小沢一郎インタビュー(マスコミで「巨悪」のイメージを作られてしまった小沢だが、田中角栄直系の良質な保守である。
宮崎 あれはどういう判断だったんですか。
小沢 たぶん負けることは分かってたんだと思いますよ。だけど岡田君や枝野君や前原君達は、みんなやれでしょ。彼らはもともと自民党とやりたかったんじゃないですか。
宮崎 自民党と連立を?
小沢 そう。だから、若い連中はもうみんな死ね、残った連中でやると。それで、自民党はたぶん過半数取れないだろうから自民党と連立を組む。というのが、彼らの考えだったという人がいるが、確かにそうかもしれない。そうでなきゃ解散なんてあり得ないもの。
宮崎 ということは、今回のちょっと意味不明みたいな解散は、野田さんの決断の背景にあったのは、反小沢グループの生き残り策ということなんですね。
小沢 どっちみち解散が年明けになったって負けるだろう、でも自民党もたぶん過半数は獲れないだろう、という中でやったということでしょうかね。
宮崎 (20数%で70%近い議席をとる小選挙区制の問題点を指摘)。
小沢 だけど次の選挙でまた変わりますよ。そういうふうにつくったんだから。
宮崎 小選挙区制をですか?
小沢 そういう選挙制度にしたんですよ。1党で権力を持ち続けるのはいけない。
政権与党がいい加減な政治をすればいつでも野党にとって代わられる。そういう緊張感の中で、政党がお互いに競い合って良い政治を実現する。それが民主主義だということです。だから、ちょっとの得票でもって政権交代できるようにと。その中でだんだん大人になっていけばいいと。
小沢事件の検察捜査については次のように述べている。
「完全に政権交代を防ぐためでしょうね。
阻止するためです。
それ以外に民主主義社会で選挙の5、6ヵ月前に野党の第一党の党首を何の証拠もなしにやるなんて言うことはありえないことです。
民主主義が成熟していないほとんど独裁国家のやることだ」
「青年将校の暴走というのは実は彼らのカムフラージュで、結局、法務・検察全体の意思だと思う。
そうでなきゃできっこない」
「彼らは私を有罪にしたかったんだろうけど、無罪になってしまった。
しかし、結局彼らは成功したんですよ。
だって、3年半も私の行動を束縛できたんですから。
その間に民主党はダメになっちゃったんだから。
恐るべきことですよ。国家権力というのは」
「日本においては、政治家はまったく権力を持っていないですね。
権力を持っているのは、みんな官僚です。
それはシステムがそうだということと同時に、やっぱり資質の問題があります。政治家の資質であり、それはイコール国民の資質です。残念ながらこのレベルが低い。
私に言わせると、自立していない国民が選んだ自立していない政治家だから、役人の権力集団に勝てない」
「イギリスでは、テロが頻発した結果、警察がものすごく強くなっていったわけですが、そうした中で、ある国会議員が十分な根拠もないまま逮捕されました。
その際、英国議会では与野党がすぐ警察に抗議して、結局警察はこの議員を釈放せざるを得なくなったということがありました。
そういう意味で、政治家が見識を持ち、民主主義を理解し、それを国民が支持することが大切なのです。
しかし日本の国民はまだそこまできていません。
自立していないですね、日本人というのは」
「いま永田町では「小沢一郎は終わった」「小沢一郎の時代ではない」という声があるがどう思うか」と聞かれて次のように応えている。
「日本にはまだ民主主義が根付いていない。
日本にはまだ形だけの民主主義しかない。
民主主義の基本的な機能は「政権交代」です」
「国民にも、「政権交代はもうない」と思っている節があります。
でも、いまの状態は、あの2003年に自由党と民主党が合併する前の状態に戻ったようなものです(合併当時の衆院勢力は民主114、自由22)。
必ずしも政界再編に議員の数は必要ない。
要は政策の意思決定が明確で、国民に対して正しいメッセージを訴えることができればよいのです」
「私は、安倍政権はそう長く続かないと見ています。
今のうちに自民党に代わる受け皿をつくっておかないと、日本の政治は究極の大混乱に陥ってしまう」
「次の衆議院選挙の結果、再びいまのようなかたちで自民党政権が続き、野党がバラバラの状態だったら、日本には議会制民主主義が永久に定着しない恐れがある。
自民党のごたごたが行き着くところまで行き、日本は大混乱に陥ります」
「政権与党が少しでも油断すれば政権交代が起こりやすい制度にしたわけです。
かつての自民党も民主党も、国民の期待を裏切る政治をしたので、政権交代が起きた。
第2次安倍政権の政策が国民のための政治ではないと気づかれたら、また自民党政権を失うでしょう。
だから、我々を含め、野党の政治家がしっかりしていれば、3度目の政権交代は決して不可能なことではありません」
「新しい受け皿ができたと国民が感じるのは、数の多少ではありません。
そこに国民が納得できる政策、政治思想が備わっているかどうかが重要です。
かつての自由党も民主党に合流した時は30人にも満たない国会議員しかいなかった。
当時、我々が政権を取るとは誰も思っていなかった。だから、いまの状況は、あの時期にもどったと考えればいい」
「参院選後の早い段階で、安倍政権は持たなくなると思う。
安倍政権の政策では、いつまでたっても国民の生活が良くなりませんからね。
アベノミクスの行き詰まりがはっきりすれば、期待していた国民の数が多いだけに、左記の民主党と同様、自民党に対する国民の失望は大きなものになる。
「自民党には任せられないから、野党はまとまるべきだ」という国民からの声が必ず湧き上がってくる」
70歳の小沢はいまだ政権交代に執念を燃やしているのだ。
小沢の「志」は受け継がれていくだろう。