2005年5月10日火曜日

【拉致問題】 英科学誌『ネイチャー』(未翻訳)

 時間をみつけてから翻訳をしようと思いながら、ブログを移転しなければならなくなりそうなので、そのままの状態で、アップをしておきます。

 「いつになったら解決するのか」と悲壮な声を上げている。
 その間、日本外交は、拉致問題を解決できなかったばかりか、それに足をとられ、「日本の安全保障にとって最大の脅威」とする北朝鮮の核・ミサイル問題解決に何の役割も果たすことが出来ず、民生を犠牲にして防衛費ばかり天文学的に膨らませてきた。

 この失われた5年の責任は、誰が負うのか。
 家族会など被害者に解決を約束しながら、実際は拱手傍観するだけで成すことが何もないのは、偽善欺瞞と言うべきである。

 その意味で、昨日の参院予算委員会で民主党の石井一委員が、「小泉、安倍のツッパリ路線では拉致問題は解決できない。(8人について北朝鮮が出した)死亡診断書なども日本の基準で考えていては分からない」と小泉、安倍政権時代の対応を辛辣に批判し、福田首相の迅速な対応を促したのは、至極当然のことと言える。
 しかるべき反省と主体的な努力もなく、米国が対話に舵を切ったからと不承不承付き従うだけでは、今後も成果が期待できまい。
 
 拉致問題は、04年の小泉首相の第二次訪朝の時点では解決に向けて動いていた。
 小泉第二次訪朝については家族会が強く反対したが、拉致被害者5人の家族来日が実現したため、日本世論はこぞって歓迎し(各種アンケート調査では訪朝支持が七割以上)、拉致問題は事実上、一件落着するはずであった。
 しかし、第3回日朝実務者協議で日本側の強い求めで夫・金英男氏から横田めぐみさんの「遺骨」が引き渡され、鑑定を受けた後、細田官房長官(当時)が「経験豊かな世界最高権威の鑑定の結果、本人のものではなかったと判明した」とする偽物説を発表し、局面は一変する。

 それを機に安倍・自民党幹事長代理兼拉致対策本部長が、「横田めぐみさんは生きている」「8人全員の返還を求める」と強硬論をかざし、対北朝鮮制裁を主張して世論の喝采を浴び、ポスト小泉の後継首相に収まった。
 それとともに北朝鮮との対話が断絶し、膠着状態に陥り今日に至ったのは周知の通りである。

 しかし、科学的には「遺骨」は偽物とは言えない。

 北朝鮮側は05年1月24日の備忘録で「日本は反朝鮮謀略劇の責任から絶対に逃れられない」と非難し、数度にわたり遺骨返還と謝罪を求めている。

無論、北朝鮮が主張しているから偽物ではないと言う訳ではない。
 当の鑑定をした帝京大医学部法医学教室の吉井富夫講師(当時)が英科学誌『ネイチャー』(05年2月2日付)とのインタビューに応じ、「火葬された標本を鑑定した経験はまったくない。自分が行った鑑定は確定的(not conclusive) なものではなく、サンプルが汚染されていた可能性がある」と、科学性を明確に否定したのである。
 それについて細田長官は「偽の証言だ」と否定した。さらに、吉井氏は警察庁科学警察研究所医科長に「栄転」し、外部との接触を断った。

 すると、『ネイチャー』は同年4月7日号で「Job switch stymies Japans abduction probe(転職は日本の拉致証明を妨害)」と反論し、「遺伝学者の新しいポストはDNA鑑定に関する証言を止めさせるかもしれない」と日本政府の口止め工作を批判した。

 どちらかが嘘を言っているのだが、国際的には、政治家の細田官房長官よりも、権威ある英科学誌『ネイチャー』に軍配を上げるのが圧倒的である。 
 米誌『タイム』(4月4日号)は「吉井氏が用いた分析技法の遺伝子重合酵素法(nested PCR)に疑問点がある。同法は信頼度に問題が多く、米国の法医学研究所では使用しない」と米国のDNA分析専門家の言葉を紹介し、「北朝鮮側は日本政府発表の遺骨鑑定結果に強く反論したが、日本側はその主張に耳を傾けなかった」と批判した。
 
 日本では各メディアに権力からのバイアスがかかり、現在まで偽遺骨説が一人歩きしている。
 『週刊現代』(05年3月19日)が渦中の吉井氏に取材し、「政府からも、警察からも、大学からも、この件についてはコメントするなと止められている。だから話せない」とコメントしたことを報じたが、マスコミからは無視されている。
 某大手紙が吉井氏にインタビューしたとの情報もあるが、いまだに紙面には報じられていない。

 他方、国会では、首藤信彦・民主党議員が同年3月30日に衆院外務委員会で町村信孝外相(当時)に、「警察訓練を受けていない民間人を部所長にするのは異例だ。証人隠しではないか」と質問した。
 だが、町村外相は疑惑に答えなかった。

 野党が少数のときは、国会審議は在って無きが如しであったが、幸いにして先の参院選を境に、伏されてきた情報が開示され、内容ある審議が可能になった。

 福田政権になって北朝鮮との対話が再開し、日本側は拉致問題の再調査を申し入れているが、その実をあげるためにも日本が自ら出来ることをするのが筋ではないか。

 吉井氏の証人喚問を実施し、「遺骨」の鑑定に絡む疑惑を解明する必要がある。そうしてこそ、北朝鮮との交渉に堂々と臨むことができよう。

 人道問題としても、真相解明を妨げ、被害者家族を弄ぶのは今や罪悪と言うべきである。


Job switch stymies Japan's abduction probe
転職(出向)が日本の拉致被害者(遺骨)調査を妨害しています。

David Cyranoski(デイビッド・シラノスキー)
6 April 2005(2005年4月6日)

Geneticist's new post could stop him testifying about DNA tests.
遺伝学者の新しい地位がDNA鑑定についての彼が証言を阻むでしょう。

stymie(邪魔する、妨害する)
Tokyo - A geneticist has landed a plum job at the Tokyo police department,
just weeks after his work rekindled a row over the fate of Japanese citizens abducted by North Korea.

東京発-1人の遺伝学者が、東京警察(警視庁)に栄転(科捜研研究科長)しました。彼の仕事が北朝鮮拉致被害者日本人の運命に騒動を再燃させたわずか数週間後のことでした。

plum(割のいい、望ましい、セイヨウスモモ)

But critics are claiming that the transfer of Tomio Yoshii from Teikyo University to head the forensics unit at the Tokyo metropolitan police department is intended to shield him from enquiries about the accuracy of his DNA tests.
In a fractious parliamentary exchange with foreign minister Nobutaka Machimura on 30 March, Nobuhiko Suto, a member of the opposition Democrat Party of Japan, suggested that the government had used its influence to plant Yoshii in his new position.

しかし批評能力がある人々は、吉井富夫氏の帝京大学から東京都警科学捜査研究所長への移転は、吉井氏のDNA鑑定の精度に関する問い合わせから彼を守るために計画されたと主張しています。
野党日本民主党の首藤信彦議員は3月30日の町村信孝外務大臣との議会での激しいやりとりのなかで、日本政府が吉井氏を新しい地位に移すよう影響力を行使したとほのめかしました。

forensics(科学捜査、法医学)
fractious(手に負えない、気難しい、むずかる)

The Japanese government has claimed that Yoshii's DNA analysis proves beyond doubt that cremated remains provided by the North Korean government late last year were fromsomeone other than Megumi Yokota -a Japanese
woman kidnapped by North Korea in 1977. Japan has been demanding a full
account of the fate of Yokota and several others who were allegedly
kidnapped.

日本政府は吉井氏のDNA分析は、昨年北朝鮮から提供された遺骨が1977年北朝鮮に拉致された横田めぐみ氏とは別人のものであると間違いなく証明していると主張してきました。日本は横田氏、他の拉致されたと言われている数名の消息の十分な説明を求めています。

beyond doubt(間違いなく、疑問の余地なく)

But in an interview with Nature, Yoshii has conceded that his results
could have been the result of contamination (see Nature 433, 445; 2005).
Japanese government officials have disputed the Nature article, claiming
that Yoshii says he was misquoted. A documentary film-maker from Australia,
a South Korean broadcasting company and other reporters have since sought,
without success, to interview Yoshii.

しかし吉井氏は「Nature」とのインタビューで彼の(DNA鑑定)結果は、コンタミネーション(汚染)に基づいた結果でありうることを認めました。(「Nature」433号 445ページ2005年参照して下さい)。日本政府高官達は、吉井氏は彼のの発言が間違って引用されたと言っていますと主張し、「Nature」記事に反論しました。以ずっと、オーストラリアのドキュメンタリーフィルム制作者、韓国の放送会社、その他のリポーターが吉井氏にインタービューを試みたが成功していないのです。

government official(政府高官)

★科学誌「Nature」が横田めぐみさん「ニセ遺骨」に関する記事-火葬された遺骨は誘拐された少女の運命を証明できない?
http://www.asyura2.com/0502/war67/msg/141.html

Suto says he wants Yoshii to testify on the matter before parliament's foreign affairs committee. But in Yoshii's new position with the police force, he can only appear if his employer agrees -an arrangement that Suto says is being used as an obstacle. During the 30 March debate, Suto told Machimura that it was "surprising" that "a civilian without real
police training" should suddenly obtain a top position in the police department. "Isn't this just hiding a witness?" Suto asked.

首藤(議員)は吉井氏にこの件に関し(衆議院)議会外務委員会で証言して欲しいと言います。しかし吉井氏の警察の新しい地位においては、彼の雇用主(警視庁)が、ある手続き(首藤議員によれば障碍)に同意しないかぎり出席できません。30日間の議論で首藤議員は町村(外務大臣)に「一民間人のおよそ警察的な訓練を受けていない人」が突然、警視庁のトップの地位に就くというのは「驚き」だと言いました。首藤(議員)は「これは証人隠しじゃないですか」と尋ねました。

Yoshii's results were taken as conclusive by the government despite
contrary reports from the National Research Institute of Police Science
in Chiba, which found that no DNA could be gleaned from the remains. "If
we are going to take the word of a single academic at a private university
over that of this huge research institute, shouldn't we just get rid of the
institute?" Suto asked Machimura.

吉井氏の(DNA鑑定)結果は日本政府によって確定的なものとして受け止められました。遺骨からはDNAは検出できなかったと判明した千葉(柏市)の科学警察研究所からの報告と正反対にもかかわらずです。「この巨大な研究機関の報告を越えて、一私学の一研究者(吉井元講師)の言葉を受け入れるのであれば、研究機関(科警研)は廃止したらいいじゃないですか」と首藤(議員)は町村(外務大臣)に質しました。

glean(収集する、落穂拾い)

Machimura called Suto's scepticism "an insult" and said that the ministry
had taken the investigation seriously. "We were not just trying to pull
out some predetermined conclusion," he protested. "I wish you would choose
your words more carefully." Suto still plans to call Yoshii to testify, and
says he will get to the bottom of why the government set so much store by
Yoshii's results. "If Japan keeps going in this direction," he warns, "it
will undermine its scientific reputation."

町村(外務大臣)は首藤(議員)の懐疑主義を「侮辱」と呼び、内閣は調査に真剣に取り組んできたと述べました。彼(町村外務大臣)は「私どもは、何の予断も持たずに、あらかじめどういう結論を引き出そうとしたわけではございません」と抗議しました。「よく慎重に言葉を選んで御発言をいただきたいとお願いをいたします」(と)。首藤(議員)は更に吉井氏に証人喚問要求を計画し、なぜ政府が吉井氏の(DNA鑑定)結果からあんな(逆方向の)結論を出したのか、真相を究明すると首藤氏は言います。彼(首藤議員)は「もしも日本がこの方向に進み続けるなら、日本の科学の評価(一般)の土台から侵食していきます」と警告します。


get to the bottom of(真相を究明する)
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前号の首藤議員の<私は、日本の名誉のために、国会議員として真実を明らかにしなければいけないと。 私は、別に政府を批判しているんじゃないんですよ。真実はどこにあるのか。真実を確証できるならば、証拠があるなら、もう一度確証したらどうですか、そういうことを言っているわけですよ。それは、ですから外務大臣、まさに同じ言葉をお返ししたいと思います。 残念ながら時間になりましたけれども、私は、この問題を明らかにしなければ必ず国際社会の場で日本が再度たたかれることになる、したがってやはりこの問題はしっかりして先へ進んでいきたい、そういうことを切に切にお願いして、質問を終わります>の通り、4月6日「Nature」
http://www.melonpan.net/letter/backnumber_all.php?back_rid=361286
が「科学誌」にも関わらず、というか日本政府が科学を「愚弄」しているが故に3回目の記事を「終に」発表しました。記事の最終部分にあるようにこの問題を放置しておくと日本の科学「一般」の評価を貶める、すなわち、この問題に知っていて軽視、沈黙している日本の「科学者」とやらは、私立、国立、民間を問わずエセ「科
学者」であり、この記事に気づいた科学者が他の科学者に日本政府の科学を愚弄する暴挙を知らせて、何らかの手立てを取るべき「大問題」で、科学者の「社会的責任」を果たさなければいけないでしょう(既に取っているかもしれませんが)。

前号で<外務省のスポークスマンは、遺骨がDNA鑑定で消費されたので再鑑定する方法がないと言います。横田めぐみ氏の父、横田滋氏は、DNA鑑定を取巻く問題をまったく理解していないのではなく、「日本が現在北朝鮮との交渉で愚かに見える」ということに怒っていますと「TIME」誌に語りました>となっているにも関わらず、自公
http://www.melonpan.net/letter/backnumber_all.php?back_rid=361286
広報戦犯NHKラジオは、昨日、本日も北朝鮮の遺骨引渡し段階での疑わしさを根拠に横田夫妻が北朝鮮への制裁を求める声を報道したままであり、「まっすぐ、真剣。NHK」という番組まで報道した「らしい」のは、許しがたい暴挙であって、自公政権の
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/nhk/
横暴もこれ以上許してはならいでしょう。「派兵差止訴訟全国弁護団有志による「アンマン訪問団」、帰国直後の概要報告」の池住義憲氏の<3月29日夜のパレスチナの人たちとの語らいの中で、「ヨルダンの民主主義の度合いは60パーセント。一方、日本は選挙制度や集会・結社・表現の自由など進んだ民主主義の国なのに、なぜ米国に追従・加担する人たち(議員)を選ぶのですか?」との問いかけがありました。
私が通訳をしていて心を動かされた瞬間の一つです>とまではいかないまでも、自公
http://university.main.jp/blog2/archives/2005/04/post_897.html
政権、新聞、テレビが腐っていることを「前提」にしても、日本列島住民の力量で米国追従をさせないための働きかけが「可能」である以上に「Nature」記事(及びDNA鑑定)の問題は、もっと容易に日本政府(自公政権)の異常さを暴く、止めさせることは可能なはずです。

It has frequently been noted that the surest result of brainwashing in
the long run is a peculiar kind of cynicism, the absolute refusal to
believe inthe truth of anything, no matter how well it may be
established. In other words, the result of a consistent and total
substitution of lies for factual truth is not the lie will now be
accepted as truth, and truth be accepted as lie, but, that the sense
by which we take our bearings in the real world-- and the category of
truth versus falsehood is among the mental means to this end-- is being
destroyed(Hannah Arendt).
www.tompaine.com/feature2.cfm/ID/3169

洗脳の最も確実な最終的な結果としてよく指摘されるのは一種の冷笑主義になること、つまりあらゆることに対して、たとえその根拠がいかにしっかりしていようとも、そこに真実があるとは絶対に信じたくなくなることだ。事実に対して一貫してかつ全面的に嘘を置きかえれば今度はその嘘が真実としてうけいれられ、そして真実が嘘だと中傷されるようになるのではない。それよりも、われわれが現実の世界に自分の位置付けを確かめる感覚(そして真実対嘘という範疇がその目的の知的な方法の一つなのだが)自体が破壊されることになる
のだ(ハンナ・アーレント)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622020181/
http://www.melonpan.net/letter/backnumber_all.php?back_rid=333840
といった状況を抜け出すために、「政治 政治学から「政治界」の科学へ ピエール・ブルデュー」の解説<政治的代表委任制が必然的に孕む簒奪の契機、すなわち受任者がみずからの権威を得るおおもとの委任者を疎外し権力を簒奪する構造が鋭く抉出されている。代表委任制あるいは表象のアポリアである。
となると表象を、象徴を、代表制を廃棄すべきなのか? ブルデューはそうは考えない。重要なのは介入である。つまり代理表象(代表)の自閉構造を批判的に分析した上で、代表者の自己正当性は被代表者からの承認に存することを思い起こすこと、そして代表者がこの承認に及ぼす象徴権力の暴力性を個別的・批判的に分析し、被代表者の尊重へ可能な限り連れ戻すことである。代表制の正当性の根拠を忘れて代理表象の構造的暴力に居直ったり、また代理表象を厄介払いしたりそこから逃走することは、権威主義、前衛主義、破壊主義、純粋主義、シニシズムでしかない。正当化の原理は、突き詰めれば、自己以外の場あるいは他者へと絶えず自己を開こうする努力以外にはない。これは代理表象のアポリアを嫌悪したり居直ったりせずに、真にそのアポリアを引き受ける
ことである>にあるように、代表委任制なり、新聞、テレビを「キチン」と機
http://www.fujiwara-shoten.co.jp/book/book466.htm
能させるためのチャンスが到来しているわけです。「あえて」書いておけば、
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200504091813290000099632000
今回の問題は、自公政権が「崩壊」するネタにも関わらず、外務省職員射殺事件に類し、野党(民主党の大半、共産、社民)も熱心でないことを「前提に」に「介入」していった方が良さそうです。

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