2013年1月27日日曜日

Atlantic Charter


The President of the United States and the Prime Minister, Mr. Churchill, representing His Majesty's Government in the United Kingdom, have met at sea.
They have been accompanied by officials of their two Governments, including high-ranking officers of their Military, Naval, and Air Services.
The whole problem of the supply of munitions of war, as provided by the Lease-Lend Act, for the armed forces of the United States and for those countries actively engaged in resisting aggression has been further examined.
Lord Beaverbrook, the Minister of Supply of the British Government, has joined in these conferences. He is going to proceed to Washington to discuss further details with appropriate officials of the United States Government. These conferences will also cover the supply problems of the Soviet Union.
The President and the Prime Minister have had several conferences. They have considered the dangers to world civilization arising from the policies of military domination by conquest upon which the Hitlerite government of Germany and other governments associated therewith have embarked, and have made clear the stress which their countries are respectively taking for their safety in the face of these dangers.
They have agreed upon the following joint declaration:
Joint declaration of the President of the United States of America and the Prime Minister, Mr. Churchill, representing His Majesty's Government in the United Kingdom, being met together, deem it right to make known certain common principles in the national policies of their respective countries on which they base their hopes for a better future for the world.
First, their countries seek no aggrandizement, territorial or other;
Second, they desire to see no territorial changes that do not accord with the freely expressed wishes of the peoples concerned;
Third, they respect the right of all peoples to choose the form of government under which they will live; and they wish to see sovereign rights and self-government restored to those who have been forcibly deprived of them;
Fourth, they will endeavor, with due respect for their existing obligations, to further the enjoyment by all States, great or small, victor or vanquished, of access, on equal terms, to the trade and to the raw materials of the world which are needed for their economic prosperity;
Fifth, they desire to bring about the fullest collaboration between all nations in the economic field with the object of securing, for all, improved labor standards, economic advancement, and social security;
Sixth, after the final destruction of the Nazi tyranny, they hope to see established a peace which will afford to all nations the means of dwelling in safety within their own boundaries, and which will afford assurance that all the men in all the lands may live out their lives in freedom from fear and want;
Seventh, such a peace should enable all men to traverse the high seas and oceans without hindrance;
Eighth, they believe that all of the nations of the world, for realistic as well as spiritual reasons, must come to the abandonment of the use of force. Since no future peace can be maintained if land, sea, or air armaments continue to be employed by nations which threaten, or may threaten, aggression outside of their frontiers, they believe, pending the establishment of a wider and permanent system of general security, that the disarmament of such nations is essential. They will likewise aid and encourage all other practicable measures which will lighten for peace-loving peoples the crushing burden of armaments.
FANKLIN D ROOSEVELT
WINSTON S CHURCHILL
(The Ministory of Foriegn Affairs "Nihon Gaiko Nenpyo Narabini Shuyo Bunsho : 1840-1945" vol.2,1966)

大西洋憲章

(一九四一年八月十四日大西洋上ニテ署名)
アメリカ合衆国大統領及ヒ連合王国ニ於ケル皇帝陛下ノ政府ヲ代表スル「チャーチル」総理大臣ハ会合ヲ為シタル後両国カ世界ノ為一層良キ将来ヲ求メントスル其ノ希望ノ基礎ヲ成ス両国国策ノ共通原則ヲ公ニスルヲ以テ正シト思考スルモノナリ
  • 一、両国ハ領土的其ノ他ノ増大ヲ求メス。
  • 二、両国ハ関係国民ノ自由ニ表明セル希望ト一致セサル領土的変更ノ行ハルルコトヲ欲セス。
  • 三、両国ハ一切ノ国民カ其ノ下ニ生活セントスル政体ヲ選択スルノ権利ヲ尊重ス。両国ハ主権及自治ヲ強奪セラレタル者ニ主権及自治カ返還セラルルコトヲ希望ス。
  • 四、両国ハ其ノ現存義務ヲ適法ニ尊重シ大国タルト小国タルト又戦勝国タルト敗戦国タルトヲ問ハス一切ノ国カ其ノ経済的繁栄ニ必要ナル世界ノ通商及原料ノ均等条件ニ於ケル利用ヲ享有スルコトヲ促進スルニ努ムヘシ。
  • 五、両国ハ改善セラレタル労働基準、経済的向上及ヒ社会的安全ヲ一切ノ国ノ為ニ確保スル為、右一切ノ国ノ間ニ経済的分野ニ於テ完全ナル協力ヲ生セシメンコトヲ欲ス。
  • 六、「ナチ」ノ暴虐ノ最終的破壊ノ後両国ハ一切ノ国民ニ対シ其ノ国境内ニ於テ安全ニ居住スルノ手段ヲ供与シ、且ツ一切ノ国ノ一切ノ人類カ恐怖及欠乏ヨリ解放セラレ其ノ生ヲ全ウスルヲ得ルコトヲ確実ナラシムヘキ平和カ確立セラルルコトヲ希望ス。
  • 七、右平和ハ一切ノ人類ヲシテ妨害ヲ受クルコトナク公ノ海洋ヲ航行スルコトヲ得シムヘシ。
  • 八、両国ハ世界ノ一切ノ国民ハ実在論的理由ニ依ルト精神的理由ニ依ルトヲ問ハス強力ノ使用ヲ抛棄スルニ至ルコトヲ要スト信ス。陸、海又ハ空ノ軍備カ自国国境外ヘノ侵略ノ脅威ヲ与エ又ハ与ウルコトアルヘキ国ニ依リ引続キ使用セラルルトキハ将来ノ平和ハ維持セラルルコトヲ得サルカ故ニ、両国ハ一層広汎ニシテ永久的ナル一般的安全保障制度ノ確立ニ至ル迄ハ斯ル国ノ武装解除ハ不可欠ノモノナリト信ス。両国ハ又平和ヲ愛好スル国民ノ為ニ圧倒的軍備負担ヲ軽減スヘキ他ノ一切ノ実行可能ノ措置ヲ援助シ及助長スヘシ。
  • フランクリン・ディー・ローズヴェルト
  • ウィンストン・チャーチル

2013年1月22日火曜日

バックエンド総事業費



バックエンド総事業費約19兆円とは?

バックエンドとは、原子力発電が終わった後に生じる後始末に関わる部分。

約19兆円というのは、電気事業連合会が2003年11月11日に開かれた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電気事業分科会の小委員会に報告した数字。

六ヶ所再処理工場を40年動かすとして、その建設・操業費と、工場の廃止措置(2078年まで)が合わせて約11兆円。海外からの返還分も合わせた高レベル廃棄物の貯蔵および処分、輸送、中間貯蔵など他の「バックエンド」事業も合わせた総額が約19兆円との計算。

六ヶ所で再処理されると想定されているのは、2004年度までに生じている1.4万トンと2005年度から2036年度までに生じる分のうちの1.8万トン(残りは中間貯蔵)の使用済燃料。この合計3.2万トンを2046年度までの40年間で再処理するとの想定(年間800トン)。2046年度までに中間貯蔵が3.4万トン生じる計算。

業界 18兆8000億円と試算  
 負担の合意形成が課題

 核燃料サイクル政策の見直し論で焦点となっているのがバックエンド費用の取り扱いだ。電気事業連合会の試算では十八兆八千億円。このうち約十兆円は既に電気料金で回収する仕組みができているが、残る約九兆円の回収の仕組みづくりはこれからである。いずれにせよ、その大半は国民の負担が避けられず、徹底した論議が求められる。

 試算は、再処理工場が二〇〇六年から四十年間運転することを前提に、その後に解体・処分に必要な七八年ごろまでの期間が対象。内訳は、再処理工場の操業や廃止などが十一兆円と最も多く、次いで再処理した際に出てくる高レベル放射性廃棄物の輸送・処分が二兆七千四百億円。プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料の加工工場の操業や廃止で一兆千九百億円、使用済み燃料の中間貯蔵も一兆百億円かかると算定された。

 再処理関連だけで十一兆円もかかることから、次期長計の策定に当たっては、米国などのようにウラン燃料を一回しか使わずに処分するワンススルー方式も検討すべきだという「柔軟路線」への変更を求める声が出ている。

 ただし、ワンススルー方式にも多くの欠点がある。再処理では廃液をガラス固化した高レベル放射性廃棄物を地中深く埋めるが、使用済み燃料をそのまま処分するとなると容量が大きいため、処分コストが高くつき、処分場の選択も難しくなる。放射能レベルもガラス固化体より強い。

 さらに、一回の使い捨てだとウラン資源が約六十年しかもたないため、最低でも千年単位で動かせる高速増殖炉を中心とした核燃料サイクルと比べてエネルギーの安定供給に不安を抱える。

 一方、バックエンド費用で鍵を握るのが費用負担の問題である。十八兆八千億円のうち、既に十兆千億円については電力会社が引当金制度を設け、電力料金から回収する仕組みがあるが、残る八兆七千億円については制度が未整備だ。

 これについて、経済産業相の諮問機関である総合エネルギー調査会が現在、費用負担の枠組みづくりを検討中。年内にはまとまる見通しだ。

 今月二十二日に開かれた同調査会電気事業分科会では、MOX燃料の加工費など約四兆円は燃料コストに当たるとして除外し、残る約五兆円について家庭に負担してもらう仕組みを了承した。

 試算では標準世帯で月額約五十円程度の負担増となる。これまで制度化されていた分も合わせると、バックエンド費用全体の国民負担額は月額約百七十円という。
 ただ、これもあくまで現時点での想定だ。

 再処理工場の建設費が当初計画の三倍に膨れ上がったように、費用が今後、さらにかさんで国民負担が増す可能性があると指摘する声もある。



原子力発電の後処理(バックエンド)費用(電気事業連合会)
事業内容 費用(兆円)
再処理工場の操業や廃止など 11.00
海外から返還される高レベル放射性廃棄物の輸送や貯蔵など 0.30
海外から返還される低レベル放射性廃棄物の輸送や処分など 0.57
海外返還分以外の高レベル放射性廃棄物の輸送や処分など 2.74
再処理・MOX燃料工場などで発生する超ウラン元素(TRU)の地層処分 0.81
使用済み燃料の輸送 0.92
使用済み燃料の中間貯蔵 1.01
MOX燃工場の操業や廃止など 1.19
ウラン濃縮工場の後処理 0.24
合計 18.80
【注】端数処理の関係で合計は合わない
出典:業界18兆8000億円と試算 負担の合意形成が課題 中国新聞2004年5月30日

再処理の費用は最初はどのくらいと考えられていたか。

ゼロ。

回収されたウランとプルトニウムの価値が大きく、それによって再処理費用はまかなえると考えられていた。だから料金原価上も再処理費用を費用の中に入れていなかった。それが途中で、再処理費用の方が回収核物質の価値を大きく上回ることが分かって、あわててこの費用を電力消費者から取り立てることにしたと次の文書にある。

電気事業審議会料金制度部会中間報告(1981年12月2日「原子力バックエンド費用の料金原価上の取扱いについて」(pdf)
【問題の所在】

原子力バックエンドのうち、使用済核燃料の再処理は、減損ウラン及びプルトニウムの回収と高レベル放射性廃棄物の分離、凝縮との両面の性格を併せ持っている。現在の電気事業会計は、回収されるウラン及びプルトニウムの価値により再処理費用を賄えるという前提に立って設定されており、料金原価上も、再処理費用を費用とせず、資産としてレートベースに算入することとしている。しかしながら、最近に至って再処理費用が回収されるウラン及びプルトニウムの価値を大幅に上まわることが明らかになってきており、現行の取扱いを継続していくことは、電気の消費者の世代間の負担の不公平を招くという問題が生ずる。したがって、現行の取扱いの改善につき検討が求められている。また、再処理費用以外の原子力バックエンド費用についても、将来確実に発生することが明らかであるので、これについても将来の消費者に負担させることの適否が問題となっており、同様に検討が求められている。

【結論】

(1) 原子力バックエンド費用のうち、高レベル放射性廃棄物のガラス固化費用を含む使用済核燃料の再処理費用については、炉内で燃焼している時点で引当金を積立てる方式により、料金原価に算入することが適当である。なお、引当金方式の採用に伴い、企業会計及び税制上の取扱いとの整合性が図られることが望ましい。

(2) 放射性廃棄物の処分及び廃炉の費用については、現時点では、処分方法等につきなお不確定な要素が多く、将来の費用を合理的に見積もることが困難であるので、引続き内外の事態の推移を見極めながら、その取扱いを検討していくことが適当である。

六ヶ所再処理工場の建設費は?

1999年日本原燃は、建設費の見積もりをそれまでの「1兆8,800億円」から「2兆1,400億円」に変更した。1989年に事業許可申請が出されたときの建設費見積もり額は7600億円だった。


工事費について

ア.総工事費

 再処理工場の総工事費については、現在の「1兆8,800億円」から「2兆1,400億円」に変更します。

バックエンドが問題になってきたのは?

18.8兆円のうち、六ヶ所再処理工場建設・操業費や高レベル廃棄物処分費用などの10.1兆円については回収する仕組みがあったが、工場の廃止措置費用など残りの8.7兆円を誰がどう負担するかが問題になった。

東奥日報2004年7月3日(土)

核燃料直接処分は再処理の半分以下/政府が試算を公表せず

 原発から出る使用済み核燃料を地中深く直接埋めて捨てれば、再処理方式に比べて半分以下と大幅に安くなるとの政府試算がありながら、公表していなかったことが二日明らかになった。核燃料サイクル見直し論議が高まるのを政府が恐れたためとみられる。重要な情報開示を怠っていたことで、核燃サイクル政策の是非を検討する原子力委員会の議論にも影響を与えそうだ。

 試算は一九九四年と九八年に実施し、再処理方式が直接処分方式の二―四倍割高となる。当時の議論で電力会社側が「割高との試算が公表されると、サイクル事業が成り立たなくなる」などと主張。政府は、今年三月の国会でも「試算はない」と答弁していた。

 経済産業省資源エネルギー庁は二日、試算があったことを認め、原子力委員会に資料を提出することを明らかにした。

 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)は六月、再処理の総費用は十八兆八千億円との試算をまとめており、一部は電力料金に上乗せする計画。

 三月の参院予算委では、直接処分の費用に関する福島瑞穂(ふくしま・みずほ)社民党党首の質問に、日下一正(くさか・かずまさ)資源エネルギー庁長官(当時、現経済産業審議官)が「再処理しない場合の試算はない」と答弁した。

 これについて日下審議官は二日、「試算があることは知らなかった」と述べた。エネ庁の柳瀬唯夫(やなせ・ただお)原子力政策課長は「当時の経緯は分からないが、議論は非公開なので、公表しなかったのは不思議ではない」としている。

 九八年三月に通産省(当時)の外郭団体、財団法人原子力環境整備センター(同)が行った試算は、直接処分の場合は約四兆―六兆円、再処理後に処分する場合は約三・四兆―五兆円としている。処理期間など前提条件は違うが、現在、再処理工場の操業や解体などのコストとされている約十一兆円を加えると、再処理方式は十四・四兆―十六兆円となり、直接処分の二―四倍程度になる計算だ。

 ◇

重大な問題

 鹿内博県議(無所属) 試算しておきながら政府が公表をしなかったことは重大な問題である。再処理ありきの前提で、政策の選択肢の提示を意図的に抑えてきたことになる。情報がきちんと示されていない以上、六ケ所再処理工場のウラン試験は実施すべきでない。

 ◇

推進変わらず

 滝沢求自民党県連政調会長 核燃サイクルを推進する立場に変わりはない。このたびの報道に関しては事実関係が分からないのでコメントしようがない。


バックエンド措置についての電力会社の言い分は?

既に原発の電気を使った顧客が、2005年から本格化する電力自由化のために、特定規模電気事業者(PPS=Power Producer & Supplier)から電気を買うようになった場合に、その顧客から既発電分について回収しておくべきだった分をどうやって回収するかが問題になるから、制度を完備する必要があったというもの。

原子力事業本部原燃計画グループ
 チーフマネジャー 小田英紀

原子力発電の「バックエンドコスト」に注目が集まっている。原子燃料を繰り返し有効利用するリサイクル路線を堅持する一方、電力市場の自由化も加速度的に進むなか、バックエンドコストは誰が、どのように負担すべきなのか──原子力事業本部原燃計画グループの小田英紀・チーフマネジャーに訊いた。

──そもそも「バックエンド」とは何か? //////////
バックエンド(後処理)とは、原子力発電所でウラン燃料を燃やした後の工程のこと。使用済み燃料を再処理し、燃え残ったウランや新たに発生したプルトニウムを取り出してMOX燃料に加工したり、再処理工場などから出る放射性廃棄物を処理処分したりすることをいう。
これらの工程全般を指して「バックエンド」と呼ぶが、実際の工程は発電後すぐに行えるものではないし、短期間で終わるものでもない。例えば使用済み燃料は再処理前に数年間の冷却期間が必要だし、高レベル放射性廃棄物は最終処分までに30~50年間冷却して放射能レベルを下げる。さらに最終処分(地層処分)した後も、何十年間もモニタリングする。つまりバックエンドとは、100年オーダーの長々期にわたる事業だということをまず知ってほしい。

──そのバックエンドコストとして電気事業連合会は2003年末、再処理工場を40年間運転した場合、総額約18.8兆円が必要との試算を公表した。非常に莫大な費用という印象だが? //////////
18.8兆円という数字は、再処理工場やMOX燃料加工工場の操業費から、これらの工場が運転終了した後の廃止措置に関わる費用、さらにはその際に発生する放射性廃棄物の処分費用まで、バックエンド事業全般を網羅したもの。これらの中には、今までの電気料金に含まれていたものもあれば、含まれていなかったものもある。確かに巨額だが、今後「新たに」18.8兆円必要ということではない。今回改めてバックエンドコストを──これまでにプールしたものも、していないものも含めて──全部積み上げたら18.8兆円かかる計算になった、ということだ。

──具体的には、今までの電気料金には何が含まれており、何が含まれていなかったのか? //////////
代表的なものを挙げると、含まれていたのは、使用済み燃料の再処理費用、高レベル放射性廃棄物の最終処分費用など。これらは再処理引当金制度や、NUMO法(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)に基づく積立金制度に則り、電気料金に織り込まれている。一方、含まれていなかったものには再処理工場の廃止措置費用や、TRU廃棄物(超ウラン核種を含む放射性廃棄物―燃料集合体の被覆管など)の処分費用などがある。
バックエンド事業は非常に長期にわたるため、不確定要素も多い。だからこれまでは見積が可能なものから、あるいは制度の整ったものから、順次電気料金に織り込むという方法でやってきた。結果、本来は過去の電気料金に含まれるべき費用も、未回収になってしまっているものもある。

──その「未回収分」はどうするのか? 電気料金に上乗せされるのか? //////////
未回収分がどれくらいあり、どのような措置を講じるかは、今後、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会電気事業分科会で議論されることになっており、現時点では未定だ。ただ、電事連としては、自由化範囲の拡大に伴い、過去に原子力発電による電気を使用したお客さまから回収することが現実的には不可能となるため、これまで原子力の恩恵を受けてきた国民の方々に「広く薄く」負担していただきたいと主張している。

なぜなら未回収分とは「過去の発電」に起因するコスト。つまり自由化拡大以前の、すべてのお客さまが原子力発電所でつくった電力会社の電気をお使いいただいていた時点で、本来回収させていただくべきだったものだ。合理的見積もりができない等の理由により、電気料金として回収することが適当でなかったため回収が遅れてしまったが、だからといって電力会社のお客さまだけから回収したのでは、新規参入者に乗り換えたお客さまが過去に使った電気のコストを、一般家庭など自由化対象外のお客さまに強いることにもなりかねず、公平性を損なう。従って過去の発電に起因する未回収分だけは、なんらかの形で「広く薄く」国民のみなさんにご負担いただきたいと考えているのである。ただ、広く国民のみなさんにと言っているのは、あくまで自由化拡大以前の発電に起因する部分で、18.8兆円のすべてではない。

また、エネルギーセキュリティや環境適合性といった原子力のメリットは、特定地域や特定のお客さまだけでなく、国民誰もが享受しており、その意味でも「広く薄く」負担していただくことが公平性に適っている。

──ただ、それでは国民は、未回収分を負担したうえ、さらにバックエンドコストを上乗せした高い電気を買うことになる。そもそも原子力は経済優位性もメリットのひとつだったはずだが、その優位性が崩れるのでは?

そんなことはない。実際、今回のバックエンドコスト試算と同時に電源別の発電原価も試算したところ、運転年数40年、割引率3%の場合、原子力は5.3円、石炭火力が5.7円、LNG火力6.2円、石油火力10.7円(いずれもkWh当たり)。発電所建設コストの低減などもあり、前回試算の5.9円よりさらに安くなる。確かに石炭火力との差は接近しているが、長期的に見れば依然として最も割安な電源といえる。
もちろんこの5.3円は、バックエンドコスト0.81円を含んだ数字。0.81円の中には、これまで電気料金に含まれていなかった再処理工場の廃止措置費用なども入っている。つまりバックエンドコスト18.8兆円の項目をほぼ網羅して、これを織り込んだ発電原価が5.3円だ。従って巷間囁かれている「バックエンドコストを加味すれば割高になる」というのは間違い。バックエンドコストを含めても、原子力の経済性は他の電源との比較において遜色はない。

──とはいえ今後の政策如何によっては、原子力を取り巻く情勢が大きく変わる可能性もある。電力会社は相当のリスクを抱えることにならないか?

確かにそうだ。もちろん今回試算した18.8兆円は、絶対的・確定的なものではなく、ある程度の変動幅も見込んだ数字。規制の見直しや設計・施設の合理化など、合理的範囲内での環境変化には対応できるが、大きな政策転換までは考慮していない。従来の規制下なら、原価主義に基づくコスト回収が可能だった面もあるが、将来の自由化拡大に伴い、いかに経営努力を重ねようと大きな政策変更による増分コスト回収は困難になる。

そうならないためにも、リサイクル路線を進める中での官民の役割を明確化してほしいと要望しており、これについても今後、電気事業分科会で議論される予定だ。

──審議の予定や制度設計の見通しなど、今後のスケジュールは?

契約電力50kW以上のお客さまにまで自由化対象が拡大される2005年がひとつのポイントになる。それまでになんらかの制度をつくっておかないといけないから、2004年1月下旬からの電気事業分科会で審議が行われ、2004年中には結論が出ることになるだろう。議論の結果がどうなるかはまだ分からないが、我々としては、1)バックエンドコスト18.8兆円の試算は、相応の合理性をもって算出したものであること 2)バックエンドコストを含めても原子力の経済性は、他の電源と比較において遜色はないこと 3)自由化拡大以前の発電に起因する未回収分については、公平性の観点から「広く薄く」負担していただくのが望ましいこと──この3点を主張し、公平かつ妥当な制度設計を要望していきたいと考えている。

電力自由化との関係とは?

2005年度から50kWの顧客まで自由化の範囲を広げることを盛り込んだ電気事業法改正案が2003年に衆(5月)参(6月)両院を通過した際、次のような附帯決議がなされていた。

我が国のエネルギーセキュリティと環境保全等の両立の観点から、原子力発電を中核的な電源と位置付け、原子力発電の開発・利用を推進するため、優先給電指令制度の整備など電力供給システムの一層の整備を図ること。

バックエンド事業については、国の責任を明確化した上で、徹底した情報開示と透明性の高い国民的議論の下で、官民の役割分担の在り方、既存制度との整合性等を整理し、経済的措置等具体的な制度・措置の在り方について早急に検討を行い、平成16年末までに必要な措置を講ずること。

なぜ未手当のものがあったのか。

電気事業連合会は次のように説明する。

これらの費用が将来発生することは以前から予見できていましたが、費用を明確に見積もることができなかったため、これらを総括原価制度(適正な原価に適正な事業報酬を加えたものが、総収入に見合うように料金を設定する方式)の料金原価に含めることは政府に認められていませんでした。


この19兆円に関する「上質な怪文書」とは?

「19兆円の請求書─止まらない核燃料サイクル─」(pdf, 416kb)

再処理に批判的な官僚が書いた文書とされる。

核燃料サイクル路線を正当化するものは何もないと説明し、最後は次のように結んでいる。

ちょっと待った!サイクル!

この核燃料サイクルを巡る構図は、古くは国鉄、住専、最近では道路公団、年金問題と同じ

(問題の先送りによるツケが国民に回ることに)

      ──>

核燃料サイクルについては一旦立ち止まり、国民的議論が必要ではないか

19兆円の中身を示した詳しい表は?



資料1
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/cost/rireki/1st/cost1--1.pdf

資料3
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/cost/rireki/1st/cost1--3.pdf

http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/seido_sochi/2th/shiryo4.pdf

http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/seido_sochi/1th/shiryo5.pdf


再処理施設の操業費用

再処理施設の廃止措置費用について

MOX燃料加工事業費用について

返還廃棄物管理費用について

高レベル放射性廃棄物の輸送・処分費用について

TRU廃棄物の地層処分費用について

使用済燃料輸送費用・中間貯蔵費用について

ウラン濃縮工場バックエンド費用について

バックエンドコスト算定に係る共通補足事項資料

バックエンド事業費の海外との比較

バックエンドコスト算定における主な変動要因について

モデル計算による各電源の発電コスト


バックエンドコストと今後のバックエンド事業


2005年に定められたバックエンド事業制度・措置は?

2005年5月11日に成立し、10月1日に施行となった法律で定められたのは:

電力料金に上乗せして徴収していた対象を拡大する。
 これまでの対象
再処理操業本体費用
高レベル放射性廃棄物のガラス固化費用
 追加される対象
ガラス固化体貯蔵
返還廃棄物管理
TRU廃棄物の処分
再処理施設の廃止等
これまでは電力会社内部で積み立てていたものを外部積立とする
 既に内部で積み立てられている分については、15年以内に外部積立に移す。
既発電分に関する上の追加対象については、15年に渡って分割回収する。自由化で特定規模電気事業者(PPS=Power Producer & Supplier)から電力を購入するようになる消費者からも回収する。電力会社(一般事業者)の送電線を使って特定規模電気事業者の電力を運ぶ「託送」制度を利用し、送電線使用量に上乗せして回収する仕組み。
これまでは、発生する使用済燃料すべてについて準備金を積み立てていたが、新制度では、六ヶ所再処理工場で再処理される分についてのみ積み立てる。2010年以後中間貯蔵が始まった場合、そこに送られ、その後第二再処理工場か直接処分に向かうものについては、当面、準備金の積立を行わない。