2009年7月29日水曜日

【自民党政権】 2009年衆議院選公約

自民公約案(1)…財源と成長・「民主に対抗」鮮明

閣議に臨む麻生首相(28日)=田中成浩撮影
 28日明らかになった自民党の衆院選政権公約(マニフェスト)案は「責任政党」を強調し、地方選連勝や政党支持率上昇で勢い付く民主党への危機感と対抗意識が鮮明になっているのが特徴だ。

 昨年9月の発足以来、景気対策に傾注してきた麻生内閣としての自負ものぞかせた。ただ、27日に政権公約を発表した民主党を意識してか、似通った政策も散見された。

 「日本の『力』が発揮され、すべての人に魅力ある国へ。それを実現する『責任』があります」

 麻生首相(自民党総裁)は政権公約案に寄せたあいさつで強調した。

 自民党は衆院選の論戦で消費税率引き上げや憲法改正など賛否両論ある分野にあえて言及して、民主党の政権公約が財源確保策や外交・安全保障政策などであいまいさを残した点を突く構えだ。政権公約案もその点に力を入れたという。

 「民主党はばらまきだけで、財源収入として入ってくるものがない。自民党は成長戦略で財源をつくり出し、それを分配する。そこが違いだ」

 首相は27日夜、東京都内のレストランで自民党の菅義偉選挙対策副委員長と会談し、民主党の政権公約に経済成長戦略と財政再建への取り組みが欠けているとの見方で一致した。

 自民党の政権公約案では「4度にわたって経済対策を矢継ぎ早に実施」と麻生内閣の取り組みを強調。〈1〉2010年後半に経済成長率2%を実現する〈2〉11年までに経済成長率や失業率などを07年の水準に戻す〈3〉12年以降、安定成長に乗せる――を掲げ、「あと2年間は経済対策に全力を尽くす決意だ」と訴えている。

 一方、財政再建では国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)に関し「今後10年以内に確実な黒字化を」と目標を設定。消費税率引き上げを巡っても「消費税を含む税制抜本改革を11年度から実施できるよう法制上の措置を講じる」とした税制改革の「中期プログラム」に沿って、「経済回復後に見直す準備を進める」と明記、民主党との差を強調した。

自民公約案(2)…自衛隊の海外派遣「当たり前」

 外交・安全保障政策では自衛隊を海外派遣するための恒久法制定を目指す考えを強調、「こんな『当たり前』(なこと)すら躊躇(ちゅうちょ)し、意見集約できない党に、日本の安全を任せられない」と民主党を非難した。

 というのも、民主党の政権公約では、旧社会党出身者らを抱えて自衛隊の海外派遣に慎重論が根強い党内事情を受け、自衛隊について言及がない。自民党は集団的自衛権行使を禁じた政府の憲法解釈の見直しや憲法改正の早期実現も盛り込み、「憲法に足らざる点があれば補う」などの表現にとどめた民主党との違いをここでも明確にした。

自民公約案(3)…世襲・子育て、民主と競い合う
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news1/20090729-OYT1T00059.htm

一方で、自民党の政権公約案には、民主党と競い合う政策も少なくない。

 政治改革の柱となる「世襲」候補の立候補制限を巡っては、世襲議員の多い自民党内では反対論が根強かったが、民主党は既に国会議員の子や配偶者ら3親等以内の親族が同一選挙区から続けて出馬することを禁止する方針を決めている。このため、対抗上、一転して次々回から民主党と同様の制限を行うこととした。

 国会議員定数の削減についても、民主党が衆院比例定数(180)の80削減を打ち出したのに対し、自民党は「次々回から衆院議員定数(480)の1割以上削減、10年後には衆参議員定数(計722)の3割以上削減」を掲げて対抗した。

 子育て支援などでは、両党とも負担軽減策を次々と打ち出している。

 民主党が月額2万6000円の「子ども手当」創設を目玉とした一方で、自民党は今後4年間で、3~5歳児への教育の無償化を唱える。

 授業料などの軽減に関しては、民主党は公立高校生のいる世帯への授業料相当額の助成を盛り込んだのに対し、自民党は高校や大学で低所得者に限った授業料の無償化や、返還義務のない給付型奨学金制度の創設を盛り込んだ。

 自民党の石原伸晃幹事長代理は28日、都内での街頭演説で、政権公約案について、「国民の皆様方が『足りない』というところは十分補っていく。伸ばすべき分野はもっと伸ばしていく」と強調した。

 ただ、自民党の政権公約に最終的に、政策実行にかかる費用や財源が盛り込まれるかどうかは不透明だ。政府の概算によると、幼稚園・保育園の幼児教育の無償化に約7900億円、低所得者の授業料無償化には約229億円(私立高校で年収250万円未満は全額、同350万円未満は半額補助の場合)が必要となる。

 負担軽減策を次々と繰り出せば「ばらまき」批判がつきまとうのは必至だけに、こうした批判をどう払拭していくかが、問われる。(政治部 村尾新一)