(福岡市)の濱田孝社長は17日、同市内で会見し、同制度を利用したきっかけを「障害者団体の活動の啓蒙(けいもう)にもなると考えた」と釈明。「違法性の認識はなかった」と繰り返した。
濱田社長は同制度を使ったダイレクトメール(DM)の企画案について「(当時の)社長の決裁だった」と説明。広告代理店の「博報堂エルグ」側から事前に「法には触れないと聞いていた」とし「発送を始めた当初から違法とはまったく思っていなかった」と違法性の認識を一貫して否定した。
また「お客さまや関係者に多大なご迷惑をかけたことをおわびします」と謝罪する一方、正規料金との差額の返還については「捜査の最終的な結論が出るまで、返還するかどうかも回答できない」と明言を避けた。
不正DM「審査甘い」郵便支店に集中 埼玉で拒否…東京持ち込み
2009.4.20 02:02
障害者団体向けの割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、障害者団体「白山会」を発行元とする不正ダイレクトメール(DM)の持ち込み先が当初、「第三種郵便物制度適用の承認審査が甘い」として業界内で知られた郵便事業会社の支店(旧郵便局)に集中していたことが19日、分かった。その一つの埼玉県内の支店が不正の“疑念”を抱き、白山会名義のDMの発送を拒否した後も、新東京支店(東京都江東区)では認められたという。
また、発送先が不明だった際の不正DMの返却先が、同封された商品パンフレットの広告主の大手家電量販会社「ベスト電器」(福岡市)と申請されており、実際に大量に返却されたケースがあったことも判明。大阪地検特捜部は、新東京支店の担当者らが発行元と返却先が異なるなど不自然な状態を黙認した可能性があるとみて、事情を聴いている。
関係者によると、郵便事業会社の関東支社管内では、群馬、埼玉両県内にある大量の郵便物を扱う拠点局が低料第三種郵便物の審査が甘いとして知られていた。適用要件の審査は郵便事業会社「第三種郵便物調査事務センター」(東京都墨田区)や各支社でも行われるが、白山会関係者は「支店の窓口さえパスすれば、後はエスカレーター式に承認が出た」と話す。
ベスト電器から顧客へのDM郵送業務を受託した広告代理店「新生企業」(大阪市西区)が19年初頭、埼玉県内の支店に持ち込んだところ、配達できなかった際の返却先が発行元の白山会でなく、ベスト電器になっていたことで発送を断られたという。これを知った白山会会長、守田義國容疑者(69)が、約20年来の仲だった民主党の牧義夫衆院議員(51)=愛知4区=の事務所に相談し、男性秘書が同行して郵便事業会社側に問い合わせを行ったことが判明している。
埼玉県内の支店が発送を拒否した後、その報告を受けた郵便事業会社は、白山会名義のDMの取り扱いに注意するよう各支店に文書で通知していた。だが、新たに持ち込まれた新東京支店は承認、19年2月2日から発送を始めたという。
【郵便法違反事件】健康食品社長逮捕へ DM郵送差額18億円 大阪地検捜索
2009.5.8 12:07
障害者団体向けの割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、新たに健康食品通販会社「元気堂本舗」(東京都港区)などの広告主のダイレクトメール(DM)を不正発送していたとして、大阪地検特捜部は8日、同法違反容疑で窪田勝社長(65)の取り調べを始めるとともに同社を家宅捜索した。
同社は、DMに同封の定期刊行物を発行していた障害者団体「健康フォーラム」代表、菊田利雄被告(61)=起訴済み=の個人口座に手数料名目で計約2600万円を支払っており、特捜部は社長が違法性を認識していた事実とみて調べている。
また、この不正発送にも関与していたとして、菊田被告のほか、広告代理店「新生企業」(大阪市西区)社長、宇田敏代(53)▽印刷・通販大手「ウイルコ」(石川県白山市)前会長、若林和芳(57)ら7被告=いずれも起訴=を再逮捕する方針。
関係者によると、菊田被告らは平成18~20年、元気堂本舗など数社に通常120円の料金が8円になる低料第三種郵便物制度の利用を持ちかけ、同社の広告と健康フォーラムの定期刊行物を同封したDM約1600万通を発送。正規料金との差額約18億円を不正に免れた疑いが持たれている。
民間信用調査会社によると、同社は10年に設立。青汁などの健康食品やトルマリン石を使った健康器具の通信販売を手掛け、18年5月期の売上高は12億5000万円。
同社によると、17年8月から同制度の利用を始め、20年12月まで毎月2、3回、それぞれ10~30万通のDMを発送。この間、菊田被告の個人口座に手数料として毎月65万円ずつ計約2600万円を振り込んでいたという。
窪田社長は8日朝、東京都杉並区の自宅前で報道陣に対し、「3年ぐらい前にある程度、違反と認識した。安いのがあればぜひ使ってみたいと思った。通販業界で日常的に使われていて(違反という)意識が薄らいだ。真摯(しんし)に反省しなければならない。ある程度、郵便事業会社も認めていたのではないか」と話した。
DM不正「誰かが受け付けてくれた」障害者団体会長 黙認常態化か
2009.5.20 14:22
障害者団体向けの割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、障害者団体「白山会」(東京)会長の守田義國容疑者(69)が違法ダイレクトメール(DM)を郵便事業会社に持ち込む際、「大きな支店は多くの窓口担当者がいるので最終的に誰かが受け付けてくれた」と関係者に話していたことが20日、分かった。違法DMを大量発送していた新東京など4支店の多くの社員が大阪地検特捜部の調べに「違法性を認識していた」と供述しており、大規模支店の中で違法DMを黙認する雰囲気が広がっていたとみられる。
特捜部によると、同法違反容疑で逮捕された新東京支店総務主任、鈴木智志容疑者(39)は「白山会や(DMの広告主の)ベスト電器のために優遇したのではない。金品ももらったりしていない」と供述しているという。
関係者によると、白山会は平成18年8月~20年9月、ベスト電器などが広告主の違法DM計約1600万通を発送。当初はさいたま新都心支店に持ち込んでいたが、19年1月に160万通を持ち込んだ際、形式的な不備を指摘され、発送を拒否された。
その後、不備を修正しないまま埼玉県内の別の支店に持ち込んだが、「うちでは処理しきれない」として断られた。このため2月2日~4日、今度は新東京支店に申請したところ、同支店が発送を受け付けた。この発送の決裁は鈴木容疑者が行っていたという。
白山会側はこの後、不備は修正したものの、違法DMの発送を続行。守田容疑者は知人に「不自然に思われないようさいたま新都心と新東京の2支店に分けて持ち込むようにした。窓口担当者が多いので誰かが受け付けてくれた」と話していたという。
郵便事業会社によると、低料第三種郵便物の受付窓口には通常、申請書類を受け取る引き受け者と、発送通数などを調べる検査者が従事。大規模支店では1班約10人が1日3交代制で勤務している。
2支店が違法DMの発送を拒否した後、郵便事業会社は白山会名義のDMに注意を呼びかける文書を各支店に配布していた。新東京支店がこの後に違法DMを受け付けていたことから、特捜部は、鈴木容疑者らが文書を把握していたかについても詳しく事情を聴く。
【主張】郵便不正 自らの手で体質改善図れ
2009.5.21 03:16
障害者団体の定期刊行物に適用される料金割引制度を悪用した郵便法違反事件は、日本郵政グループの日本郵便(郵便事業会社)支店長らの逮捕に発展した。不正をチェックする立場にある郵便事業会社の刑事責任が問われる事態になったのである。
障害者団体の定期刊行物は「低料第三種郵便物」が適用され、通常だと1通120円かかるところを8円で郵送できる。大阪の広告代理店が、これに目をつけ、活動実態のない障害者団体などの名義でダイレクトメール(DM)を発送していた。
この広告代理店や、これを利用した家電量販大手などの関係者もすでに逮捕されている。日本郵便支店長らは、DMが制度適用の条件を満たしていないことを知りながら、発送を黙認していたとの疑いがもたれている。
福祉目的の制度を悪用した企業の罪は重く、これを故意に見逃す行為は許されない。問題のDMを発行元とあて先不明時の返送先が異なるとの理由で発送を拒否した日本郵便の支店もあったのだから、言い訳はできない。
今回の事件は、日本郵政グループ全体の問題としてとらえるべきだが、郵政民営化に全責任を押しつける議論はおかしいだろう。
日本郵政をめぐっては、「かんぽの宿」のオリックス・グループに対する一括売却問題を契機に、政治家を中心に、民営化は誤りだったとの声が出ている。これには、近づく衆院選をにらんだ政治的な思惑がからんでいる。
一連の不祥事でグループのトップである西川善文・日本郵政社長の責任追及は当然としても、それが民営化の流れを逆戻りさせようという勢力と結びつくことには警戒が必要だ。
「かんぽの宿」で露呈した手続きの不透明性、障害者郵便不正で明らかになった法令順守意識の低さは、むしろ、民営化前からのお役所的なおざなりのチェック体制、さらには不祥事が続出した社会保険庁と通じる官僚体質の表れとみるべきである。
無用の政治介入を許さぬためにも、日本郵政が自らの手で、組織上の問題点がなかったのか、社員の意識改革が遅れていなかったのかなどを厳しく検証しなければならない。そのうえで組織の体質を改善することが、再発防止には不可欠だ。最も重要なのは、日本郵政の自浄能力なのである。
郵便不正で厚労省の公印使用か 障害者団体の偽証明書
2009.5.26 01:08
障害者団体向けの割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、障害者団体が制度の適用を受ける際に郵便事業会社(日本郵便)側に提出した偽の証明書に、厚生労働省の公印が使用されていた可能性が高いことが25日、分かった。厚労省にはこの証明書を発行した記録は残っていないが、省内で発行に関する「稟議書」が存在していたという情報もあり、大阪地検特捜部は証明書が作成された経緯を捜査している。
証明書の発行に厚労省の職員が関与していれば、虚偽公文書作成容疑にあたるとみられる。
この障害者団体は「白山会」(東京)の前身の「凛(りん)の会」。平成15年10月に設立され、16年1月から定期刊行物「凛」を発行、低料第三種郵便物制度適用の承認を受けた。
承認申請に際し、国や自治体が発行する証明書を添付する必要がある。凛の会は16年5月28日付で、厚労省から「国内郵便約款料金表に規定する心身障害者団体であると認める」などとする証明書の発行を受けていたとされる。
証明書には当時の厚労省障害保健福祉部企画課長の公印が押されていたが、厚労省の原簿に発行記録はなく、同省は「凛の会が偽造した可能性がある」としていた。
しかし、特捜部が証明書について捜査した結果、公印は実物の可能性が高いことが判明。発行直前に凛の会の元会員が厚労省を訪れ、申請の進捗状況について確認していたことなども分かったという。
厚労省の係長逮捕 郵便不正で稟議書を偽造
2009.5.26 19:01
障害者団体向け郵便制度悪用事件で、ダイレクトメール(DM)を不正発送していた障害者団体の承認に向けた厚生労働省の「稟議(りんぎ)書」を偽造したとして、大阪地検特捜部は26日、虚偽公文書作成・同行使の疑いで、同省障害保健福祉部企画課係長の上村勉容疑者(39)=東京都中野区=ら2人を逮捕した。
特捜部によると、上村容疑者は容疑を認めている。ほかの逮捕者は障害者団体「凛の会」(現・白山会)の元会員、河野克史容疑者(68)。
捜査関係者らによると、上村容疑者らは平成16年4月ごろ、倉沢邦夫容疑者(73)=郵便法違反容疑で逮捕=や元会員らが設立した凛の会への証明書発行の承認に向けた決裁手続きが進んでいるよう装った稟議書を、偽造した疑い。
厚労省は稟議書を含め、凛の会への証明書を発行した記録や資料はないと主張。しかし、稟議書が内部文書の形式と酷似していたことから、特捜部は省内の職員が偽造したとみて捜査していた。
郵便不正事件 上村、河野容疑者との一問一答
2009.5.27 01:51
上村勉容疑者は逮捕前日の25日に、河野克史容疑者は4~5月にそれぞれ産経新聞の取材に答えた。主なやりとりは次の通り。
【上村容疑者】
--凛の会との接点は
「凛の会という障害者団体は知らないし、倉沢(容疑者)や河野(容疑者)についても記憶にない。名刺も残っていないので会ったことはないと思う」
--凛の会の証明書の申請を受けたのではないか
「まったく知らない。そもそも私の在職中の2年間で障害者団体から申請を受けたことはなかった」
--申請は通常毎年2、3件あるが、在職中にゼロだったのは不自然ではないか
「たまたま申請がなかっただけだと思うが…。別の部署で起案されたケースだと、自分の関知しないところで決裁されていたのかもしれない」
【河野容疑者】
--凛の会の証明書偽造に関与したのか
「申請手続きは倉沢容疑者に任せていたのでよく分からない。証明書は厚労省から正規に出たものだと思っていた」
--なぜ倉沢容疑者に任せたのか
「国会議員の秘書をしていたことで政治的な力に期待する部分もあった。そういう意味では自分にも責任があると思う」
--上村容疑者とは面識はなかったのか
「16年5月中旬に一度、上村容疑者の元を訪れたことはあるが、申請の進捗(しんちょく)状況を聞くためだった。結託して偽造にかかわったわけではない」
【郵便法違反事件】厚生労働省を家宅捜索 大阪地検
2009.5.27 09:33
障害者団体向けの割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、大阪地検特捜部は27日午前、東京・霞が関の厚生労働省の家宅捜索を始めた。
事件をめぐっては、虚偽公文書作成・同行使容疑で同省障害保険福祉部係長の上村勉容疑者(39)が逮捕されている。特捜部は関連資料を押収するなどして、同省の組織的な関与がなかったか調べるとみられる。
【郵便法違反事件】厚労省、家宅捜索で騒然
2009.5.27 11:25
障害者団体向けの郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、27日午前に大阪地検特捜部の家宅捜索が入った東京・霞が関の厚生労働省は、騒然とした雰囲気に包まれた。
午前9時ごろ、特捜部の係官約20人が厚労省の正面玄関から入ると、待ちかまえていた報道陣が一斉にカメラのフラッシュをたいた。
係官らは、逮捕された厚労省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が所属する同部企画課などを捜索。企画課がある5階には警備員が立ち、職員らも出入りを繰り返すなど緊張したムードが漂った。障害者団体証明書の申請窓口である同課自立支援振興室の扉は鍵がかけられていた。
詰めかけた報道陣と、それを制止しようとする広報室の職員とが「撮影はやめてください」「庁内は撮影禁止です」ともみ合いになるシーンもあった。
厚労省の過去の不祥事でも、何度か繰り返された物々しい光景。最近は新型インフルエンザで存在感を見せていただけに、若手職員からは「また、もとのたたかれる厚労省に逆戻りだ」との声も聞かれた。
【郵便法違反事件】逮捕の厚労省係長、正規の稟議書を切り貼り
2009.5.27 13:00
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、大阪地検特捜部に逮捕された厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が、障害者団体「凛(りん)の会」(解散)への証明書発行手続きが進んでいることを示すために偽の稟議書を作成した際、正規の古い稟議書を切り張りしていたことが27日、分かった。
特捜部は同日朝から東京・霞が関の厚労省を家宅捜索。当時の他の担当職員のの聴取を進めており、厚労省の組織的関与の有無も含め慎重に捜査する。
また、上村容疑者が特捜部の調べに、凛の会が制度適用の承認を受ける際に郵便事業会社(日本郵便)に提出した偽の証明書についても関与を認める供述をしていることが判明した。
特捜部によると、上村容疑者が作成した偽の稟議書の上半分には、起案日の平成16年4月26日という日付と起案者の上村容疑者の署名、押印、下半分には、上司である障害保健福祉部企画課長や社会参加推進室長ら6人の決裁印欄と数人分の押印があった。
上半分は上村容疑者が新たに作成し、下半分は古い正規の稟議書を切って張り合わせていた。当時すでに他部署に異動した同室長の決裁印も押されていたほか、決裁途中であることを示すため、数人分の印鑑を消してコピーした形跡が残っていたという。
この稟議書は、凛の会の発起人、河野克史容疑者(68)が、加盟を申請していた「障害者団体定期刊行物協会」に承認審査が進んでいることを示す資料として提出された。しかし、同会関係者は「証明書の提出を求めていたのに稟議書を持ってきた。しかも張り合わせた感じがして不審に思った」と話していた。
郵便不正事件、厚労省局長が直接電話 倉沢被告「目の前で郵政幹部に」
2009.5.29 00:30
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、「凛(りん)の会」(解散)主要メンバー、倉沢邦夫被告(73)=郵便法違反罪で起訴=が、障害者団体証明書の発行を求めて、厚生労働省の局長(当時・障害保健福祉部企画課長)と面会した際、「局長が目の前で郵便局会社副社長(当時・日本郵政公社東京支社長)に電話をかけた」と話していたことが28日、関係者の話で分かった。
倉沢被告は大阪地検特捜部の調べに、局長の部下だった同部係長、上村勉容疑者(39)が作成した偽の証明書を「局長から直接受け取った」と供述していることがすでに判明している。
特捜部も一連の事実を把握しているもようで、凛の会が制度の承認を受けられるよう局長が郵政側に何らかの便宜を図った可能性もあるとみて、会話の内容などを慎重に調べている。
凛の会関係者によると、倉沢被告は平成16年2月、制度適用承認の相談のため厚労省を訪問。その後も数回にわたって訪れ、局長や上村容疑者、前任の担当者らと面会していた。局長はこの間に倉沢被告の目前で電話をかけたとみられる。
副社長は産経新聞の取材に「局長とは面識がなく電話をもらった記憶もない」。局長は「凛の会についても、倉沢という人物についても心当たりがない」とそれぞれ話している。
また、特捜部は同日、厚労省発行の証明書や稟議(りんぎ)書の偽造に組織的な関与がなかったかどうかを調べるため、関連先として障害保健福祉部の元部長が理事を務める厚労省の外郭団体を家宅捜索した。
元部長は上村容疑者が稟議書などを偽造したとされる16年4月当時の上司。外郭団体によると、特捜部の係官に対し、「全く知らない」と関与を否定していたという。
【郵便不正】厚労省係長「何度もせっつかれ偽造」 「政治案件」として引き継ぎ
2009.5.29 13:38
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに、障害者団体「凛の会」(解散)に偽の証明書などを発行した経緯について、「凛の会側から何度もせっつかれて偽造してしまった」と供述していることが29日、捜査関係者への取材で分かった。
同会主要メンバー、倉沢邦夫被告(73)=郵便法違反罪で起訴=が民主党国会議員の名前をかたって証明書の発行を求めていたことから、特捜部は「政治的圧力」を感じた上村容疑者がたまらず偽造した可能性もあるとみて、当時の上司や同僚らから詳しい事情を聴いている。
厚労省関係者によると、上村容疑者は平成16年4月に同部企画課に異動になった際、前任者から、凛の会の件について「政治案件」として引き継いだ。その後、複数回にわたって倉沢被告らの訪問を受けていた。
一方、同会は前任者の勧めでNPO法人「障害者団体定期刊行物協会」に加盟を申請。しかし、証明書の提出を求められたため、倉沢被告が上村容疑者らに相談を持ちかけた。
捜査関係者によると、上村容疑者は同月下旬、証明書の発行手続きが順調に進んでいるように装うため、内部文書である稟議(りんぎ)書を偽造、凛の会側にファクスで送信したという。
その後、同会発起人の河野克史容疑者(68)=虚偽公文書作成・同行使容疑で逮捕=が5月中旬、証明書発行手続きの進捗(しんちよく)状況を尋ねるために厚労省を訪問。上村容疑者は河野容疑者の念押しに「分かりました」と答えたという。河野容疑者は同月20日ごろにも上村容疑者に電話をかけて確認。結局、偽の証明書は同月28日付で発行された。
郵便不正、証明書偽造は「自己保身のため」厚労省係長が供述
2009.6.2 02:05
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに、「凛(りん)の会」(解散)に偽の障害者団体証明書を作成した動機について、「手早く発行できなければ仕事ができないと思われる。自己保身のためだった」という趣旨の供述をしていることが1日、分かった。偽造に関して上司らの指示の有無が焦点になっていたが、「政治案件」として引き継いだ上村容疑者が重圧を感じ、処理を急ぐために不正な手段を選んだ可能性が高まっている。
一方、障害保健福祉部内で正規の稟議書が回されず、決裁のないまま証明書が発行されるなど不自然な点も残されており、特捜部は、決裁権を持つ上司らが上村容疑者の不正に気付いていなかったか、慎重に捜査を続けている。
捜査関係者によると、上村容疑者は「自己完結的に処理した」と上司や同僚らの関与を否定する供述もしているほか、「凛の会側から何度もせっつかれて偽造してしまった」と焦りから偽造に至った状況を説明しているという。
当時の障害保健福祉部長(57)=退職=の供述などによると、平成16年2月ごろ、民主党の国会議員が部長に電話で凛の会への対応を依頼。以後、部内で政治案件として扱われ、部長や企画課長=現局長=も同会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)=郵便法違反容疑で再逮捕=と面会していた。
2カ月後に企画課係長へ異動した上村容疑者は4月末、倉沢容疑者の求めに応じて、発行手続きが進んでいるように装うために偽の稟議書を作成。さらに5月末~6月初めには、凛の会側に全く審査資料の提出も求めないまま、偽の証明書を発行した。
日本郵政 博報堂との契約を当面見送り
2009.6.3 11:53
日本郵政は3日、博報堂子会社が郵便法違反事件に関与していた事実を踏まえ、博報堂との新規の広告業務契約を当面見合わせる方針を明らかにした。
博報堂子会社の「博報堂エルグ」の執行役員が、障害者団体向けの郵便料金割引制度の不正利用事件に関わったとし、先月起訴されていた。ただ日本郵政は事件の発覚後も博報堂との契約を継続しており、鳩山邦夫総務相が取引を問題視する発言をしていた。
郵便不正事件で日本郵便支店長ら2人を略式起訴 大阪区検
2009.6.8 18:25
障害者団体向け割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、大阪区検は8日、制度の適用要件を満たしていないのを認識しながら、違法ダイレクトメール(DM)の発送を了承したとして、同法違反罪で郵便事業会社(日本郵便)の山本光男・新大阪支店長(59)と鈴木智志・新東京支店総務主任(40)、健康食品通販会社「キューサイ」(福岡市)の河本薫取締役営業本部長(51)を略式起訴した。
大阪簡裁は同日、それぞれ罰金100万、70万、90万円の略式命令を出し、いずれも即日納付された。大阪地検特捜部によると、3人は起訴事実を認めているという。
特捜部は、山本支店長らは個人的な利得を得ていないことに加え、事なかれ主義の企業体質などが背景にあったと判断。また、在宅で取り調べていた河本取締役は、DMの数が他の広告主と比べて少ないことから、それぞれ悪質性が低いとして公判請求を見送った。
起訴状によると、山本支店長は平成20年9~10月、キューサイなどのDM約140万通、鈴木総務主任は19年2月、ベスト電器(同)のDM約130万通の発送を認め、正規料金との差額計約3億円の支払いを免れさせた。また、河本取締役は20年9月、自社の違法DM約57万通を発送し、約6500万円の差額の支払いを免れたとしている。
「偽造証明書を課長に渡した」 郵便制度悪用事件で係長供述
2009.6.11 02:00
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに対し、「偽造した障害者団体証明書を当時の企画課長(現局長)に手渡した」と供述していることが10日、捜査関係者への取材で分かった。
障害者団体「凛(りん)の会」の主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)=郵便法違反容疑で再逮捕=は「局長から証明書を直接受け取った」と供述しており、上村容疑者の供述と符合する。
特捜部は、局長が稟議書の決裁もしないまま、公印を押した証明書を凛の会側に交付していたことを重視、上村容疑者の偽造を認識していた可能性もあるとみて慎重に調べるとともに、上村容疑者がすでに偽造を認めている凛の会の証明書について、週明けの立件を視野に捜査している。
捜査関係者によると、上村容疑者は「平成16年6月初めごろ、5月末付の証明書を手渡した」と説明。これまでの特捜部の調べでは、上村容疑者は凛の会への対応について、「政治案件」として引き継ぎを受けていた。
上村容疑者は特捜部の調べに「手早く発行できないと仕事ができないと思われる。自己保身のために偽造した」などと供述していた。しかし、特捜部は、上司や同僚らが偽造を指示していなかったものの、不正の認識があった可能性もあるとみて捜査していた。
郵便不正「ノンキャリなので押しつけられた」 厚労省係長が供述
2009.6.11 13:33
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに対し、厚労省内で政治案件として扱われていた「凛(りん)の会」(解散)の障害者団体証明書の発行などをめぐり、「自分はノンキャリアなのでややこしい仕事や面倒な仕事を押しつけられていた」と供述していることが11日、分かった。
上村容疑者は偽造した証明書について、「凛の会側に自分で渡した」から「当時の課長(現局長)に渡した」と供述を変遷させており、特捜部は、証明書の申請から発行までの経緯の全容解明には局長の任意の聴取が必要と判断、近く事情聴取する方針を固めたもようだ。
捜査関係者によると、上村容疑者は、局長に偽造した証明書を渡した際、局長から「分かりました。ありがとう」と声をかけられたなどと当時の状況を細かく説明。また、供述を変えた理由については、「キャリアの上司の名前を出したくなかった」との趣旨の供述をしているとされる。
これまでの特捜部の調べでは、凛の会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)=郵便法違反容疑で再逮捕=は「証明書を局長から直接受け取った」と供述していた。
一方、局長は5月末、産経新聞の取材に広報室を通じて、「凛の会についても倉沢という人物についても心当たりはない。彼らがなぜそのように言っているのか分からない」と否定するコメントを出した。
凛の会関係者によると、上村容疑者は偽の証明書を作成する直前の16年5月中旬、手続きの進捗(しんちょく)状況を尋ねにきた同会発起人、河野克史容疑者(68)=虚偽公文書作成・同行使容疑で逮捕=と庁舎内の喫茶室で面会した。
その際、「僕はキャリアではなくノンキャリアだから遠慮なく何でも言ってください」と話したほか、「上司の了解があり、決裁が早く済みそう」と局長らの関与を示唆する発言もしていたという。
郵便不正事件で大阪地裁、「捜査に疑問」と拘置短縮
2009.6.12 00:53
大阪地裁(植野聡裁判長)は11日、郵便制度悪用事件で大阪地検特捜部が再逮捕した障害者団体「白山会」会長守田義国容疑者(69)の拘置延長について、「捜査に疑問を感じる」といったん認めた期間の延長を取り消し、3日間短縮する決定をした。
弁護人が10日に「懇意の国会議員に依頼をした経緯ばかり連日調べられ、別件捜査だ」と延長取り消しを求め、準抗告していた。
植野裁判長は決定理由で「証拠隠滅や逃亡の恐れがある」と拘置の必要性は認めた。その上で「(議員との関係は)郵便法違反事件の処分を決める際に解明が必要な事情とは認められない」と指摘。さらに「捜査の在り方に疑問を感じる。拘置は無限定に許されるものではない」とした。
守田容疑者はこれまで、2件の郵便法違反罪で起訴され、5月29日には同法違反や私文書偽造・同行使容疑で3度目の逮捕をされた。
郵便不正 厚労省局長を一両日中に聴取へ 偽造を認識か
2009.6.14 00:03
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、障害者団体「凛(りん)の会」の証明書を偽造したとされる厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに、当時の上司で障害保健福祉部企画課長だった雇用均等・児童家庭局長(53)が証明書の偽造を認識していたことをうかがわせる供述をしていることが13日、分かった。
特捜部は、証明書発行の詳しい経緯を解明するため、厚労省側に局長の事情聴取を要請しており、一両日中にも聴取に踏み切るとみられる。さらに聴取内容を踏まえ、虚偽公文書作成容疑などでの立件の可否について検討する方針。
捜査関係者によると、上村容疑者は平成16年6月上旬、5月末の日付の証明書を偽造。逮捕当初は凛の会側に「自ら渡した」としていたが、その後、「局長に渡した」と供述を変えたことが分かっている。
これまでの特捜部の調べでは、凛の会への証明書発行について、当時の部長(退職)が民主党国会議員の依頼を受けたことから、部内で「政治案件」として扱われており、局長も凛の会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)=郵便法違反容疑で再逮捕=と面談したことがあったという。
また、倉沢容疑者は「証明書を局長から直接受け取った」と供述しているが、局長は産経新聞の取材に広報室を通じて「凛の会についても倉沢という人物についても心当たりはない」とコメントしている。
【郵便制度不正事件】厚労省局長を任意聴取
2009.6.14 10:31
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽公文書作成事件で、大阪地検特捜部は14日、厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)の当時の上司で同部企画課長だった雇用均等・児童家庭局長(53)から任意の事情聴取を始めた。
特捜部は、障害者団体「凛の会」の証明書を発行した経緯について詳しく事情を聴くとともに、上村容疑者が偽装したことへの認識の程度を確認。聴取内容を踏まえ、虚偽公文書作成容疑などでの立件の可否について上級庁と検討するもようだ。
これまでの特捜部の調べによると、凛の会への証明書発行について、民主党国会議員が当時の部長(退職)に電話をかけて依頼していたことが分かっている。このため、厚労省内では「政治案件」として扱われ、局長も凛の会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)=郵便法違反容疑で再逮捕=と面談したことがあったという。
また、倉沢容疑者は「証明書を局長から直接受け取った」と供述。上村容疑者も「証明書を局長に渡した」と話しているが、局長は産経新聞の取材に「凛の会についても倉沢という人物についても心当たりはない」とコメントしている。
【郵便制度不正事件】厚労省現役女性局長に逮捕状
2009.6.14 16:37
障害者団体向け郵便制度悪用事件で、障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会)向けの証明書の偽造、発行に関与したとして、大阪地検特捜部は14日、虚偽公文書作成・同行使の疑いで、当時の担当課長だった厚生労働省雇用均等・児童家庭局長村木厚子容疑者(53)=埼玉県和光市=の逮捕状を取った。同日中に逮捕する。
事件は、障害者福祉の根幹を担う厚労省の組織的な関与を問う局面に発展。凛の会の証明書は省内で「政治案件」として扱われていたとの供述もあり、特捜部は政界からの口利きも含め全容解明を進める。
捜査関係者によると、証明書は2004年5月28日付で課長公印が押され、障害者団体を名乗る凛の会に厚労省から発行されたことになっていた。だが省内には発行に関する資料は残っていなかった。証明書発行に向けての稟議(りんぎ)書を偽造したとして同容疑で逮捕された同省係長上村勉容疑者(39)は、調べに証明書の偽造も認めていた。当時、村木容疑者は傷害保険福祉部企画課長で、上村容疑者の直属の上司だった。
【郵便不正事件】省庁のキャリアシステムが背景か
2009.6.15 11:32
民主党国会議員の口利きがあり、厚労省内で「政治案件」として扱われた障害者団体「凛の会」の証明書発行。今回の事件では、この“腫れ物”のような案件をめぐり、法案の処理などで政治家の口利きを断れないキャリア官僚と、キャリアに追い込まれるノンキャリア職員という構図も浮かび上がる。
証明書発行に絡む省内の指示は、当時の厚労省障害保健福祉部長(57)から始まった。「国会議員から電話がかかってきた。うまくやってくれ」
平成16年2月、ほぼ丸投げされた同部企画課長だった村木厚子容疑者(53)は調整係長を担当者に指名。その後、4月に同係長に着任したノンキャリア職員の上村勉容疑者(39)が前任者から引き継ぎ、最終的に偽造という不正な手段をとった。
政治案件はそれほど絶対視されていたのか。ある職員は政治家の口利きの存在を認めたうえで、「3日かかる手続きを1日で済ませたり、進展具合をこまめに報告したりと気配りを徹底するだけ。違法行為に手を染めるかどうかは別問題」と否定的だ。
だが、別の職員は「政治案件は通常、対外的な交渉を担当する別の部署から伝えられる。しかし上司から直接指示があったとすれば、部下が『個人的に関係があるのでは』と勝手に思い込み、必要以上に気を使う可能性はある」と指摘する。
上村容疑者は特捜部の調べに、「凛の会側から何度もせっつかれた」と話す一方、「仕事ができない奴だと思われたくなかった。自己保身のためにやった」とも供述した。
同僚らが「仕事一筋でまじめな性格だった」と口をそろえる上村容疑者。なぜそこまでして仕事を済ませたのか。その背景に中央省庁のキャリアシステムを挙げる職員もいる。厚労省の課長ポストはほとんどキャリアで占められ、職員の人事評価は各課長の仕事。同僚らは「案件処理のスピードは評価の大きな要素になっていた。キャリアににらまれたくない一心だったと思う」と話す。
一方、キャリアの村木容疑者はまったく違う立場にいた。当時、障害者自立支援法の準備に追われ、国会議員とも調整を重ねていた。ある職員は「法案は障害者団体から負担増になると反対の声が上がっていた。野党の議員の口利きに過剰に反応し、部下の不正を軽く流してしまったのでは」と推し量った。
【郵便不正事件】「直接面会して催促」と倉沢容疑者 村木容疑者は「知らない」
2009.6.16 01:30
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、「凛(りん)の会」主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)と厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに対し、それぞれ障害者団体証明書の偽造直前、雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)との直接のやりとりを詳述していることが15日、関係者の話で分かった。全面否認している村木容疑者の“外堀”はすでに埋められた格好だ。
倉沢容疑者の供述によると、平成16年6月上旬、証明書の発行を急いでもらうために厚労省を訪問。当時、障害保健福祉部企画課長だった村木容疑者と面会し、「早く証明書を出してほしい」と直接催促した。これに対し、村木容疑者は「分かりました」と答えたという。
一方、同課調整係長として証明書の発行を担当していた上村容疑者の供述では、この直後に村木容疑者に呼ばれ、「証明書はどうなっていますか。出せるなら早く出してあげて」と発行を急ぐよう指示されたという。この指示を受けて上村容疑者は証明書の偽造に踏み切ったとみられる。
倉沢容疑者はこのほかにも、村木容疑者との直接のやりとりを具体的に供述している。
5月上旬から中旬の間にも厚労省を訪問し、村木容疑者に証明書の発行を要請するとともに、郵便事業会社(旧日本郵政公社)から低料第三種郵便物制度の適用を拒否されていることを説明。すると、村木容疑者は旧日本郵政公社東京支社長に電話をかけ、「証明書はまもなく出すので、凛の会に制度の適用を認めてほしい」と依頼したという。
また6月上旬の偽造証明書の受け渡しについて、上村容疑者は「村木容疑者に渡した」、倉沢容疑者も「村木局長から直接受け取った」と供述するなど、2人の供述は矛盾しない点が多い。
これに対し、村木容疑者は逮捕前の産経新聞の取材や逮捕後の調べに、「凛の会のことも証明書のことも知らない。倉沢容疑者に会ったこともない」と全面的に否認している。
このため特捜部は、関係者の事情聴取などで2人の供述を裏付け、村木容疑者の容疑を固める方針。
【郵便不正事件】「正式決裁いらない」と局長指示 証明書偽造認識か
2009.6.16 02:00
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、厚生労働省障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに、「凛(りん)の会」(解散)の障害者団体証明書について、雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)から「『正式な決裁はいらないから』と言われ発行をせかされた」と供述していることが15日、分かった。
同会の証明書発行をめぐっては、民主党国会議員から当時の障害保健福祉部長(退職)に直接依頼されていたことがすでに判明している。
特捜部は、「政治案件」であることを重くみた村木容疑者が、正式な手続きではないことを認識しながら上村容疑者に証明書を作成させたとみている。
捜査関係者らによると、上村容疑者は平成16年4月、同部企画課調整係長に着任し、前任者から証明書の発行を議員案件として引き継ぎ。まもなく、当時の企画課長だった村木容疑者に「凛の会は活動実体がなく、証明書を発行できる可能性が低い」という趣旨の説明をした。
その前後も、凛の会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)らが厚労省を度々訪れ、上村容疑者や村木容疑者に証明書の発行を要請。上村容疑者は6月上旬、村木容疑者に「正式な決裁はいらないから」と証明書の発行をせかされたため、総務係長が管理している企画課長の公印を押し、証明書を偽造。村木容疑者に渡したとみられる。
【郵便不正事件】後任の雇用均等・児童家庭局長に北村彰氏
2009.6.16 10:33
厚生労働省は16日、郵便制度の悪用事件にからみ、虚偽有印公文書作成・同行使容疑で逮捕された厚労省雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)を大臣官房付に、後任の局長に北村彰大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭担当)を充てる人事異動を発令した。
舛添要一厚労相は「少子化対策は課題が山積し、一刻の遅滞もゆるされないことから緊急決定した」と説明した。
北村局長は大阪大学経済学部を卒業後、昭和54年に厚生省に入省。社会・援護局地域福祉課長や医薬食品局総務課長などを歴任した。
【郵便不正事件】「もう忘れて」厚労省局長が係長にくぎ
2009.6.16 13:25
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、厚生労働省障害保健福祉部企画課長だった元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)の当時の部下で同部係長、上村勉容疑者(39)が大阪地検特捜部の調べに、「凛(りん)の会」の障害者団体証明書について、「村木局長から『この件はもう忘れて』と言われた」と供述していることが16日、分かった。
偽造後、上村容疑者が発行手続きに必要な申請書類を後でそろえようとしたところ、「村木局長から止められた」と供述していることも判明。特捜部は、村木容疑者が証明書発行の違法性を認識しながら、不正を黙認したとみている。
関係者の供述によると、凛の会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)が平成16年2月、証明書の発行を求めて厚労省を訪問した際、村木容疑者は「会員に障害者が少ない」と指摘しており、同会の活動実態に疑問を抱いていたとみられる。
しかし、6月上旬に倉沢容疑者から直接催促を受けると、部下の上村容疑者に「活動実態はない団体かもしれないが出してあげて」と証明書の発行を指示していた。さらにその後、「もう忘れて」と上村容疑者にくぎを刺したという。
証明書発行は、当時の部長(退職)が国会議員から電話で依頼された「政治案件」だったため、村木容疑者は過敏に反応し、審査や正規の手続きをしないことを黙認したとみられる。
【郵便不正事件】国会議員が事務所から厚労省に電話 凛の会メンバーの目前で
2009.6.16 14:34
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、「凛(りん)の会」の障害者団体証明書の発行について、同会主要メンバーの倉沢邦夫容疑者(73)が大阪地検特捜部の調べに対し、「民主党国会議員の事務所から目の前で厚生労働省の幹部に電話をかけてもらった」と供述していることが16日、関係者への取材で分かった。倉沢容疑者はこの議員の元秘書で、議員の“威光”を利用して証明書を得ようとしたとみられる。
特捜部は16日、任意の聴取でこの議員から電話を受け、当時、障害保健福祉部企画課長だった雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)=同日、大臣官房付に異動=に対応を指示したと証言している元同部長(退職)の東京都江戸川区の自宅を捜索した。一連の容疑を裏付けるのが目的とみられる。
産経新聞の取材にこの議員の事務所は「そのような事実はなく、倉沢容疑者が陳情のために事務所に来たこともない」と全面的に否定している。
関係者によると、倉沢容疑者らは平成15年10月に凛の会を立ち上げ、16年2月に厚労省から障害者団体証明書を得るため、この国会議員に厚労省への口利きを依頼したという。
当日は、倉沢容疑者と元メンバーの2人が議員会館の事務所を訪問。議員と向かい合ってソファに座り、「凛の会という障害者団体を立ち上げたので厚労省の認可がほしい」と持ちかけた。議員は面識があった元部長にその場で電話し、「凛の会という団体が証明書の申請に行くのでよろしく頼む。担当者の名前を教えてくれ」と依頼したという。
その後、倉沢容疑者は議員を通じて村木容疑者が担当と知り、厚労省を訪問。その後も複数回にわたって面会し、証明書の発行を催促していたとみられる。
【郵便不正】凛の会、証明書発行前にDM契約 発送期限迫り催促
2009.6.17 14:28
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、障害者団体「凛の会」が厚生労働省から証明書の発行を受ける前に、割引制度を利用してダイレクトメール(DM)を格安で発送する契約を広告主と結び、代金を受け取っていたことが17日、関係者の話で分かった。また、同会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)が大阪地検特捜部の調べに「証明書が出なければ、郵便料金の差額分を負担しないといけないので焦っていた」との趣旨の供述をしているという。
特捜部は、凛の会側がDMの発送期限が迫ったため、厚労省障害保健福祉部企画課長だった元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)や同部係長、上村勉容疑者(39)に発行の催促を繰り返したとみている。
関係者によると、凛の会は平成16年初め、割引制度の適用を見越し、さいたま市の柔道整復師の養成を目的とした専門学校と、生徒募集広告のDMの発送契約を締結。4月に同会発起人、河野克史容疑者(68)名義の口座に専門学校から代金20万円が振り込まれた。
一方、倉沢容疑者は2月、民主党の国会議員に“口利き”を依頼した上で、厚労省に証明書の発行を要請。しかし、なかなか発行されず、6月の発送期限が迫ったため、倉沢容疑者は4月以降、村木容疑者らに証明書の早期発行を繰り返し催促したという。
また、発送期限までに制度適用の承認を得ないと、正規の郵便料金との差額数十万を負担しなければならなかったため、倉沢容疑者らが郵便事業会社(旧日本郵政公社)側とも度々交渉。上村容疑者が偽造した厚労省の稟議書を持ち込むなどしたが、承認されなかった。結局、6月10日ごろに東京の日本橋郵便局(当時)に証明書を提出。専門学校の広告を掲載したDM数千通を定期刊行物「凛」と同封して発送したという。
広告主の専門学校は産経新聞の取材に対し、「当時の担当者がいないのでよく分からない。経緯を説明するつもりもない」としている。
【郵便不正】証明書発行「然るべくやりました」厚労省元部長が民主党議員に報告
2009.6.18 01:22
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、厚生労働省障害保健福祉部の元部長(57)=退職=が大阪地検特捜部の調べに、元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)から「凛(りん)の会」の障害者団体証明書の発行の報告を受けた後、「民主党国会議員に『然るべくやりました』と伝えた」と供述していることが17日、関係者への取材で分かった。
特捜部は「証明書のことは知らない」と全面否認している村木容疑者の関与を裏付ける供述とみている。また、元部長が国会議員にアピールするため電話で報告した可能性が高いと判断。今後、元部長が証明書が偽造されたことを認識していなかったか慎重に捜査を進める。
関係者によると、元部長は平成16年6月上旬、当時、障害保健福祉部企画課長だった村木容疑者から「証明書を発行しました」と報告を受け、その後すぐに民主党国会議員に電話をかけたという。
同会の証明書発行をめぐっては、凛の会主要メンバー、倉沢邦夫容疑者(73)が16年2月、民主党国会議員の事務所で厚労省への口利きを依頼。議員はその場で元部長に電話をかけ、元部長はその後、村木容疑者に「うまくやってくれ」と対応を指示したことがすでに判明している。
村木容疑者は16年6月上旬、倉沢容疑者から直接、「早く証明書を出してほしい」と催促を受けると、「活動実態のない団体かもしれないが早く出してあげて」と同部係長の上村勉容疑者(39)に改めて指示したとされる。
◇
郵便法違反などの罪で起訴された障害者団体「白山会」会長、守田義國被告(69)と広告代理店「新生企業」(現・伸正)社長、宇田敏代被告(53)が17日、保釈された。弁護人らによると、保釈保証金は守田被告が730万円、宇田被告が2000万円。
【郵便不正事件】厚労省捜索で職員の机から現金400万円 アルバイト報酬?
2009.6.19 11:02
郵便制度悪用に絡む公文書偽造事件で、大阪地検特捜部に家宅捜索された厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課の職員の机から現金約400万円が見つかっていたことが19日、分かった。
捜索は前局長、村木厚子容疑者(53)らの逮捕翌日の15日に実施された。厚労省は、有志の職員約10人で作る研究会のメンバーが業務時間外に民間の出版物を校閲した報酬だったと説明。「法的問題はないが、多額の現金を職場で保管していたのは不適切」として職員を口頭注意した。
同局総務課によると、出版社から研究会の代表を務める職員名義の口座に振り込まれ、メンバーの職員らの私的な飲食費などに充てていた。現在代表の職員は、前任者から口座を引き継げないため現金で約400万円を渡されたが、「多忙で自分名義の口座に入金するのを忘れていた」と説明したという。
【郵便不正】村木容疑者、接見でも「偽造ありえない」
2009.6.20 13:17
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、大阪地検特捜部に逮捕された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)の弁護人が20日、産経新聞の取材に応じ、村木容疑者が「証明書をめぐり不正をしたことは一切ない」と話していることを明らかにした。
弁護人によると、村木容疑者はこの日の接見で「日常業務から考えて証明書を偽造するなんてありえない」などと主張。民主党国会議員の“口利き”があったとされる点も「特別記憶に残ってはいないし、政治家とやりとりする理由もない」と否定しているという。
また、障害者団体「凛の会」主要メンバーの倉沢邦夫容疑者(73)らと面会したかどうかについて、弁護人は「少なくとも記憶に残る会い方はしていないということだ」と話した。
郵便不正 別の2団体には厳格審査 「凛の会」前後に元局長が証明書決裁
2009.6.21 01:39
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、厚生労働省が、障害者団体「凛の会」に偽の証明書を発行した前後の平成15年11月と17年9月、別の2団体について、厳格に審査した上で証明書を発行していたことが20日、厚労省関係者の話で分かった。いずれも当時、厚労省障害保健福祉部企画課長だった元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)が審査書類を確認した上で決裁していたという。
村木容疑者は16年6月、凛の会の証明書について、同部係長、上村勉容疑者(39)に「活動実態はないかもしれないが出してあげて」と指示したことが判明している。大阪地検特捜部は、正規の手続きを理解している村木容疑者が、凛の会に偽の証明書の発行を認めていたことを示す“状況証拠”とみている。
関係者によると、村木容疑者が企画課長に着任した15年8月、臓器移植患者を支援する「東京女子医大移植者の会」が証明書を申請し、全国約220人の会員名簿や定期刊行物、会規約などを提出。しかし、担当係長から「部数が制度利用に必要な500部より少ない」「刊行物に定価が書かれていない」などの不備を指摘されたという。
書類審査を経た上で、村木容疑者の決裁で発行が認められたのは同年11月だった。同会の小柳啓一副会長(47)は「何度かやりとりをしたが、対応はすべて係長で、課長や部長には一度も会ったことがない」と話す。
また、村木容疑者が異動する直前の17年9月、寝たきり患者の家族を支援する「全国遷延性意識障害者家族の会」に証明書が発行されていた。同会の申請は同年6月ごろといい、桑山雄次代表(53)は「担当の係長から会の活動内容や名簿について細かく質問された。名簿に載っている人物が実在しているかどうか、本当に障害者なのかという点まで確認した末に、ようやく発行してもらった」と証言している。
この2団体のケースではいずれも、上村容疑者とは別の係長が対応し、村木容疑者らの決裁印が押された審査書類や証明書の控えなどが課内で保管されていたという。
これに対し、凛の会は、主要メンバーの倉沢邦夫容疑者(73)が16年2月に厚労省を訪問した際、村木容疑者から「会員に障害者が少ない」と指摘されたにもかかわらず、その後、審査書類も提出しないまま証明書が発行された。証明書の控えなども保管されていなかったという。
【郵便不正】東京都でも証明書偽造か 「凛の会」関係団体がDM (1/2ページ)
2009.6.22 01:49
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件にからみ、「凛の会」の元メンバーが設立にかかわった別の障害者団体が、活動実態がないにもかかわらず、東京都から証明書の発行を受け、不正ダイレクトメール(DM)を発送していたことが21日、関係者の話で分かった。郵便事業会社は不正に免れたと判断した数億円の返還を団体側に求めているという。都側には証明書を発行した記録が残っておらず、都は偽造の恐れもあるとして調査に乗り出した。
この団体は自称・障害者団体「コラボレーション」(東京都中央区)。凛の会が「白山会」に引き継がれた平成18年春に設立された。代表理事は、凛の会の不正DMの企業広告を取り扱っていた広告会社社長が務め、同会元メンバーが理事に名を連ねるなど、凛の会とつながりが深い。
関係者によると、同会主要メンバーの倉沢邦夫容疑者(73)の知り合いだった守田義國被告(69)=郵便法違反罪などで起訴=が17年ごろから、「常務理事」を名乗って同会の運営に介入し、内部対立に発展。守田被告らはその後、メンバーの大半を追い出した上で、18年4月に「白山会」に名称を変え利益を独占するようになったという。
このころ、凛の会と取引のあった社長が元メンバーに声をかけ、コラボを設立。東京都福祉保健局に障害者団体証明書を申請し、18年8月ごろに発行を受けたとされる。コラボは同月から昨年秋まで定期刊行物を毎月3回発行。低料第三種郵便物制度を利用して、1回につき数千~数万通のDMを不正に安く発送していたという。
理事だった元メンバーは産経新聞の取材に、「凛の会で割引制度の“うま味”を知り、制度を使い続けるために障害者団体をでっち上げた」。
社長は「障害者がはつらつと暮らしていけるような社会にしたいという思いから団体を設立した。知覚障害者を招いたコンサートの開催を手伝うなど、活動実態はあった」と主張している。
一方、東京都障害者施策推進部は「団体名簿の提出を求めるなど厳しい承認審査を徹底しており、あやしげな団体に証明書を発行するようなことはない」としているが、保存されている18年以降の発行記録にコラボは含まれておらず、他の部署に残っていないか調べるとともに、当時の担当者から事情を聴く方針。
障害者団体証明書は、障害者団体の活動拠点や規模に合わせて、厚労省のほか都道府県や市町村、行政区でも発行している。
【郵便不正】大阪府も不適切証明 審査書類保管なし
2009.6.24 14:13
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件にからみ、大阪府が発行した障害者団体証明書の審査書類が保管されていないことが24日、分かった。この障害者団体には活動実態があるものの審査書類が残されていないことから、府は不適切な審査手続きが行われた可能性もあるとみて調査を始めた。
府によると、団体は社会福祉法人藍野福祉会が運営する身体障害者通所授産施設「出藍荘」(大阪府茨木市)。一連の郵便不正で摘発された新生企業がこの団体の名義を使い違法ダイレクトメールを送っていたとみられる。
証明書の発行は平成18年4月20日付。公印を押した場合に記される文書番号がなかった。また、証明書の多くの決裁は部長が行っているが、このケースではその下の室長が決裁していたという。
【郵便不正】新たに1人在宅起訴、2人略式起訴
2009.6.27 01:06
障害者団体向け割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、家具販売会社など4社のダイレクトメール(DM)を発送し、郵便料金を不正に免れたとして、大阪地検特捜部は26日、広告代理店「ペン」(京都市)の金慶光社長(53)を大阪簡裁に在宅起訴。紳士服販売店「フタタ」の内田吉彦・営業企画部長(54)と紙製品販売業「伊藤忠紙パルプ」(東京)の榎隆治・九州支店長(54)を略式起訴した。
大阪簡裁は同日、それぞれ罰金100万円の略式命令を出し、2人は即日納付した。特捜部は、2人に違法性の認識がなく、DM通数も少なかったことから、悪質性が低いと判断、公判請求を見送った。
また、健康食品販売会社「キューサイ」などのDMを発送したとして印刷・通販大手「ウイルコ」会長、若林和芳被告(57)や広告代理店「新生企業」(大阪市)社長、宇田敏代被告(53)ら3人を追起訴し、一連の郵便法違反事件の捜査を終結した。
特捜部の調べでは、事件に関与した広告主は計11社。障害者団体計6団体の定期刊行物を装って発送された違法DMは計約3180万通に上り、不正に免れた正規料金との差額は約37億5000万円だった。
【郵便不正】「俺はフィクサー」元厚労省部長が政治家の窓口に
2009.7.3 00:28
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、民主党国会議員から障害者団体証明書発行の依頼を受けたとされる厚生労働省障害保健福祉部の元部長(57)が、複数の国会議員から陳情を度々受けていたことが2日、関係者への取材で分かった。
元部長が「政治案件」の窓口役だったことは職員の間で広く知られていたという。事件では、元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)が“政治力”を持つ上司の指示に応えようと偽造に至ったという構図が浮かび上がっている。
「おれはフィクサーだから」
関係者によると、元部長は周囲にこう吹聴し、週の半分は議員会館に出入りしていた。部下の職員らには「政治案件はきちんと処理しないといけない」「議員には貸しを作っておかないと」とよく口にしていたという。
元部長は、平成18年、局長級の政策統括官を最後に退職したが、執務室には故郷・香川県の巨大な地図が掛けられ、「『退官したら知事選に出てほしい』と地元からよく頼まれるんだよ」とうれしそうに話していた。
関係者は「まるで政治家の総合受付窓口のようだった。元部長が抱いていた政界進出への野心を議員に利用されたのではないか」とみる。
一方、厚労省関係者によると、当時、元部長の部下の課長職にいた村木容疑者は目的実現のために粘り強く仕事を進めていくタイプ。法案を通すために裏工作をするような策略家ではないが、上司に対しては「イエスマン」だったという。
証明書の偽造にかかわったとされる当時は、介護保険法改正案などの法案づくりの準備中だったが、関係者は「法案を通すためというより元部長の指示に忠実に従い、さらに部下の係長に指示しただけではないか」という。この関係者は、「元部長がいたからこそ起きた事件だろう」と指摘している。
◇
大阪地検特捜部は、凛(りん)の会が障害者団体として実体がないにもかかわらず、証明書を発行したなどとして、勾留(こうりゅう)期限の4日にも、虚偽有印公文書作成・同行使罪で村木容疑者と障害保健福祉部係長、上村勉容疑者(39)の2人を起訴、同会主要メンバー、倉沢邦夫(73)と同会発起人、河野克史(68)の両容疑者を追起訴する方針。捜査関係者によると、村木容疑者は「凛の会も証明書も知らない」と全面否認を続けているが、ほかの3人はいずれも容疑を認めているという。
【郵便不正】厚労省前局長を起訴
2009.7.4 17:47
郵便制度悪用に絡む厚生労働省の公文書偽造事件で、大阪地検特捜部は4日、障害者団体の偽の証明書発行に関与したとして虚偽有印公文書作成・同行使の罪で、厚労省の前雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)=大臣官房付=ら4人を起訴した。
ほかに起訴したのは、同省の元係長、上村勉(39)=1日付で主査、「凛(りん)の会」(現・白山会)設立者倉沢邦夫(73)、同会元会員河野克史(68)の3容疑者。捜査関係者によると、村木被告は「記憶にない」と否認。ほかの3人は認めている。
起訴状によると、村木被告は同省障害保健福祉部企画課長だった平成16年6月上旬、実体のない凛の会を障害者団体と認める証明書を部下だった上村被告に偽造させ、河野被告らが同月10日ごろ、旧日本郵政公社に提出した、としている。
【郵便不正】厚労省元係長を保釈
2009.7.6 11:31
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、障害者団体証明書を偽造したなどとして虚偽有印公文書作成罪で起訴された厚生労働省障害保健福祉部元係長、上村勉被告(39)について、大阪地裁が保釈決定した。
決定は4日付。上村被告は保釈保証金250万円を納付し、大阪拘置所から保釈された。
【郵便不正】「元局長は無実」 堂本前知事、住田弁護士らが訴え
2009.7.9 18:42
障害者団体向け割引郵便制度悪用事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長の村木厚子被告(53)をめぐり、堂本暁子前千葉県知事や住田裕子弁護士らが9日、厚労省を訪れ、「無実の村木厚子さんの解放を求めます」などとする声明を発表した。
堂本前知事、住田弁護士はともに村木被告と10年以上前から、男女共同参画事業などを通じて親交があったという。
堂本前知事は、「村木さんは逮捕直前に『身に覚えのないことを言われて困っている』と話していた。あんなに温かい人が犯罪に手を染めるはずがない」と訴えた。住田弁護士は、村木被告と接見したことを明らかにし、「詳細は話せないが、事件には別の筋書きがあると思う。真実は法廷で明らかになる」と話した。
【衝撃事件の核心】郵便不正事件村木元局長は拘置所で何を考える?広がる支援 揺るぎない自信の検察
2009.7.18 08:00
4カ月以上にも及ぶ捜査が続いた郵便不正事件は、7月4日に厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)らの起訴でいったん終結した。厚労省係長らが次々と保釈されるなか、否認を続ける村木被告だけが保釈請求を裁判所に却下され、いまなお大阪拘置所で暮らしている。その村木被告に対する支援の広がりは予想外に大きく、全国の障害者団体を中心に著名人も名を連ねる。13日に接見禁止が解かれて以降、次々と接見に訪れる支援者に、村木被告は第2ラウンドともいえる公判への意欲を語るなど気丈さを見せているという。しかし、大阪地検特捜部はまったく動じる気配はない。厚労省の局長にまで昇りつめた女性キャリアは、塀に囲まれた部屋の中で何を思うのだろうか。
支援者にメッセージ「たくさん勇気もらった」
「やっと20日間(勾留期間)が終わりました。起訴という結果になりましたが、裁判になって初めて検察側と弁護側、双方が対して公平な闘いになると聞いていたので、がっかりはしていません」
村木被告が今月14日、家族を通じて支援者らに発信したメッセージだ。その文面からは村木被告の気丈な様子が十分うかがえる。
そのなかでは勾留中に40通以上の励ましの手紙が届いたことにも触れ、「返事はすぐに出せないと思いますが、たくさん、たくさん元気をもらい勇気をもらったので、心から感謝しています」と女性らしい心配りをみせている。
接見をめぐってはハプニングもあった。関係者によると、接見禁止が解かれた13日、家族が東京から大阪拘置所を訪れたが、先に村木被告の知人が接見してしまったため、接見できなかったという。弁護人以外の接見は1日1組に限定されているためで、家族は急きょ大阪に1泊し、翌14日に無事に会えたという。
その後は次々と友人や支援者が接見に訪れており、すでに数週間先まで接見の予定が組まれるほどの人気ぶり。接見を済ませた知人女性には「規則正しい生活で逆に健康になったみたい」と冗談を言うほど元気だった。
また、ロス疑惑で無罪を勝ち取ったことで知られる弘中惇一郎弁護士を弁護人に選任。公判に向け、知人に差し入れてもらった六法全書で法律の勉強をしているという。
「李下に冠を正さず」
近年の事件では珍しく、村木被告には逮捕直後から、友人や障害者団体関係者らが支援活動を始めた。
起訴後の9日には、堂本暁子・前千葉県知事や日本テレビ系「行列のできる法律相談所」の出演者で知られる住田裕子弁護士ら8人が早期保釈と事件の解明を求める声明を発表。会見で堂本前知事は「真摯な態度で官僚として血の通った仕事を貫いてきた人。不正などするわけがない」と力を込めた。
また、障害者団体関係者ら400人以上が集まり、「支援する会」を設立。発起人の社会福祉法人「南高愛隣会」(長崎県)理事長の田島良昭さん(64)は「官僚の中で不正から最も遠いところにいたのが村木さんだ。330円のコーヒー代の支払いも割り勘にするぐらい絶えず自分を律していた」と強調する。
関係者によると、村木被告が金銭面での“潔癖”を徹底するようになったのは、平成元年にリクルート事件で逮捕された旧労働省時代の先輩だった加藤孝元労働事務次官の一言がきっかけだった。
「僕はうかつだった。失敗したよ。君は『李下に冠を正さず』(他人に疑われるような行為を避けること)という言葉を忘れずに仕事に励め」。省内で最も尊敬していた先輩官僚の突然の“暗転”を目の当たりにした村木被告。それ以降、飲食を共にした関係者に割り勘への理解を求めるようになったという。
検察は「有罪」へ揺るぎない自信
「確かに人柄のよさは思い知らされた」。検察幹部は、村木被告への支援の広がりに感心を示す一方で、「それと無罪かはまったく別だ」と立証に関しては揺るぎない自信をのぞかせる。
「凛の会主要メンバーの倉沢邦夫被告(73)は平成16年2月、低料第三種郵便物の適用に必要な証明書を得るため、以前に秘書をしていた民主党の国会議員に“口利き”を依頼。元同省障害保健福祉部長(57)=退職=から対応を指示された当時の企画課長、村木被告が、係長の上村勉被告被告(39)に「『実体のない団体かもしれないが早く出してあげて』などと指示し、同年6月に偽の証明書を発行した」
これが、検察側が描き出した事件の構図だが、関係者や共犯者の供述にブレがないことが、検察側の自信の根拠になっている。
起訴後の会見では、証明書は低料第三種郵便物の認可を受けるために必要不可欠で、社会的に極めて信用性が高いものだった▽必要な一切の審査書類がないまま発行された▽障害者団体として活動実体がない団体と知りながら証明書を与えた-などと指摘し、今回の事件の悪質性を強調した。
村木被告は逮捕2日前の金曜日の夜、ごく親しい知人女性4人と一緒に酒を飲んだ。村木被告の事件への関与を示す報道が激化する中での会食だったため、当初は重苦しい雰囲気だったが、村木被告は「いろいろ言われているけど、私はまったく身に覚えがないのよ。だからみんな安心して」と明るく振る舞い、自身のことよりも自らが中心になって国会に法案を提出した改正育児・介護休業法のことを心配していたという。“冤罪”であることを確信していたのか、それとも“犯罪”を隠し通す自信があったのか…。
検察関係者はいう。「事情聴取で凛の会メンバーと接触があったことを認めた上で、理路整然と偽造の意思がなかったことを説明されるとやっかいだった。むしろ『まったく記憶にない』と主張したので逮捕に踏み切れた。それだけ証拠はそろっているということだ」。
【郵便不正】厚生労働省元局長の上司が理事辞任
2009.7.22 11:32
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる虚偽有印公文書作成事件で、大阪地検特捜部に起訴された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)の上司だった元障害保健福祉部長(57)が、勤務先の独立行政法人「福祉医療機構」(東京)理事を辞任していたことが22日、わかった。機構によると辞任は18日付で、理由は「一身上の都合」という。元部長は国会議員から障害者団体証明書の発行を依頼され、村木被告に対応を指示したとされる。
【郵便不正】障害者団体会長に懲役1年を求刑
2009.9.24 20:34
障害者団体向け割引郵便制度を悪用し、郵便料金約19億8千万円の支払いを免れたとして、郵便法違反などの罪に問われた障害者団体「白山会」会長、守田義國被告(70)の論告求刑公判が24日、大阪地裁(横田信之裁判長)であった。検察側は「制度の承認取り消しを免れるため種々の工作をしており、厳罰で対処する必要がある」として、懲役1年、罰金3240万円を求刑した。
一方、弁護側は、国会議員への贈賄など実際になかったことを疑われ、厳しい取り調べを受けたとして、情状に考慮すべきだと主張。守田被告は被告人質問で「誠に申し訳ありません」と涙ながらに謝罪した。
【郵便不正】厚労省元局長の保釈、決定
2009.10.13 13:05
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる障害者団体証明書偽造事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)について、大阪地裁は13日、保釈を決定した。保釈保証金は1500万円で、納付し次第、約4カ月ぶりに保釈される。
村木被告は7月に起訴され、公判前整理手続き中。逮捕当初から一貫して否認しており、公判でも全面的に争う方針。保釈請求を地裁が却下したため、支援者らが早期に保釈するよう求めていた。
【郵便不正】厚労省元局長の保釈決定 大阪地検は準抗告
2009.10.13 13:36
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる障害者団体証明書偽造事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)について、大阪地裁は13日、保釈を決定した。保釈保証金は1500万円。保釈決定に対し、大阪地検は同日、準抗告した。
村木被告は7月に起訴され、公判前整理手続き中。逮捕当初から一貫して否認しており、公判でも全面的に争う方針。村木被告は起訴直後にも保釈請求したが、地裁が却下していた。
【郵便不正】障害者団体「白山会」会長に有罪判決
2009.10.14 12:01
障害者団体向け割引郵便制度を悪用し、郵便料金約19億8千万円の支払いを免れたとして、郵便法違反などの罪に問われた障害者団体「白山会」会長、守田義國被告(70)の判決公判が14日、大阪地裁で開かれた。横田信之裁判長は「福祉向上の制度趣旨を悪用した犯行で結果は重大」として、懲役1年、執行猶予3年、罰金3240万円(求刑懲役1年、罰金3240万円)を言い渡した。
横田裁判長は判決理由で「対価を得る目的で動機に酌むべき点はなく、4千万円以上の利益を上げていた」と指摘した一方、「郵便局側のチェック体制にも問題がみられ、本人は反省している」と述べた。
判決によると、守田被告は平成18~20年、団体の刊行物に大手家電量販店「ベスト電器」(福岡市)などのパンフレットを同封したダイレクトメールを発送するなどした。
【郵便不正】厚労省元局長の保釈認めず 検察の準抗告受け大阪地裁
2009.10.15 15:40
郵便制度悪用に絡む厚生労働省の公文書偽造事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された同省の元局長、村木厚子被告(53)=官房付=について、大阪地裁は15日、保釈を認めない決定をした。
地裁は13日、いったん保釈を決定したが、大阪地検が同日、決定を不服として準抗告を申し立て、これを認めた。
村木被告は7月に起訴され、公判前整理手続き中。弁護人によると、一貫して起訴状の内容を否認しており、公判でも無罪を主張する方針。
起訴状によると、村木被告は障害保健福祉部企画課長だった平成16年6月、実体のない「凛(りん)の会」を障害者団体と認める課長の公印入り証明書を、部下だった同省元係長(40)=同罪で起訴=に偽造させ、凛の会会員らが旧日本郵政公社に提出したとしている。
【郵便不正】倉沢被告、偽証明書発行など起訴内容の大半を否認
2009.11.5 19:17
障害者団体向け割引郵便制度が悪用された事件で、厚生労働省に偽の障害者団体証明書を発行させたとして虚偽有印公文書作成などの罪に問われた障害者団体「凛(りん)の会」(解散)主要メンバー、倉沢邦夫被告(74)の第2回公判が5日、大阪地裁(横田信之裁判長)で開かれた。
倉沢被告は罪状認否で「証明書の作成過程を知らず、内容虚偽の違法な公文書とは考えていなかった」と起訴内容の大半を否認。弁護側は無罪を主張した。
検察側は冒頭陳述で「被告はかつて秘書を務めていた国会議員を訪ね、発行の口添えを依頼した」と指摘。厚労省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)=起訴=が元係長、上村勉被告(40)=同=に議員案件として証明書を作成させる際、「決済なんかいいから早急に作ってください。心配しなくていいから」と命じ、作成後に「大変だったでしょう。あとは私に任せて」と話した-とする上村被告の供述調書も朗読した。
9月の初公判で倉沢被告は、郵便料金約3億7700万円の支払いを不正に免れたとされる郵便法違反罪の起訴内容は認めていた。
【郵便不正】元厚労省局長の保釈を許可 公文書偽造で大阪地裁
2009.11.24 18:4
郵便制度悪用に絡む厚生労働省の公文書偽造事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された同省の元局長、村木厚子被告(53)=官房付=について、大阪地裁は24日までに保釈を許可した。検察側は準抗告したが、棄却され、村木被告は保釈保証金1500万円を納付し次第、約半年ぶりに保釈される。
村木被告は7月に起訴され、公判前整理手続き中。弁護人によると、捜査段階から一貫して起訴状の内容を否認しており、公判でも無罪を主張する方針。
大阪地検特捜部は6月、村木被告を逮捕。弁護側は起訴直後にも保釈請求したが却下された。弁護側は公判前整理手続きが始まったことを受け、10月に再度、保釈請求。この際も大阪地裁がいったん保釈を許可したが、検察側の準抗告が認められ、保釈されなかった。
【郵便不正】厚労省の元局長を保釈 5カ月ぶり、否認のまま
2009.11.24 19:44
郵便制度悪用に絡む厚生労働省の公文書偽造事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された同省の元局長、村木厚子被告(53)=官房付=が24日、保釈保証金1500万円を納付し、逮捕から約5カ月ぶりに保釈された。
厚労省元局長の村木厚子被告が会見「記録も記憶にもない」 郵便不正
2009.11.25 22:10
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる障害者団体証明書偽造事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴され、保釈された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)=官房付=が25日、大阪市内で記者会見し「偽の文書を作成するよう依頼されたことも、引き受けたことも、部下に命じて作らせたことも一切ない」と改めて無罪を主張した。
約5カ月ぶりに保釈された村木被告は、夫や弁護人とともに会見に出席。国会議員や上司からの依頼、部下への指示があったとされる点は「手帳などの記録で確認したが、記録にも記憶にもまったく残っていない」と強く否定した。
一方、一般的に国会議員からの依頼を“議員案件”と処理しているかについては「ないといえばうそになるが、議員案件だからルールを無視するのは幻想」と主張。自身の公印が押された証明書が発行された点は「ハンコは私自身が押すわけではない。誰の手でどうやってとは、想像では申し上げられない」と話した。
現在は公判前整理手続き中で、初公判は来年1月に開かれる見通し。村木被告は、公判に向け「自分の主張をしっかり貫きたい」と強調した。
【郵便不正、厚労省元局長の村木被告会見】詳報(1)「まったく身に覚えない」
2009.11.25 22:15
障害者団体向け割引郵便制度の悪用をめぐる障害者団体証明書偽造事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴され、24日夜に5カ月ぶりに保釈された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)=官房付=が25日午後4時半から、大阪市内で記者会見を開いた。弁護人の弘中惇一郎弁護士と厚労省総括審議官の夫も同席し、約1時間にわたって質疑に応じた。会見のやりとりは次の通り。
◇
弁護人 主任弁護士の弘中です。こちらが被告の村木と主人。昨日保釈になって、半年ぶりですが、いろいろと皆さんから直接話を聞きたいとのことだったのでこういう場を設けてもらった。当初は東京の方で落ち着いてからと考えていたが、大阪の裁判所で進行し、大阪の人が関心を持って取材報道しているということもあって、東京に帰ってからよりは多少疲れているが、今日の方がふさわしいということで。この後質問に応えるが、裁判中ということもあるので、場合によっては勘弁してくれとお願いすることもあるが了承願いたい。時間の制限はないが、1時間以内であれば。
--幹事社から2、3問。今回、虚偽公文書作成で逮捕されたことについての村木被告の考えと主任弁護人からみて今回の事件の概括的な説明を。
弁護人 一貫して無罪主張です。他の人は分からないが村木はまったく無実と思っている。検察官から開示された証拠をみているが、分析してみてもその確信は揺るがない。公判前整理手続きが半ば過ぎまで来ている。公判は来年1月から始まる予定だが無実であることを明らかにしたい。
村木被告 言われているように公文書を作成するよう依頼されたことも一切ないし、引き受けたとか、部下に命じて作らせたとかも一切ない。裁判の中で明らかにしたい。
--勾留された5カ月半の感想は?
村木被告 逮捕されたときも、検察の言うことを聞いてもまったく身に覚えのないことで非常にショックを受けたが、時間がたって私自身そういうことをやっていないわけだから、きちんと真実が明らかになるよう努力しようとわりと早く割り切れた。そういう意味では非常に落ち着いて、静かに裁判に備えて拘置所の中では過ごせた。
--昨日保釈されて、家族とも対面したときの気持ちは?
村木被告 娘に怒られるかもしれないが下の18歳の娘に抱きつかれて泣かれまして。それまで一度も面会に来ても泣いたことのない娘だったのでいろいろ我慢してくれていたのだなと家族のありがたさも感じたし、たくさんの人からニュースで知ったよと連絡をもらいありがたいなという気持ちがしました。
--逮捕されてから、当局を通じての情報では「記憶にない」といっていると聞いているが
村木被告 私自身は、偽の証明書を作れと頼まれたとか、実際に部下に命じてやったとか一切ない。そういう事実がないことを一貫して言っている。記憶にないというのは、相手が偽団体とプラカードかけてきたのでなければ、通常にお願いにくる人とは会う。全部の人を記憶しているという自信はないので、そこの部分は記憶がないということを取り調べの時も申し上げていた。
弁護人 凛の会とか倉沢(邦夫被告)にあったことについては記憶にはないが、日々いろんな人に会っているので忘れていることはあり得る。不正なことをやったことは絶対にないということ。
--検察への取材だが、(厚労省元係長の)上村勉被告は村木被告から指示を受けていると話しており、主張が食い違うが
村木被告 私自身が、何をして何をしていないかしか分からない。ほかとは接触もしていないので私からは申し上げようがない。私のことをしっかりと裁判で主張していくということかなと思っている。
--事件の構図として上からの指示とか、他人との関係が大事になる。上司部下とのやりとりを話してほしい
村木被告 私として、部下に命じて証明書を作らせたと指示したかと言われればしていないと言うだけ。その余のところ、自分がかかわっていないところは分からないということ。
--政治家の関与ですが、倉沢被告の冒頭陳述で、参院議員から依頼を受けて村木被告に指示したという下りがあった。そういったことであれば印象に残るかと思うが。不正な行為の指示かどうかは別にして国会議員の依頼を元に、元部長が村木被告に依頼したことは?
村木被告 まったく記憶にはありません。記録も取る方だが、忘れているだけかと思って確認したが、そういう記録も残っていない。まったく覚えがないということ。記録というのはスケジュールなんかは手帳で管理しているし、大事な仕事や今後大事になることとか、処理が結構やっかいなものとかは記録を結構取っている。最初に起きたときに5年も前のことだから忘れているかと確認したが、自分の記録にも記憶にもまったく残っておりません。
--その一方で村木被告の公印が押された証明書が出ている事実はどう考える
村木被告 あの~、実は検事のやりとりでもあったが、私には分からない部分としか言いようがない。判子を押すのは私自身が押すわけではないので。決裁はするが、今回は決裁もないということなので、誰の手でどうやってなぜというのはこれは想像では申し上げられない。自身として関与した部分はない。
--上村被告だが、村木被告から指示されたという供述調書が残っている。上村被告が仕事のやりとりで指示する部分があるのか。どういう部下だったのか。人となりは
村木被告 本当に率直に言って、企画課と社会参加推進室があり、係長が上村だが、物理的に部屋も別ですし、課長のほかに室長もいるし、私自身がその係長に直接指示したり、報告を受けるというのは非常にまれ。何か上村被告との仕事で印象に残っている部分は正直申し上げて何もない。
【郵便不正、厚労省元局長の村木被告会見】詳報(2)「議員案件でルール無視は幻想」
2009.11.25 23:02
--弁護人に。記憶にない以外に村木被告が知らなかったことを立証できる物証はあるのか
弁護人 刑事事件は検察が立証責任をする。こちらが記憶にないことを立証する前に、検察が事実があったことを立証する。物理的といえば関係者のスケジュール表とか手帳は押収されて存在するが、一切そういう記載はない。問題視されているような面談とか要請はない。物的証拠はそういうものになるだろう。証人による供述調書には同意していないし、証人尋問の中で、検察側の尋問にどう答え、こちらの反対尋問にどう答えるのか、事実に基づかない証言は弾劾できる。証人尋問を通じて事実を明らかにしたいと思っている。
--今回、政治家の関与が取りざたされて、政治家から元部長、村木被告と。現実問題、上司も国会議員も摘発されていない。違法性の認識のない指示はしたが、偽造までしろといっていないという釈明で逃げ切れると思うが、それではない?
弁護人 質問自体があれだが、議員が部長に無理をすることはないよと、合法的にできるならやってくれという依頼なら部長も村木被告に同じように依頼するだろう。村木被告が変心してやったということになる。よほど考えにくい特別な事情がないとやらない。議員に近い立場の人なら、なんとしてもやりたいだろうが下に行くほどなんとしてもやりたいとは考えにくい。上が普通にやってくれという話が、下に行けば突然無理させたという論理が破綻(はたん)している。そもそもそんな依頼を議員が否定している。指示があったというのは証人かどうか分からないが、真ん中の部長だけになる。上も下もない。それは相当無理な構図だと思っている。
--主たるものは頼まれてもいないし指示もしていないという無罪主張?
弁護人 頼まれるにも無限のニュアンスはある。こっちに回してくれという仕事がルーティンとしてあれば別だが、特別なものならば印象に残るもの。不正なものは絶対にない
--労働族の村木被告が「やらないといけない」と考えたという見立てがあるが
村木被告 あの、そうであれば私はずっと労働行政にいたし、厚生にいて2年目のことだからそれは上司の判断をあおぐとなる。そこまで無理をしないといけない先生なのか、労働と違って危ないことをしないといけない世界なのか。独断で判断するのはあり得ない。上司なり横なり信頼できる部下に相談したのではないか。
--議員案件はあるのか
村木被告 議員からお願いがないというのは嘘になると思うが、議員から言われたら議員案件だからルールを無視して何かするのも幻想。そういうことはない。
--刑事事件とは別の観点で聞くが、紙一枚で郵便事業の不正が行われたことに驚きは? 無罪主張でかかわっていないかもしれないが、紙を出す側の立場としていま振り返ると?
村木被告 あの、やっぱり役所の証明書がひとつの金もうけを助けてしまったことは事実、何が原因でそういうことが起こったかきちんと追及していかないといけない。刑事事件とは別にきちんとしていかないといけない。そのためにも、この問題に関する私のことも含めて真実が明らかにならないと原因が明らかにならない。原因をきちんとさせて再発防止、何が問題だったのかはっきりさせないといけないと痛感している。
--倉沢被告は今回の取り調べの中で庁内や課内で直接会って手渡ししたと言っている。障害者団体と課内であって話したり、もののやりとりとかは現実としてあるのか?
弁護人 あんまり漠然と広げて質問されると困る。
--企画課長時代に課内で団体側の人間と会うことはあるのかないのか。
村木被告 障害者団体の方とは山のようにものすごくたくさん会う。特に私はその分野でキャリアが長いわけではないので、できるだけたくさんの人と会うようにしていた。その意味で記憶にないといったのは、会った団体をすべて覚えているかと言われると正直自信がない。
--証明書を渡すことは
村木被告 役所ではあり得ません。担当から郵送したりするのが普通。大臣だったり企画課長の名前のものを本人に渡すことはありえないです。感謝状とかは本人から渡さないと意味がないかもしれないが、通知とか通達か証明とかを名義になっている人に手渡しをするのは役所ではないことだと思います。
--倉沢被告の冒頭陳述では、村木被告が倉沢被告から言われて日本郵政の副社長に電話して、認可してやってくれという場面が出てくる。倉沢被告は否定するが、それについては思い当たることは?
村木被告 思い当たることはありません、その方も存じ上げませんし、そういう意味ではまったく思い当たることはありません。
--事件の構図として障害者自立支援法が成立前で無理をした?
村木被告 それはかなり時期がずれていて、この事件があの年の2~6月くらいの出来事と聞いているが、8月の終わりとか9月くらいまでは、介護保険の年齢を引き下げて障害者福祉にこれを使えないかと議論されていて、障害者自立支援法の大きな骨格が出たのはこの年の秋でそれはまったく時期がずれている。
--本案の骨子ができる以前から構想が練られていて、根回しも進んでいて現実的には始まっているという見方もあるが?
村木被告 それにしても時期がまったく早すぎると思います。むしろ別の方向で走っていた時期で介護保険の議論の中で物事が動いていた時期でタイミングとしてそういう事実もないし、客観的に政策のプロセスのことだからそれにかかわった人ならきちんと分かる。
--過酷な取り調べもあったか
村木被告 あの、言いにくいが、言い分をきちんと聞いてもらったとはまったく思わないが、大きな声を出すとか長時間の取り調べとか脅迫するようなものは私に対してはなかった。
【郵便不正、厚労省元局長の村木被告会見】詳報(3)「なんでこんなことが起こるんだろうと」
2009.11.25 23:06
--倉沢被告から直接手渡されたことはない?
村木被告 記憶にはまったくないし、通常そういうことはしません。そういう意味で言えば、非常にイレギュラーなことをすれば覚えているのではないかなと思います。
--企画課長の印鑑が押された偽の証明書が出回ったことは
村木被告 組織としては原因を突き止めてこういうことが起こらないようにしないといけない。最終の決裁権者ですから、私に責任はあると思っています。原因と真実をきちんと知りたいと思っている。
--復職すれば
村木被告 まだそこまでは(笑)。やりがいもあるし、やってきたのでまたチャンスを与えられればと思っています。
--公判では
村木被告 かかわったことは一切ないので自分の主張をしっかり貫きたい。真実が明らかになるよう努力したい。
--逮捕されたときは何でということだと思うが、その時の思いは
村木被告 非常に不思議な感じがしました、何でこんなことが起こるんだろう。(目を少し赤くしながら)
--これからしばらくどうするのか
村木被告 1月の終わりから裁判が始まる。裁判について漠然と思っていたイメージよりスケジュールがタイトなので、体調と気持ちを維持してしっかり自分の主張をしていきたい。本当にびっくりするようなスケジュールなので。東京から大阪に通うので。
弁護人 集中審議の予定。週に2、3回ということもあると思いますね。当然、公判前整理手続きが全部終わってから組むだろうが、1月の終わりに初公判というスケジュール。年度内結審を目指している、証拠の開示は、追加で申請があったりするものもあるから全部ではないが、最初の分は整理がついている。
--その中では村木被告自身の被疑事実を認めた調書は?
弁護人 ない、ありません。
--関係者の供述調書はほとんどが不同意か?
弁護人 不同意になりますね。
--集中審議についてどう思うか?
弁護人 ひとつの事件について集中した方がいいのかなと思うが、ほかの業務が犠牲になるので、痛し痒しということですかね。事件にもよると思う。検察官の立証が終わらないと反証の見通しが立たない場合は時間をおいてほしいと思うが、証拠の開示がかなりされていることもあって、集中審議をしてみても早期に真相解明できる方法かなと前向きに受け止めている。
--証人で重要なのは
弁護人 上村被告、元部長、倉沢被告、凛の会の発起人。
--集中審議で早く終わることは望ましいか
弁護人 そうですね。延々とかかるのかなというのがありましたから、思ったよりかなり裁判がつめて行われるのはありがたいなと思った。早く真実を明らかにしてもらいたいという思い。
--証人申請の数とは
村木被告 公判前整理手続きで明らかにしているのは2人。必ずしも職場の人ではない。
--障害者団体に郵便割引がある制度を知っていたか
村木被告 えっとですね、厚労省が証明書を発行するケースは少ないので、割引制度そのものは郵政民営化の国会のちょっと前の時期ですので、民営化になったときに残れるかどうか障害者団体も非常に心配していて、団体ともそういう話をしていた。何とか残してほしいということで役所として手伝えることは難しいが、団体とはそういう話をしていて、民営化法案より割と早くに残してくれることが決まって良かったと思った記憶がある。
--課長だったときにきちんと発行している事例の記憶は
村木被告 決裁文書をみて記憶を呼び起こそうとしたというのが事実。特に覚えてはいなかった。
--不正利用の知識は
村木被告 その時は情報交換をしたのが、残してほしいという団体の人たちだったからもしれないが、そういうことを団体と話題にした記憶は特にない。
--凛の会という名前について記憶は
村木被告 印象に残りそうな名前の感じはするが、新聞報道の時に何も記憶には…。
--ない?
村木被告 (うなずく)
--障害者自立支援法だが、長妻大臣になってから法案廃止を明言しているがそれについては?
村木被告 制度が前に進むのであれば、どんな形でも見直しをすることは大事なことだと思っている。ただ、自分は今仕事から離れているので、何とも申し上げる立場ではないが良くなればいいなとは思っている。
-一番辛かったことと励ましは
村木被告 励ましになったのは、家族とか関係者からたくさん手紙をもらったり、面会も毎日誰かが来てくれるということだったので非常に元気づけられた。辛かったのは、拘置所の職員は親切だったが、暑さと寒さが一番辛かった。
--体調面ではどうか?
村木被告 体重はたぶん、5、6キロ、もうちょっとかな、落ちちゃった。非常に規則正しい生活をして食事も3食とってちゃんと眠れていたので、健康を崩したりということはなかった。体重が落ちたので保釈は非常にありがたかった。
--10月の保釈申請と今回の保釈申請の結果が異なっている理由は
弁護人 公判前整理手続きがあって、弁護士としての主張や検察側の主張がはっきりした。公判の日程も決まった。裁判官からみれば、進行の全体像がかなりよく見えたんだろう。その中で、被告人が出て、証拠隠滅を図ることは現実的ではないと判断したのだろうことをわかってもらったことが、今回の保釈につながった。こういう意味では公判前整理手続きが被告の利益になることもある。前回と異なったことはないが、本人の誓約書や家族の上申書を具体的に詰めたものを提出したくらい。特定関係者との接触禁止はある。
--ご主人から一言
夫 夫としても、同僚としても公訴事実を読んだが、どれをとっても100%無実。まったくあり得ない構図。これからも厚子を支えていく。同じように信頼してくれる人からの励ましもありがたかった。
「民主議員に口添え依頼」郵便不正事件の被告が証言
2009.12.17 22:06
郵便不正事件に絡み、障害者団体証明書を厚生労働省側に偽造させたとして、虚偽有印公文書作成・同行使などの罪に問われた障害者団体「凛(りん)の会」主要メンバー、倉沢邦夫被告(74)の公判が17日、大阪地裁(横田信之裁判長)であった。倉沢被告は被告人質問で、民主党の国会議員の実名を挙げ、「証明書発行の口添えをお願いした」と証言した。
証言によると、倉沢被告は以前、この議員の秘書をしており、平成16年2月に議員会館を訪れ、「このたび障害者団体を設立し、厚労省の認可がいる」と口添えを依頼。議員は「厚労省に連絡しておく」と応じたという。
また、共犯として起訴され、無罪を主張している元厚労省局長、村木厚子被告(53)については「証明書を庁舎内で村木さんから受け取ったのは間違いない」と述べた。
厚労省元女性局長はクロかシロか? 郵便不正事件 検察、弁護側ともに自信を深めるワケは…
2009.12.26 18:00
果たしてクロなのか、シロなのか。郵便不正事件で、障害者団体証明書を偽造したとして虚偽有印公文書作成・同行使罪で大阪地検特捜部に起訴され、11月24日、逮捕から約5カ月ぶりに保釈された厚生労働省元雇用均等・児童家庭局長、村木厚子被告(53)の初公判が平成22年1月下旬に開かれる。敏腕弁護士とともに臨んだ保釈後の会見ではきっぱりと自らの関与を否定した村木被告。対する検察幹部も「立証に問題はない」と自信をのぞかせ、捜査にあたった特捜検事を公判に立会させて万全の態勢で臨む。公判では村木被告の元同僚らも証人として出廷する予定で、証言内容に注目が集まっている。
「100%無実」
「全く身に覚えがない」
11月25日、保釈翌日に開かれた記者会見。村木被告は繰り返し自らの“潔白”を公の場で訴えた。同席した弘中淳一郎弁護士はロス疑惑など数々の著名事件で無罪を勝ち取った“無罪請負人”だ。その弘中弁護士も「村木さんは全く無実。検察側の証拠を見てもその核心は揺るがない。公判で無実を明らかにしたい」と自信たっぷりに語った。
また、夫で厚労省総括審議官の太郎さん(55)も会見に同席し、「妻は100%無実」と訴えるなど、まさに異例の会見になった。
村木被告はこの会見で、これまで報道などで明らかにされた大阪地検の捜査内容をことごとく否定した。
国会議員から依頼を受けた障害保健福祉部の元部長(57)に指示され、部下の元係長、上村勉被告(40)=起訴=に偽造を命じたとされることは「記録にも記憶にも残っていない。通常、直接指示したり報告を受けたりすることはない」。さらに、障害者団体「凛の会」主要メンバー、倉沢邦夫被告(74)=公判中=に偽造証明書を手渡したとされる点も、「郵送するのが普通で、役所内で手渡すことはあり得ない」と検察の言い分を真っ向から否定した。
“闘い”に備えて六法全書
会見では最後まで強気の姿勢を崩さなかったが、保釈後に支援者へ送ったメールには本音をにじませる。6月14日の逮捕から5カ月以上に及んだ拘置所生活を振り返り、「期間が長くなるに従い、いつまでこうした生活が続くのかと、不安も大きくなってきておりましたので、私も家族も本当にホッといたしました」と心情を吐露。折れそうになる気持ちを支え続けたのは家族や支援者らの存在だったという。
接見禁止が解けてからはほぼ毎日、のべ約70人が面会に訪れ、届いた手紙は約500通に及んだ。「拘置所の中で悲しくて泣いたことが一度もないとは申し上げませんが、その何十倍も、自分がいかに周りの方に恵まれているかを思ってうれし涙を流しました」と感謝の言葉を記した。
有り余る時間を使って、支援者らから差し入れられた本150冊を読破。六法全書にも目を通し、来たるべき“闘い”に備えた。“麦飯ダイエット”の効果もあって体重は6キロ減少。暑さや寒さなど長期間の拘置所生活はやはり体に堪えたようで、年内は体調を整えることに専念するとし、最後は公判への決意で結んでいる。「真実を曲げずしっかりと主張をして、無実を証明したいと思います。がんばります」。
3月中にも結審
支援者が数百人規模に増え、盛り上がる村木被告側に対し、検察側は全く動じる気配を見せない。「村木被告は部下に責任を押しつけているだけ。捜査段階では上司や部下、関係者ら全員が村木被告の関与を証言した。縦、横、斜めすべてガチガチに証拠が固まっている」。
保釈後の会見に、厚労省事務次官に次ぐポストの夫が同席したことに触れ、「省の最高幹部級の現役官僚が公然と被告の肩を持つのはどうか。今後、証人として出廷する部下への無言のプレッシャーになり、真実を証言できない恐れがある」と批判し、「なりふり構わない異例の会見は逆にそれだけ村木被告側が追い込まれている証拠だ」と有罪立証に自信をのぞかせる。
ただ、検察側の立証も万全とはいえない状況だ。凛の会主要メンバーの倉沢被告は先行して開かれている自らの公判で村木被告との共謀を否認した。
倉沢被告の検察側冒頭陳述によると、村木被告は上村被告に「(国会議員の)先生からお願いされていることだし、部長から下りてきた話だから、決裁なんかいい。すぐに証明書を作って」と依頼。倉沢被告の前で、当時の日本郵政公社幹部に電話をかけ障害者割引の適用を依頼した、と主張している。
倉沢被告は公判で、村木被告から直接、証明書を受け取ったことは認めたものの、「厚労省の担当係長から一度、村木被告を紹介されてあいさつしたが、名刺交換はしていない」「村木被告から郵政公社に電話してもらったとされる日には、結局、村木被告とは会わなかった」と捜査段階と供述を変遷させている。その理由について、「担当検事から『あなたの記憶違いだ』といわれ、そうかなと思ってサインした」と証言した。
倉沢被告の供述の変遷が“アリの一穴”となるのか。村木被告の公判では、倉沢被告に加え、元部長や上村被告も証人として出廷する見通し。捜査段階では村木被告の関与を認めた3人がいかなる証言をするのか。無罪が明らかになれば復職したいという村木被告。いつかその日はやって来るのか。3月中にも結審する予定の公判から目が離せない。
【郵便不正】村木元局長の初公判は27日 厚労省の公文書偽造事件
2010.1.5 16:13
郵便制度悪用に絡む厚生労働省の公文書偽造事件で、大阪地裁は5日、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された同省の元局長村木厚子被告(54)=官房付、休職中=の初公判を27日に開くことを決めた。
村木被告は保釈中。捜査段階から一貫して起訴状の内容を否認し、初公判でも無罪を主張する。
起訴状によると、村木被告は障害保健福祉部企画課長だった平成16年6月上旬、実体のない「凛の会」を障害者団体と認める課長の公印入りの証明書を部下に偽造させ、凛の会会員らが旧日本郵政公社に提出したとしている。
【郵便不正事件】「私は無罪です」村木被告、毅然と語る
2010.1.27 20:06
元厚労省局長の村木厚子被告
「私は無罪です」。村木被告は罪状認否でこう口火を切ると、「国民から信頼を得られるよう仕事してきた。国会議員に依頼されても、法に反することを引き受けることはあり得ません」と、毅然(きぜん)とした口調で書面を読み上げた。
紺のスーツに眼鏡をかけた姿で入廷。弁護人の前の被告人席には座らず、ロス疑惑で無罪を勝ち取った辣腕(らつわん)の主任弁護人、弘中惇一郎弁護士の隣に着席した。検察側の冒頭陳述の間は、手元の書類と照合しながらメモを取り、時折検察官を見据えた。
逮捕までは障害者雇用や男女共同参画など厚労行政の一線で活躍してきた。現在は起訴休職中で、同じ厚労省で最高幹部の総括審議官を務める夫と子供2人に囲まれて「初めての主婦生活」を送るが、今も復職を強く願っている。
昨年11月に保釈されるまでは、支援者らが連日拘置所に面会に訪れ、この日も傍聴席は満席だった。閉廷後に会見した村木被告は「応援が支えになっている。信頼に応えて裁判を闘っていきたい」と話した。
【郵便不正事件】検察側冒頭陳述要旨
2010.1.27 21:00
事案の概要
被告は当時、厚生労働省障害保健福祉部企画課長として、障害者団体の申請に基づき低料第三種郵便に関する公的証明書の発行に従事していた。共犯の上村勉は同課社会参加推進室係長、河野克史は「凛の会」発起人、倉沢邦夫は会長だった。凛の会は障害者団体としての実体はなかった。
身上経歴等、低料第三種郵便の概要および厚労省による証明書の発行状況
(省略)
犯行に至る経緯
河野は低料第三種郵便を悪用し不法に収益を上げようとしたが、正規に証明書を得る見込みはなく、平成16年2月下旬、国会議員秘書の経歴を持つ倉沢に、国会議員へ口添えを依頼するよう指示した。国会議員は承諾して当時の障害保健福祉部長に電話をかけ、証明書の発行を要請した。
部長は国会議員と懇意で有力政党の重鎮だったことから、国会で紛糾することなく予算や法案を成立させるためには、機嫌を損なわずに依頼を処理する配慮が必要と考えて了承した。
部長は被告に便宜を図るよう指示し、被告は企画課長補佐に「秘書の倉沢さんが団体の新聞を低料第三種郵便で発送したいみたいなの。担当者を紹介してあげてください」と指示した。
2月下旬、倉沢と面談し説明を受けた被告は、凛の会が障害者団体でないと理解して困惑しながらも、倉沢を部長に会わせた。倉沢が帰った後、社会参加推進室の室長補佐と係長に「ちょっと大変な案件だけど、よろしくお願いします」と告げた。以後、被告ら担当者間では、実体がどうあれ発行が決まっている「議員案件」と位置づけた。
上村は4月1日付で係長となったが、凛の会から審査資料はまったく提出されていなかった。上村は発行を先送りしていたが、5月中旬、河野らから電話で催促され、時間稼ぎのために、手続きを進めるという虚偽の稟議書を作成し凛の会にファクスした。
日本郵政公社に実体がないことを気づかれると危惧した河野は、厚労省から近く証明書を発行する予定だと伝えてもらおうと考えた。5月中旬、倉沢が企画課に赴くと、被告は「一応連絡してみますが、相手が応じるか分かりませんよ」と言いながら、面前で公社東京支社に電話した。
犯行状況
河野は6月上旬、日本橋郵便局から証明書の原本を至急提出するよう要請されたため、上村につじつまが合うよう日付をさかのぼった証明書を無審査で発行するよう要請した。倉沢も企画課で被告にそう求めた。被告は少し考え込んだが、部長の指示があった議員案件だったことから了承した。
6月上旬、上村は被告に問題点を伝えた上で、それでも発行していいか指示を仰いだ。被告は「先生からお願いされて部長からおりてきた話だから、決裁なんかいいんで、すぐに証明書を作ってください。上村さんは心配しなくていいから」などと告げた。
上村は6月上旬、深夜に書面を作り、翌早朝ごろ企画課長の公印を押して5月28日付の虚偽の証明書を作成し、被告に手渡した。
被告は部長に発行を伝え、部長は国会議員に電話で報告した。被告は証明書を受け取りにきた倉沢に「何とかご希望に沿う結果にしました」と言いながら証明書を交付した。
上村は稟議書だけでも残した方が言い訳しやすいと考えたが、被告は「もう気にしなくていいですよ。忘れてください」などと告げた。その後も凛の会は資料を提出せず、6月10日ごろ不正に入手した証明書を提出して行使した。
その他情状
(省略)
【郵便不正事件】弁護側冒頭陳述要旨
2010.1.27 21:34
基本的主張
被告は無罪。共謀したこともないし、上村勉に証明書作成を指示したこともない。そもそも上村が書類を作っていた事実自体を全く知らなかった。
被告は国家公務員になって31年間、常に法規を順守してまじめに取り組んできた。国会議員の依頼にも、法規に違反してまで従ったことはない。当時、証明書の不正発行をしてまで国会議員の機嫌をとらなければならない事情もなかった。
作られたストーリー
上村、倉沢邦夫、河野克史は、被告とかかわりなく犯行に及んだ。倉沢の引っ張り込み供述をきっかけに、検察官は被告が関与したとするストーリーを作り上げ、3人を誘導し、記憶に反する供述調書に署名押印させた。厚生労働省関係者についても記憶に反する供述調書を作成し、署名押印させた。
以上のことは次第に明らかになった。倉沢は自身の公判で、証明書が虚偽だったとの認識を否認した。上村の弁護人は、予定主張記載書面で被告との共謀を否認し、上村の単独犯行であること、上村が証明書を河野に交付したこと、検察官に虚偽の自白をさせられたことを明らかにしている。
物証は無罪を裏付ける
被告の手帳やパソコンで作成していた業務日誌には、平成16年2月、5月、6月のいずれも倉沢との面会をうかがわせる記載はまったく存在せず、証明書の発行指示や交付についての記述も一切ない。倉沢の手帳にも被告との面会をうかがわせる記載は一切存在しない。
16年5月中旬ごろ、被告が企画課から日本郵政公社東京支社に電話をかけたとの検察官の主張についても、通信記録は存在しないし、支社長も電話を受けたと述べていない。倉沢も自身の公判で否定した。
上村が証明書を作成した日時は、フロッピーディスクに記録された文書ファイルのプロパティによれば、16年6月1日未明(午前1時20分06秒)以前であることが明らかである。従って、上村が6月上旬ごろになって、被告の指示をきっかけに証明書作成に踏み切ったという検察官の主張は破綻(はたん)している。
16年6月上旬ごろ、被告が「凛の会」に証明書を取りに来るよう連絡した事実はない。通信記録は存在しないし、被告の依頼で連絡した人物は存在しない。「凛の会」で連絡を受けた人物は存在しない。被告の連絡を受けて倉沢が被告より証明書を受領したという検察官のストーリーは前提を欠き、ありえない。
ストーリーの不自然性
元部長が被告に不正な手段を用いてでも証明書発行をするようにと指示をしていないことは、検察官も前提としている。被告の段階で指示を逸脱し、突如不正に証明書発行に踏み切ったことになるが、そうする合理的理由は考えられない。
検察官の主張では、被告は上村だけでなく企画課あるいは社会参加推進室のスタッフにも不正な証明書発行を指示していたという。しかし、上村1人が悩み、ひそかに稟議書を捏造(ねつぞう)したり、深夜に証明書を作成して翌朝早朝押印するという経過は、他のスタッフの容認があり得ないことを示している。
検察官の主張は関係者を脅したり懐柔したりして作り上げた個々の虚偽の供述調書をつなぎ合わせただけのもの。方々でほころびが顕著になっており、全体のストーリーとしては支離滅裂で、破綻している。
結論
被告の無罪は明らかである。1日も早い無罪判決を下していただきたい。
【郵便不正】「凛の会」元会長が「村木被告から証明書」と証言
2010.2.3 21:26
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽造証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の第3回公判が3日、大阪地裁(横田信之裁判長)で開かれた。検察側証人として、共犯とされる「凛の会」元会長、倉沢邦夫被告(74)=公判中=が出廷し「証明書は村木被告から受け取った」と証言した。
一方で、捜査段階では村木被告とのやりとりを詳述したとされたが、「何度も調書の訂正を申し入れた」と指摘。「取調官から『裁判員制度が始まったから平易に書く』といわれ、納得してしまった」と述べた。村木被告と会った回数も検察側が主張する4回ではなく、2回だったとした。
倉沢被告の証人尋問に先立ち、この日午前は凛の会発起人、河野克史被告(69)=起訴=が前日に続き出廷。裁判官が、河野被告が取り調べ時に記憶を喚起したとされる自筆の紙片を再度示したり、供述調書が作成された過程を問うたりして、約1時間にわたる異例の補充質問を行った。
【郵便不正】村木被告第3回公判詳報
2010.2.3 21:27
村木厚子被告の第3回公判で行われた検察側証人、倉沢邦夫被告への尋問の主なやりとりは次の通り。
《検察側が冒頭陳述で明らかにした村木被告と倉沢被告との接点は計4回あった。(1)証明書発行に向け便宜を求めた(2)日本郵政公社(当時)に手続きが進んでいると電話で伝えてもらった(3)日付をさかのぼった証明書を発行するよう求めた(4)証明書を受け取った-で、いずれも村木被告が当時課長を務めていた企画課内で行われたとされる》
《これに対し弁護側は(1)~(4)をいずれも否定。村木被告は倉沢被告と会ったことはなく、場所が他の職員の目がある課内だったのは不自然などとして「検察が作り上げたストーリーは支離滅裂」と主張している》
《検察官はこうした経緯を踏まえて質問した》
検察官「村木被告の顔を見たら分かるか」
倉沢被告「はい」
検察官「法廷にいるか」
倉沢被告「はい」
検察官「どの方?」
倉沢被告「私から見て、右側の前列左から2番目の方だと思います」
《村木被告は弁護人の隣に着席している》
検察官「村木被告と何回会ったことがあるか」
倉沢被告「2回…です」
検察官「最初は何の用件で会ったのか」
倉沢被告「凛の会に認可をもらう手続きのために、厚労省の係長を訪問したときが最初です」
検察官「2度目は」
倉沢被告「証明書を取りにうかがったときだと思う」
《検察側主張の(1)と(4)には沿った供述だが、(2)と(3)は否定した形だ。検察官はひとまず、倉沢被告がかつて秘書を務めた石井一参院議員(民主党)への口利き依頼に話を移す。倉沢被告は河野克史被告から指示され議員会館に行ったことは認めたが…》
検察官「石井議員に会ってどんなメリットがあると思ったか」
倉沢被告「経験上、国会議員の事務所から来たと(役所に)陳情すると、ていねいに応接していただいた。そういう意味で」
検察官「それ以外に期待したことは?」
倉沢被告「なかった」
検察官「理由は供述調書に書いてあるようだが、覚えてないか」
《検察官がさらに続けて何か言いかけると、弁護人が異議を申し立てた。結局、村木被告の動機とされる「議員案件」につながる証言は出そうで出てこない。話題は(1)に戻る》
検察官「村木被告とはどんなやりとりを?」
倉沢被告「『石井一事務所の倉沢と申します。障害者支援団体の件で相談に上がりました』と」
検察官「村木被告は何と言ったか」
倉沢被告「『ああ、そうですか』と言った程度と記憶している」
検察官「それだけ? 名刺交換は?」
倉沢被告「していません」
《検察官は倉沢被告に企画課の入った部屋の見取り図を書かせた上で、(2)について尋ねた》
倉沢被告「その件は厚かましいお願いなのでしていない。新任の係長(上村勉被告)が不在で会えず、村木被告にあいさつしておこうとしたが、電話中だったので機会を改めようと退出した」
《(3)は河野被告の指示を受けたとされているが、さらに明快に否定した》
倉沢被告「かなり難しい陳情をしているのに日付までお願いするのは失礼。河野被告が急ぐ状況は分かったが、私は無視した」
検察官「催促してくれという再三の要請があったと思うが」
倉沢被告「私の判断で一切しなかった」
《(4)についてはこう語った》
倉沢被告「課長(村木被告)が厚労省の封筒の上に、2行ぐらいの短い書類を載せて『ご苦労さまです』と手渡してくれた。私はお礼を言って帰った」
検察官「それ以上の詳しいやりとりは?」
倉沢被告「ありません」
《その後、検察官は捜査段階の供述調書と公判供述の食い違いをただし、(2)(3)が逮捕後の早い段階から供述調書に書かれていることを指摘した》
《村木被告は閉廷後、取材に倉沢被告について「顔を見ても何も思いださなかった」と語った。倉沢被告への弁護側の反対尋問は4日に行われる》
【郵便不正】第4回公判 「証明書受け取り」で応酬
2010.2.4 19:05
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽造証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の第4回公判が4日、大阪地裁(横田信之裁判長)であった。前日に続き共犯とされる「凛の会」元会長、倉沢邦夫被告(74)=公判中=の証人尋問が行われた。
検察側は冒頭陳述で「村木被告が平成16年6月上旬ごろ、厚労省で偽造証明書を倉沢被告に手渡した」と主張したが、倉沢被告は弁護側の尋問に対し、その時期には厚労省を訪問していないという内容の証言をした。
【郵便不正】第4回公判 倉沢被告への質問詳報
2010.2.4 19:49
《冒頭に特捜部の検事が追加質問。倉沢被告が(1)証明書発行に向け便宜を求めた(2)証明書を受け取った-際に村木被告と面会したとする捜査段階の供述を、自分から進んでしたという証言を引き出した》
《弁護人が村木被告と倉沢被告の面識がないという主張を裏付けるには、倉沢被告の証言を崩す必要がある。まず裁判長にこう求めた》
弁護人「昨日の図面にさらに書き込みをしてもらいたいので、コピーを用意してほしい」
《倉沢被告は3日の公判で、村木被告が当時課長だった企画課の部屋の見取り図を書いた。一方で弁護側は部屋を独自に“実況見分”した写真付き報告書を提出している》
弁護人「検察官とは事前に打ち合わせた?」
倉沢被告「しておりません」
《事実は異なったが、この場面では聞き流された。弁護人は倉沢被告に本人の手帳を示し、(1)を問いただしていく》
《企画課の部屋の中を実際にどう動いたのか、見取り図に赤ペンで書き込ませたが、それに関する質問はない。次回以降の公判に向けた布石だったのか》
弁護人「村木被告に会社の名刺を渡さなかったのはなぜか」
倉沢被告「初期的な陳情と位置づけていたので、そう考えなかった」
《(2)では証明書を受け取ったとされる前後の状況を細かく尋ねた。「証明書が発行された」との電話連絡を倉沢被告が受けたとされることをめぐり、弁護人の言葉が熱を帯びてくる》
弁護人「電話の相手はだれ」
倉沢被告「河野君(共犯とされる河野克史被告)だったと思う」
弁護人「昨日は別の人と言ってなかった?」
倉沢被告「はい」
弁護人「昨日と今日で記憶が変わったの?」
倉沢被告「ちょっとだれからか不鮮明で、昨日は河野君と違うと思ったので、そう申し上げた」
弁護人「今日は?」
倉沢被告「河野君ではなかったかと…」
《厚労省に行った日時、持ち帰った証明書をどこでだれに渡したかの証言も揺らぎ始める。弁護人は改めて手帳を示しながら問う》
弁護人「(平成16年の)6月1日は、大阪に出張したということですか」
倉沢被告「はい。大阪から神戸へ」
弁護人「この日に厚労省へ行ったことはないですね。2日は?」
倉沢被告「たぶんないと思う」
弁護人「3日は新宿と書いてあるが、厚労省には行ったか」
倉沢被告「行く旨が書いてないし、ございません」
《検察側が冒頭陳述で明らかにした偽造証明書の受け渡し時期は、16年6月上旬ごろ。4日は手帳に「休」とあり、5日は土曜、6日は日曜だった。弁護人は10日まで1日ずつ、質問を重ねたが、倉沢被告は行っていないと答え続ける》
弁護人「結局…」
《何か言いかけたが言葉を引き取り「私の方からは以上です」と質問を終えた。検察官は倉沢被告の体調を理由に休憩を求め、再開後に質問に立った》
検察官「厚労省に行ったときは、必ず手帳に記載していたのか」
倉沢被告「必ずしも記載していません」
《さらに検察官は、実際は検察側と事前の打ち合わせをした倉沢被告が、冒頭で否定した点をただした》
検察官「なぜ勘違いしたのか」
倉沢被告「打ち合わせ自体がいけないものだという思いがあって…」
《傍聴席から思わず失笑がもれたが、弁護人はこのやりとりを逃さない》
弁護人「検察官に言われると、いけないことでも応じるのか」
倉沢被告「違う」
弁護人「勘違いと言うが、どういう誤解をしたのか」
倉沢被告「私は私の意思に基づいて話している。検察官の指示では話していない」
弁護人「もう結構」
《裁判官の補充質問では、6月上旬という証明書の受け渡し時期に話題が戻った。再び手帳が示される》
右陪席裁判官「5月31日からの1週間で、証明書を受け取った可能性のある日は」
倉沢被告「このページにはありません」
右陪席裁判官「次のページ、6月7日から10日は」
倉沢被告「…ございません」
《倉沢被告は2度、すべてのページを見返したが、受け取った可能性のある日は見つからなかった。裁判長は念を押すように尋ねた》
裁判長「手帳の5月31日から6月13日のページを見た限りでは、この間に厚労省へ受け取りに行ったことはないか」
倉沢被告「はい」
《補充質問は河野被告に対する尋問時より長く、1時間半以上に及んだ》
【郵便不正】厚労省元部長が証言翻す 民主議員の口利き「なかった」
2010.2.8 14:07
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の障害者団体証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の第5回公判が8日、大阪地裁(横田信之裁判長)で開かれた。当時上司だった元障害保健福祉部長が証人として出廷し、民主党の石井一参院議員から口利き電話を受け、村木被告に便宜を図るよう指示したとする捜査段階の供述について、「今の私の記憶にない」と事実上否定した。
事件の構図を揺るがしかねない証言で、検察側にとって厳しい情勢となった。
検察側は、共犯とされる「凛の会」元会長、倉沢邦夫被告(74)=公判中=と元部長らの供述などをもとに、石井議員からの証明書発行で口利きを受けた元部長が村木被告に便宜を図るよう要請、さらに村木被告が部下だった元係長、上村勉被告(40)=起訴=に発行を指示した-と主張している。
元部長はこの日の公判で検察側の尋問に対し、口利き電話や村木被告への指示を事実上否定したうえで、村木被告から「証明書を渡した」と報告を受けた後に石井議員に連絡したという内容の供述調書についても、「電話の交信記録があると検事に言われたので論理的に判断したが、書かれてあることは事実ではない」と証言した。
捜査段階で供述したのは「政治家から電話を受けることは日常茶飯事で、倉沢被告と年齢が近い国会議員秘書の応対をした記憶が残っていた。検事に言われ、そういうこともあったかと思い込んだ」と説明した。
公判で一転させた理由として、最近になり、検事から交信記録はないと聞かされた▽倉沢被告が公判で「(私と)会ったことがない」と証言した▽上村被告が「村木被告の指示を受けていない」と供述を翻していると報道された-ことなどを挙げ、「この話が壮大な虚構ではないかと思った」と述べた。
さらに供述調書全般について、「検事と2人だけの会話だけで作られた。違う視点があればまったく違うものになっていたはず」と指摘した。
【郵便不正】村木被告から指示なし 前任係長、障害者団体と面会は認める
2010.2.16 15:03
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の第6回公判が16日午前、大阪地裁(横田信之裁判長)で始まった。当時部下だった元係長、上村勉被告(40)=起訴=の前任係長が証人として出廷し、証明書発行に関する村木被告からの指示について、「まったく受けていない」と明確に否定した。
前任係長は捜査段階で「村木被告に報告をすると、『大変な案件だけどよろしくお願いします』と言われた」と供述していたが、この日の尋問では「報告は記憶にない」と説明し、調書の内容を否定。そのうえで、「上村被告の前任の私が指示を受けた事実はないから、おそらく村木被告は冤罪(えんざい)ではないかと思う」と述べた。
一方、障害者団体「凛の会」元会長、倉沢邦夫被告(74)=公判中=と平成16年2月に省内で会った際に「村木被告もいた」と証言。村木被告が証明書発行に関与しなかった根拠のひとつとして、倉沢被告と一度も面会しておらず働きかけもなかったとする弁護側の主張と食い違いもみられた。
このほか、16年4月に自身が異動する際、後任の上村被告に「石井議員がらみで、障害者団体としての実態はよく分からないから慎重にやるように、と引き継いだ」とも証言した。
【郵便不正公判】検察側やや守勢 24、25日にヤマ場の元係長尋問
2010.2.21 00:46
“真実”は供述調書か公判証言か。虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の公判は24、25の両日、大阪地裁(横田信之裁判長)で、実際に証明書を発行した元係長、上村勉被告(40)の証人尋問が行われ、最大のヤマ場を迎える。
これまでに出廷した証人5人が捜査段階の供述内容を否定するなど検察側が守勢に回る展開。ただ、各証人から「内容を確認し調書に署名した」との証言を引き出しており、検察側の立証は「調書の信用性」をいかに証明できるかが大きな鍵になる。
検察側の主張は、平成16年、障害者団体向け割引郵便制度をめぐり、活動実体のない「凛の会」に偽造証明書を発行したとの内容。初公判で検察側は、当時課長だった村木被告が、(1)偽造証明書の作成を上村被告に指示した(2)凛の会元会長の倉沢邦夫被告(74)に証明書を手渡した-と指摘した。
物的証拠は少なく、関係者の供述を積み上げた主張だが、捜査段階で(1)と(2)に沿う調書に署名した上村被告は現在、村木被告の関与を否定しているとされ、公判での証言が注目される。
これまでの証人尋問でも、供述調書と異なる証言が相次いでいる。(1)に関し、上村被告の前任係長(48)は「課長から直接指示を受けることはありえない」と否定。(2)については倉沢被告が検察側の質問に、調書に沿った証言をしたが、弁護側が問いただすと該当する時期に厚労省へ行った可能性は「ない」と矛盾する内容を述べた。
【郵便不正】厚労元係長「自分一人で全部実行」 元局長指示を否定
2010.2.24 11:47
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の第8回公判が24日、大阪地裁(横田信之裁判長)で開かれた。村木被告の指示を受けて偽造証明書を作成したとされる元係長、上村勉被告(40)=起訴=が証人として出廷し、「自分で勝手に決めて自分一人で全部実行したことです」と述べ、「指示があった」とする自らの供述調書の内容を否定した。
上村被告は検察側の尋問に、「凛(りん)の会」案件について「自分と前任係長以外は知らないと思っていた」と説明。同会発起人、河野克史被告(69)=起訴=らから催促を受け、「制度改革のため予算の仕事が大変になるという重圧感があり、自分が勝手に出せば済むと考えた」と偽造に至る経緯を述べた。
さらに、「村木被告と仕事の話で会話を交わしたことがない」と独断を強調し、作成した偽の証明書は「その日のうちに厚労省近くの喫茶店で河野被告に手渡した」と証言。「このときに民主党の石井一参院議員がからんでいる話だと初めて知った」と話し、議員の口利き案件であることから村木被告が偽造を指示したとする検察側主張を否定した。
【郵便不正公判】元係長、「局長関与」供述、「勾留長期化怖かった」から
2010.2.25 19:25
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の第9回公判が25日、大阪地裁(横田信之裁判長)で開かれた。偽造証明書を作成したとされる元係長、上村勉被告(40)が前日に続き出廷。村木被告の指示があったとする供述調書に署名した経緯について「勾留が長引くのが怖かった」などと詳述した。
この日には弁護側が、取り調べ当時に心境などを記した「被疑者ノート」を示しながら尋問。逮捕2日後は村木被告の指示を「認めなかった」と記入していたが、翌日は「責任を上に押しつけた形になってしまう」と揺れ、翌々日には「認めた」と記されていた。
上村被告は当時を振り返り、「上司に言われてやったとした方が世間的には仕方ないと思ってくれるかと思ったが、やはり違うことは違う」と当時の心境を吐露した。
このほか、上村被告は検察側の尋問で、勾留が長引くと思った理由について、平成19年3月と20年3月ごろにも、勝手に大臣印を押した公文書を作成・交付したことを明らかにした。上村被告は「申請はあったが間に合わなくなった。実害はなかった」と釈明した。