鳩山首相の偽装政治献金事件をどうみるか。関係者の討論の結果である。
A ≪鳩山総理の偽装献金事件とはどのような内容か≫
B 【報道されている偽装問題は次の2つである】
① 一つは資金管理団体「友愛政経懇話会」の05~08年分の収支報告書では、故人など約90人の名前を使った計約2177万円の虚偽記載の件である。これは今年の6月に鳩山議員は虚偽であったと認めている。
②もうひとつは、04~08年分の政治資金収支報告書に記載された計約1億7717万円に上る小口の匿名献金の大半が、鳩山家の資産管理会社「六幸商会」(東京都港区)の管理資金だったという虚偽記載の内容である。(10月25日朝日新聞朝刊)5万以下の献金が総額を記載すればよく、各人の寄付金額氏名などを記載しなくも良いので、その条文を使ったという報道である。
A ≪何故鳩山総理はそのような馬鹿なことをしたのか?故人を記載すれば、いずれその事実が明らかになるのに!≫
B そうですね。それが普通の感覚。総理の説明によると、上記①の事実は、秘書に預けていたカネを秘書が個人献金が少ないでの、あたかも個人献金が多数なされているかのごとく偽装したというのである。秘書が勝手に行ったので、その秘書を解雇したと公表した。
上記②の行為については鳩山総理の説明はない。しかし当然に予想された内容。故人の献金を偽装する位なら、氏名を記載しなくても良い5万円以下に偽装があるのは当然の話だろう。
しかしこのような処理は、政治的には、お粗末そのもの】
A ≪偽装行為が政治資金規正法のどの条文に違反するのか?≫
C 【上記①の件については、故人名義の寄付は本当は鳩山議員の寄付であるから法22条の6の「他人名義の寄付」に該当する。寄付した鳩山は、他人名義の寄付を自己の政治団体に寄付する故意を有すれば、法23条3項違反になる。総理の釈明通り、預けたカネを秘書が故人献金として処理したなら罪には問いにくい。しかし実際は釈明通りかどうかは疑問だ】
A ≪秘書はどのような罪に問われるか≫
C 【鳩山総理の記者会見のとおりとすれば、秘書は鳩山議員個人のカネであることを承知して、寄付を受けたのであるから法22条の6、第2項違反になる。その上、故人からあたかも寄付があったかのごとく、収支報告書に虚偽の記載をした罪=法12条に違反する法25条1項の虚偽記載罪(5年以下の禁固又は100万円以下の罰金)の罪に該当する。
A ≪鳩山家が5万以下の献金の大半を献金していた場合は鳩山家は罪に問われるか≫
C 【上記②の寄付の件は鳩山家の誰かが匿名献金をしていたとすれば、その寄付者は「匿名」であることを承知して寄付をしておれば、故意が存在し、その家族は法22条の6の「匿名献金」の罪になる。
普通は収支報告書に顕名か匿名かは会計責任者がその寄付者の意向を聞かずに匿名にすることはあり得ない。税金の控除は不要と言っておれば、一般的には会計責任者にお任せとなるから、故意を問うのは困難だ。鳩山家の家族が大金持だから、そのような寄付金控除などはさらさら考えていなかったと言われると、秘書との共謀の立証は困難。
A ≪年間1000万円を超える罪には家族は問われるのではないか≫
C 【家族が一人あたり、年間1000万円を超えて寄付しておれば法21条の3.3項 「個人のする政治活動に関する寄附で政党及び政治資金団体以外の者に対してされるものは、各年中において、1000万円を超えることができない」に違反する。
ただ、鳩山家全体で1000万円を超えていても、鳩山家族の個人、個人の寄付額が1人あたり1000万円以下ならこの条文に違反しない。
B ≪5年間で、1億7千7百万円であるから、1年間で約3500万円余。4人が寄付しておれば、法21条の3には違反しないことになるか≫
C 【その場合は1000万円を超える罪には問えない】
B ≪資産管理会社「六幸商会」が寄付した場合はどうか≫
C 【この管理会社が法人だとすれば、法人及びその代表者らも自然人と同じ条文の罪に違反するが、実際は家族より、もっと追及は難しくなるだろう】
A ≪これらの時効は何年か≫
C 【匿名寄付、第3者寄付の罪の時効は3年である。寄付したときが時効の起算点となる。よって、寄付日時は不明だが、今直ちに起訴すると仮定すれば2006年10月26日以前の寄付分は時効になっている。12条違反の虚偽記載罪の時効は5年だから、2005年3月に収支報告書を総務大臣に提出した以降の分は問えることになる】
B ≪一時新聞報道で、鳩山議員や鳩山一族の税金対策に悪用されているという疑いがあったが、これはどうか≫
D 【この点、各社からよく問い合わせもあったが、鳩山一族の税金の控除に使われている可能性は全くない。国会議員の主催する政治団体に寄付をすると、税の控除を受けることができる。税の控除をうけようとすれば、総務省か各地の選管が発行する「寄付金控除証明書」の交付を受けて税務署に申告しなければならない。ところが、第3者の「寄付金控除証明書」を貰っても、収支報告書に記載のある本人しか利用できない。「匿名」献金の場合はそもそも匿名だから、「寄付金控除証明書」は発行されない。よって、寄付金控除を悪用することは法律を知らない記者が書く記事】
A ≪実際この事件を東京地検は起訴するのか≫
C 【上記①の故人献金の件は総理、秘書が認めているが故に証拠がある。この事件だけなら、秘書が事実をみとめかつ反省もしているので、起訴猶予にし、鳩山総理を嫌疑不十分とする可能性がある。時の政権政党の総理自身を政治資金規正法違反で起訴して、辞任に追い込むことなることは検察も選択しないだろう。証拠の有無にかかわらずだ。
今回の虚偽記載の金額が2005年から2008年まで2177万円、2009年3月届け出分も含めるともっと増えても同じであろう。
しかし上記②の5万円以下の虚偽記載の分がどれだけ増えるかか不透明だが、これが相当な金額になれば秘書を略式起訴か在宅正式起訴かは問わず、起訴しないわけにはいかないのではないか。
もし秘書を起訴猶予にすると、時の総理大臣の元秘書だから、今度は時の権力に迎合したと検察が批判されるからだ】
D ≪鳩山の虚偽記載は小沢議員や二階議員のケースと違い、ダーテイな面が見えない。根本的に違うのでないか≫
C 【政治資金規正法は、一番重要な点はカネの「入」「出」の透明性の確保である。これが家族だから許すという論理は規正法の趣旨にはない。
しかし、家族が寄付し、利権と無関係だと、ダーテイな面がない。検察も起訴しにくい面はある。国民感情として家族間の寄付なら良いではないかと思い、それを許すという側面もある。
政治資金オンブズマンとしても告発しなかったのもこの点にあった。
同時に、総選挙という国民の「裁判」を受け、国民は鳩山の故人献金偽装を知りながら、鳩山総理を選んだ点は検察も考慮せざるを得ない。検察の判断や裁判官の判決より、より重い、いわば国民の「判決」があったからだ。
5万以下の件は総選挙当時には明らかでなかったが、これも寄付者が家族で利権が背後になければ多くの国民が改革に期待しこれを許すだろうね】
A ≪二階議員を告発した事件はどうなっているのか≫
C 【それが、今なお処分されない。一説によると鳩山と同時に処分するのでないかと言われている。
鳩山の秘書も起訴するから、二階の秘書も起訴する。鳩山の秘書も不起訴にするから、二階の秘書も不起訴にするというバランス論である。
これでやっかいな事件は検察批判にならずに終了できると。
二階議員の秘書を不起訴にし、鳩山議員の秘書を起訴するとなると、政権交代をして、鳩山総理に対して、改革を期待している多くの国民がいる中で、このような「不公平」な処分がでると、検察批判がでることは確実である】
A≪鳩山総理は秘書だけの処分で終わると、検察に証拠=弱みを握られ、強く検察官僚批判ができなくなる点を心配するが杞憂か??≫
C【検察はこの際、仮に鳩山総理や一族の者が関与していた可能性があってもあまり深く追求せず、秘書の弁明=鳩山総理のストーリー通り処分する可能性が高いのでないか。その心配は杞憂ではない】
D 【鳩山のカネ問題も重要だが、今一番重要なことは、民主党がマニフェストで国民に約束した企業・団体献金禁止法を通常国会に早急に提出することではないか。そうすれば、鳩山の秘書が起訴され、野党やマスコミが鳩山総理辞任を騒いでも、多くの国民は、鳩山辞めるな、コールが起こり、鳩山を支持することになるのでないか】
ABC共通 【政治とカネを追及してきた政治資金オンブズマンのメンバーでさえその意見には、賛同する。
企業団体献金禁止のチャンスはこの時期を除いてない。鳩山辞任で混乱するより、企業・団体献金禁止にピリオドを打つことこそ、鳩山総理に期待する内容であるからだ。
しかし鳩山総理が、企業団体献金禁止のマニフェストをうやむやにするなら、今度は鳩山政権は政治とカネに熱心な政党でないと批判活動を展開することになろう】
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