2010年2月11日木曜日

【財務省】 外国為替資金特別会計

 外国為替資金特別会計、略して外為特会または外為資金特会と呼ばれる特別会計があります。為替相場が円高に振れるときに財務省が為替介入して円高を防ぐための資金です。

円高を阻止するための為替介入をするときは、まず、政府が、国債の一種である政府短期証券を発行し、金融市場から円資金を借金します。そして、外国為替市場で、この円資金を売って、ドルを買います。(大量の円が売られるわけですから、円の値段は安くなります!)

政府の手元には多額のドルが貯まりますが、ドルの現金を持っていても金利はつきませんから、手元のドルでドル建ての債権、つまりアメリカ国債を購入します。

この特別会計では、政府短期証券を発行することにより借金した円資金が負債になります。そして、円を売ってドルを買い、そのドルで買ったアメリカ国債が資産になります。

具体的に例を挙げましょう。一ドル百円のときに為替介入をしたと仮定します。百円分の短期証券を発行し、手元に百円入りました。これを売って一ドルを買いました。その一ドルでアメリカ国債を一ドル分買いました(手数料などは無視します)。このとき、負債は百円、資産は一ドルです。資産の一ドルを円換算すると百円ですから、負債は百円、資産は百円です。

さて、この後、円安になり、一ドル百二十円になりました。外為特会の負債は百円、資産は一ドルです。では資産の一ドルを円換算してみましょう。百二十円になります。つまり、為替介入したときよりも円安になれば、負債よりも資産の方が大きくなります。

では反対に、円高が進み、一ドル九十円になったらどうなるのでしょうか。外為特会の負債は百円、資産は一ドル、これは変わりません。では、資産を円換算すると、九十円。負債の方が資産よりも大きくなります。

現在、円の金利よりドル金利の方が高くなっています。だから、この特別会計のために政府が発行する円建ての政府短期証券の金利、つまり日本政府が払う金利、よりも特別会計で保有しているドル建てのアメリカ国債の金利、つまり日本政府がもらう金利、の方が高いのです。毎年、この金利差で、特別会計には三兆円近くの収入があります。そして、この特別会計から一般会計に二兆円近くが繰り入れられているのです。

では、ドル債を持っているときに円高になったら、どうしますか。先ほどみたように、一ドル百円で、この特別会計は資産と債務がとんとんになります。それ以上円高になると、資産よりも負債が多くなります。つまり、手持ちのアメリカ国債を全部売却しても借金を返せなくなります。

さらに、もし、円の金利が高くなって、ドル金利が低くなって、金利が逆転したらどうしますか。一般会計から金利の差額分を支払わなければなりません。

この外為特会の出口をそろそろきちんとしておかなければなりません。

2010年2月8日月曜日

【月刊日本】 佐藤優

【佐藤優特別講演会・天皇論1二つの(小文字)国家ー政府と官僚】
【佐藤優特別講演会・天皇論2 国体の回復 GHQ第1号禁書『国体の本義』とは】
【佐藤優特別講演会・天皇論3-1鳩山由紀夫研究 吉野の後醍醐陵へ】
【佐藤優特別講演会・天皇論3-2 鳩山由紀夫研究 Stanford大学で決断学を会得】
【佐藤優特別講演会・天皇論3-3 鳩山由紀夫研究】
【佐藤優特別講演会・天皇論4-1 小沢vs検察戦争】
【佐藤優特別講演会・天皇論4-2 大政翼賛会を上回るファッショ】
【佐藤優特別講演会・天皇論4-3 小沢の恐ろしさはボルシェビズム】
【佐藤優特別講演会・天皇論5 我々にとってギリギリの選択は?】
【佐藤優特別講演会・天皇論6 国体明徴(差替え更新版)】
【佐藤優特別講演会・天皇論 山崎行太郎氏との対話1/5 プロフィール】
【佐藤優特別講演会・天皇論 山崎行太郎氏との対話 2/5】
【佐藤優特別講演会・天皇論 山崎行太郎氏との対話 3/5】
【佐藤優特別講演会・天皇論 山崎行太郎氏との対話 4/5】

2010年2月6日土曜日

【検察問題】 最高検検事・谷川恒太

2月3日は、わたし=週刊朝日編集長・山口一臣=が「東京地検から(事情聴取のための)出頭要請を受けた」という情報がネット上を駆け巡り、読者をはじめ関係者のみなさんに大変なご心配をおかけしました。

 すでにコメントを出させていただいているとおり、そのような事実はありません。多数の方からお問い合わせを受けましたが、「出頭」ではなく地方に「出張」しており(こういう軽口が誤解を招く......)、直接対応できずにすみませんでした。

 詳細は来週号でお伝えしようと思っておりましたが、東京地検が抗議書を送ったことが報道されたこともあって、その後もお問い合わせが絶えないため、とりあえず現時点でご報告できることをまとめてみたいと思います。

 その前に、編集部へいただいた電話やメール、ファックス等はほとんどが激励、応援のメッセージで本当に心強く思いました。どれだけお礼の言葉を並べても足りないくらい感激です。ありがとうございます。そして、ご心配をおかけして本当にもうしわけありませんでした。

 ことの経緯は、説明すれば「なんだ、そんなことか」で終わってしまうような話です。

 3日午前に東京地検の「タニガワ」さんという方から編集部に電話があって、わたしが出張で不在だったので、折り返し連絡がほしいということでした。

 出張先で伝言を受け取ったわたしが指定された電話番号に連絡すると、次席検事の谷川恒太氏につながりました。谷川氏は「さっそく電話いただいて、ありがとうございます」と丁寧な応対で、用件を聞くと、週刊朝日2月12日号(2月2日発売)に掲載した上杉隆さん執筆の「子ども〝人質〟に女性秘書『恫喝』10時間」という記事に、事実でないことが書かれているので抗議したいとのことでした。

 こうしたトラブルはよくあることなので、「わかりました。で、どうすればいいですか」と聞くと、「こちらに来ていただけますか?」ということでした。わたしとしては検察庁に出向くのはいっこうに構わないので、「わかりました。ただ、きょうは出張で九州にいるので、戻ってからでもいいですか?」と聞くと、「九州ですか......」と予想外の返事にちょっと絶句したようでした。

「すみません。前から決まっていたスケジュールなので。戻ったらすぐに連絡します」

「それは、きょうですか?」

「いえ、きょうは戻れないので、明日か明後日か......」

「そうですか......」

 谷川氏が困ったようすだったので、

「担当デスクが東京にいるので、デスクに行かせましょうか?」

 と水を向けると、

「いえ、編集長にということなので......」

「そうですか。では、いずれにしてもきょうは無理です」

 というようなやりとりがあり、谷川氏から、

「では、抗議書を送らせてもらいます」

 と言われたので、

「では、そうしてください。いずれにしても、また戻ったら電話します」

 ということで話は終わりました。言ってしまえば、これだけです。

 電話を切ってから、なんとなく谷川氏が急いでいるようだったことが気になり、その後のスケジュールを調整できないか編集部や関係先に何本か電話しました。そのとき「実は、東京地検から呼ばれてさ、ちょっと行かないといけないみたいだから、これからのスケジュールをキャンセルとか調整とかできるかな?」などと言ったことに「尾っぽ」や「ひれ」が付いて、どうやら「出頭要請」情報になったようです。

 お騒がせして、本当に申しわけありませんでした。

 さて、そんなわけで東京地検の谷川次席検事から送られてきたのが、別紙の「抗議書」です。ひとことで言えば、記事内容が「全くの虚偽」だと断定する内容です。

 この抗議に対する筆者の上杉さんの「反論」は来週号を見ていただくとして、現段階でわたしが言えることは、「記事は丁寧な取材を重ねたもので、自信を持っています」ということです。わたしは、上杉さんがどのような取材に基づき、この記事を書いたかよく知っています。

 記事を読んだ方はおわかりだと思いますが、あのようなディテールを「全くの虚偽」で書けるはずがありません。綿密な取材と確認作業の積み重ねによって、ようやく紡ぎだせる事実です。それは、プロの編集者が見れば一目瞭然のことなのです。そもそも「全くの虚偽」な記事が市販の雑誌に掲載されることは常識的にはあり得ません。

 一方、谷川氏の抗議書には、「真実は」として、おそらく担当検事から聞き取りをしたと思しき内容の記述があります。これには正直、驚きました。これは「真実」でなく、あくまでも「検察側の主張」ではないかと思います。わたしたちも、上杉さんの記事は丁寧な取材を重ねたもので、内容に自信を持っていますが、「真実」とは軽々に断定できないと思っています。「真実」とは、それほど重たいものなのです。そのため、わたしたちは通常であれば対立する相手方の意見を取材することになりますが、東京地検に関しては過去に何度、取材申し込みをしても、「週刊誌には、一律してお答えしないという対応を取らせていただいております」というような返事を繰り返すばかりでした。

 このような抗議をする前に、取材に応じていただければよかったのに......。

 いずれにしても、自分たちの一方的な「主張」を「真実」であるとするのは、法律家の事実認定としてあまりに乱暴ではないか、という感想を持ちました。東京地検では、日ごろからこのような事実認定が行われているのかと心配にもなりました。週刊朝日の記事が「全くの虚偽」と書いてありますが、その根拠となる証拠の提示もありません。

 話は少し横道にそれますが、4日付の複数の新聞に〈週刊朝日記事に東京地検が抗議〉という記事が出ています。通信社の配信記事だと思います。少し引用します。

〈東京地検は3日、衆院議員・石川知裕容疑者(36)らが逮捕された収支報告書虚偽記入事件を扱った週刊朝日2月12日号の記事について「まったくの虚偽だ」として、山口一臣編集長あてに抗議文を送ったことを明らかにした(以下略〉〉

 記事はこの後、筆者がジャーナリストの上杉隆さんであることを明記しています。読んでとっても違和感を覚えたのが、抗議の主体である谷川氏の名前が記事のどこにも出ていないことです。抗議はあくまでも組織として行ったものだとしても、「東京地検は3日、谷川恒太次席検事名で......」と書いたほうが正確です。もし、個々の固有名詞を出さないという方針なら、わたしや上杉さんの名前も同じように書かないほうがいいとわたしは思います。しかし、記事の基本は5W1Hで、とりわけ「誰が」という情報は重要で、責任の所在を明確にする意味でも、名前は必要だと思いました。

 さて、週刊朝日が一連の捜査に対して一貫して言っていることのひとつは、「検察は法律に則って公平・公正な捜査を行ってほしい」ということです。

 たとえば、石川知裕議員の逮捕―――

 身柄を拘束して自由を奪う行為は、国家が行使する公権力の中ではもっとも重大なものだと考えられています。それだけに、逮捕が公平・公正に行われたかのチェックはメディアにとってきわめて大切な行為です。一般に、捜査機関が人を逮捕する場合、(1)証拠隠滅の恐れがある場合と、(2)逃亡の恐れがある場合に限られます。刑事訴訟法上はさらに「諸般の事情に照らして逮捕の相当性があること」という要件もありますが、これを無制限に拡大しては法律の意味がありません。

 石川議員は、本当に証拠隠滅や逃亡の恐れがあったのか?
これは、多くの識者が指摘しているように、まずあり得ないことでしょう。石川議員はこれまで任意の事情聴取に応じてきました。近く、国会が始まろうという時期です。民主党の党大会前日に逮捕した理由は何だったのか。それこそ検察側の説明責任が問われます。

 また、2月5日号でやはり上杉さんがリポートした、捜査令状なしで石川議員の事務所を占拠した行為についても、われわれの取材したとおりの事実なら〝違法捜査〟に相当します。しかし東京地検は、この件に関してもいっさい取材に応じません(抗議書も来ていませんが)。逮捕にしろ、家宅捜索にしろ、捜査機関の強制力が法律に基づかないまま行使されることがあるとすれば、一般市民として強い恐怖を覚えます。

 そして、今回、上杉さんが書いた女性秘書に対する「騙し打ち」の事情聴取について言えば―――。

 共稼ぎで保育園に子どもを預けている親にとって、「お迎え」は何よりも大切なことだと思います。それを阻害してまで続けなければならない事情聴取があるでしょうか?
一刻も早い処罰を争うわけもない政治資金規正法違反の立件が、2人の子どもの子育てより優先されるとは思えません。子どもは国の宝です。東京地検はその捜査によって、世の中にどんなメリットをもたらしてくれるのか。税金を費消しているのですから当然、説明の義務があると思います。

 いずれにしても、当該女性秘書にウソを言って呼び出したこと、弁護士へ連絡をさせなかったこと、長時間にわたる取り調べを行ったことなど、いずれも違法・不当な行為です。法曹資格者たる検察官が法を順守しないというのは、いかがなものかと思います。

 わたしは、検察が信頼されない社会はとてもよくないと思っています。しかし、こんなことを繰り返しているようでは、市民の信頼を失うことは明らかです。

 もうひとつ指摘しておきたいのは、昨年3月以降(政権交代の可能性が具体的に見えてきてから)の捜査が明らかに「政治的に偏向している」という点です。検察当局はかたくなに否定すると思いますが、少なくともそう疑われても仕方ないでしょう。

 まず、3月の大久保隆規秘書の突然の逮捕―――。

 当時、検察OBをはじめとする多くの専門家は、「半年以内に確実に選挙があるというこの時期に、政治資金規正法違反という形式犯で野党第一党の党首の秘書を逮捕するはずがない」という理由から、「これは贈収賄やあっせん利得、あっせん収賄など実質犯への入り口だ」と解説したものです。以後、今回と同じく「談合」「天の声」「ゼネコンマネー」といった小沢氏に関する悪性報道が続きますが、結局、検察が起訴できたのは大久保秘書の政治資金規正法違反のみでした。

 しかし検察は、その捜査によって小沢一郎氏を代表の座から引き降ろすことに成功しているのです。

 今回の捜査もほとんど同じ経緯をたどりました。

 強制捜査着手前から小沢氏の悪性情報がどんどん流れ、ピークに達した時点で石川議員ら計3人が逮捕され、小沢氏本人も被疑者として2回にわたる事情聴取を受けました。ふつうに考えたら、小沢氏本人が贈収賄や脱税などの実質犯で立件されることが想定される事態ですが、これも結局は石川議員ら3人の政治資金規正法違反のみの起訴で終わっています。まるでデジャヴーを見るような思いです。

 しかし、この10カ月にわたる「小沢捜査」が小沢氏本人はもとより民主党政権にも大きなダメージを与えたことは間違いありません。検察にそういう意図があったとは思いたくありませんが、今年夏の参議院議員選挙にも間違いなく強い影響を与えることになるでしょう。うがった見方かもしれませんが、検察が証拠を見つけられず、法によって処罰できないからといって、イメージ操作で社会的な制裁を加え、政治的ダメージを与えるようなことがあったとしたら、それは先進法治国家とはいえないでしょう。

 今回、問題となった政治資金規正法違反については、「単なる形式犯」という識者もいれば、「国民を欺く重大な犯罪」という専門家もいます。わたしは、両方とも正しいと思っています。この法律はそれほど「悪質性」に幅があるということです。単なる「記入ミス」「記載漏れ」から意図的な「虚偽記載」、さらに、その意図の内容によっても悪質性が違ってきます。誰が考えても処罰の必要があると思うのは、ワイロ性が疑われるヤミ献金の受け取りです。個々の違反事例がどの程度、悪質なのかの判断は捜査当局にまかせるのでなく、わたしたち自身が国民目線でしっかり検証しなければならないと思っています。検察は、自らの捜査に正統性を与え、手柄を大きく見せるためにも、さかんに「悪質性」の宣伝をする傾向にあります。それは、検察にとってはごく一般的な手口なのです。

 石川議員らの事件に関しても、本当に起訴に相当するものなのか、処罰価値があるのか、さまざまな観点からの検証が必要でしょう。元東京地検特捜部長の宗像紀夫弁護士は2月5日付の朝日新聞(朝刊)に次のような談話を寄せています。

〈政治資金規正法は改正が繰り返されて厳罰化が進み、政党助成金が投入されるようになったことなどで、違反に対する認識が変わりつつあるのは確かだろう。だが、虚偽記載の起訴だけで捜査を終えるのなら、見通しのない捜査だったと批判されても仕方がない。同法違反で簡単に逮捕できるとなれば、検察が議員の生殺与奪を握ることにならないかも心配だ〉

 わたしは、この引用の最後の部分がとても重要だと思います。検察(官僚)が国民が選挙によって選んだ議員(政治家)の生殺与奪を握る社会がいいのかどうか。答えはおのずと明らかです。もちろん、検察にとって政治家の悪事を暴き、法に基づき適正な処罰をするのは重要な役割です。しかし、その場合は誰にも文句を言えないような犯罪事実を見つけ出し、誰にも批判されないだけの証拠を集め、正々堂々と公判請求するのが検察官としての矜持ではないかと思います。

 もちろん、わたしたちは小沢氏個人を擁護するためにこのようなことを書いているわけではありません。「小沢とカネ」に関する新たな疑惑や不正事実をつかんだら、検察より緻密な取材で批判・追及することになるでしょう。上杉さんが弊誌でたびたび指摘するように、検察が権力なら、小沢氏も権力の側の人ですから。

 今回、小沢氏に関して指摘されているさまざまな〝疑惑〟は実は、10年以上前から雑誌メディアで追及されてきたことばかりです。東北地方の談合に関する問題はジャーナリストの横田一さんらが1995年から「週刊金曜日」でキャンペーンを張ったもの、また政治資金団体による不動産購入など、いわゆる金脈問題については松田賢弥さんが主に「週刊現代」誌上でず~っと追及してきた話です。いずれにしても「小沢金脈」の全容解明は、検察ではなくジャーナリズムの仕事だとわたしは思っています。

 なぜ、小沢氏は不起訴で終わったのか。小沢氏周辺が大物検察OBを使って検察首脳と裏取引をしたという情報が、まことしやかに出回っています。もしこれが本当なら、「検察も小沢も」一蓮托生ということになりかねません。その真偽の確認もわたしたちジャーナリズムの仕事だと思います。民主党政権が今後、取り調べの可視化などを本気で進めるのか。みなさんと一緒に監視していきたいと思います。

 そんなわけで、九州出張から帰ったわたしは、東京地検の谷川氏のところへ電話を入れました。しかし、石川議員らの起訴でさすがに忙しいようでなかなか連絡が取れません。その間も、各方面から「いったいいつ『出頭』するのか」というお問い合わせをいただき、申しわけありませんでした。結局、谷川氏とは連絡が取れずじまいで、代わりに弊誌記者の新たな取材申し込みに対して広報官を通じて以下のような返事を受け取りました。

〈谷川次席から山口編集長に来庁していただきたいと連絡をさせていただきましたが、山口編集長が所用で来られないということでした。そのため、抗議の意を速やかにお伝えするために、2月3日に抗議書をFAXで送らせていただきました。抗議書はすでにお送りしていますので、現時点でご足労いただく必要はありません。また、改めての取材には応じかねます〉

 すみません、これが結末です。こちらも今週の締め切りに入ってしまったため、これ以上のツッコミはしていません。

 みなさん、お騒がせして本当に申しわけありませんでした。

 なお、来週発売号で、上杉隆さんの「東京地検の『抗議』に抗議する」を掲載します。ぜひ、ご覧ください。


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【東京地検】 谷川恒太次席検事

2月3日は、わたし=週刊朝日編集長・山口一臣=が「東京地検から(事情聴取のための)出頭要請を受けた」という情報がネット上を駆け巡り、読者をはじめ関係者のみなさんに大変なご心配をおかけしました。

 すでにコメントを出させていただいているとおり、そのような事実はありません。多数の方からお問い合わせを受けましたが、「出頭」ではなく地方に「出張」しており(こういう軽口が誤解を招く......)、直接対応できずにすみませんでした。

 詳細は来週号でお伝えしようと思っておりましたが、東京地検が抗議書を送ったことが報道されたこともあって、その後もお問い合わせが絶えないため、とりあえず現時点でご報告できることをまとめてみたいと思います。

 その前に、編集部へいただいた電話やメール、ファックス等はほとんどが激励、応援のメッセージで本当に心強く思いました。どれだけお礼の言葉を並べても足りないくらい感激です。ありがとうございます。そして、ご心配をおかけして本当にもうしわけありませんでした。

 ことの経緯は、説明すれば「なんだ、そんなことか」で終わってしまうような話です。

 3日午前に東京地検の「タニガワ」さんという方から編集部に電話があって、わたしが出張で不在だったので、折り返し連絡がほしいということでした。

 出張先で伝言を受け取ったわたしが指定された電話番号に連絡すると、次席検事の谷川恒太氏につながりました。谷川氏は「さっそく電話いただいて、ありがとうございます」と丁寧な応対で、用件を聞くと、週刊朝日2月12日号(2月2日発売)に掲載した上杉隆さん執筆の「子ども〝人質〟に女性秘書『恫喝』10時間」という記事に、事実でないことが書かれているので抗議したいとのことでした。

 こうしたトラブルはよくあることなので、「わかりました。で、どうすればいいですか」と聞くと、「こちらに来ていただけますか?」ということでした。わたしとしては検察庁に出向くのはいっこうに構わないので、「わかりました。ただ、きょうは出張で九州にいるので、戻ってからでもいいですか?」と聞くと、「九州ですか......」と予想外の返事にちょっと絶句したようでした。

「すみません。前から決まっていたスケジュールなので。戻ったらすぐに連絡します」

「それは、きょうですか?」

「いえ、きょうは戻れないので、明日か明後日か......」

「そうですか......」

 谷川氏が困ったようすだったので、

「担当デスクが東京にいるので、デスクに行かせましょうか?」

 と水を向けると、

「いえ、編集長にということなので......」

「そうですか。では、いずれにしてもきょうは無理です」

 というようなやりとりがあり、谷川氏から、

「では、抗議書を送らせてもらいます」

 と言われたので、

「では、そうしてください。いずれにしても、また戻ったら電話します」

 ということで話は終わりました。言ってしまえば、これだけです。

 電話を切ってから、なんとなく谷川氏が急いでいるようだったことが気になり、その後のスケジュールを調整できないか編集部や関係先に何本か電話しました。そのとき「実は、東京地検から呼ばれてさ、ちょっと行かないといけないみたいだから、これからのスケジュールをキャンセルとか調整とかできるかな?」などと言ったことに「尾っぽ」や「ひれ」が付いて、どうやら「出頭要請」情報になったようです。

 お騒がせして、本当に申しわけありませんでした。

 さて、そんなわけで東京地検の谷川次席検事から送られてきたのが、別紙の「抗議書」です。ひとことで言えば、記事内容が「全くの虚偽」だと断定する内容です。

 この抗議に対する筆者の上杉さんの「反論」は来週号を見ていただくとして、現段階でわたしが言えることは、「記事は丁寧な取材を重ねたもので、自信を持っています」ということです。わたしは、上杉さんがどのような取材に基づき、この記事を書いたかよく知っています。

 記事を読んだ方はおわかりだと思いますが、あのようなディテールを「全くの虚偽」で書けるはずがありません。綿密な取材と確認作業の積み重ねによって、ようやく紡ぎだせる事実です。それは、プロの編集者が見れば一目瞭然のことなのです。そもそも「全くの虚偽」な記事が市販の雑誌に掲載されることは常識的にはあり得ません。

 一方、谷川氏の抗議書には、「真実は」として、おそらく担当検事から聞き取りをしたと思しき内容の記述があります。これには正直、驚きました。これは「真実」でなく、あくまでも「検察側の主張」ではないかと思います。わたしたちも、上杉さんの記事は丁寧な取材を重ねたもので、内容に自信を持っていますが、「真実」とは軽々に断定できないと思っています。「真実」とは、それほど重たいものなのです。そのため、わたしたちは通常であれば対立する相手方の意見を取材することになりますが、東京地検に関しては過去に何度、取材申し込みをしても、「週刊誌には、一律してお答えしないという対応を取らせていただいております」というような返事を繰り返すばかりでした。

 このような抗議をする前に、取材に応じていただければよかったのに......。

 いずれにしても、自分たちの一方的な「主張」を「真実」であるとするのは、法律家の事実認定としてあまりに乱暴ではないか、という感想を持ちました。東京地検では、日ごろからこのような事実認定が行われているのかと心配にもなりました。週刊朝日の記事が「全くの虚偽」と書いてありますが、その根拠となる証拠の提示もありません。

 話は少し横道にそれますが、4日付の複数の新聞に〈週刊朝日記事に東京地検が抗議〉という記事が出ています。通信社の配信記事だと思います。少し引用します。

〈東京地検は3日、衆院議員・石川知裕容疑者(36)らが逮捕された収支報告書虚偽記入事件を扱った週刊朝日2月12日号の記事について「まったくの虚偽だ」として、山口一臣編集長あてに抗議文を送ったことを明らかにした(以下略〉〉

 記事はこの後、筆者がジャーナリストの上杉隆さんであることを明記しています。読んでとっても違和感を覚えたのが、抗議の主体である谷川氏の名前が記事のどこにも出ていないことです。抗議はあくまでも組織として行ったものだとしても、「東京地検は3日、谷川恒太次席検事名で......」と書いたほうが正確です。もし、個々の固有名詞を出さないという方針なら、わたしや上杉さんの名前も同じように書かないほうがいいとわたしは思います。しかし、記事の基本は5W1Hで、とりわけ「誰が」という情報は重要で、責任の所在を明確にする意味でも、名前は必要だと思いました。

 さて、週刊朝日が一連の捜査に対して一貫して言っていることのひとつは、「検察は法律に則って公平・公正な捜査を行ってほしい」ということです。

 たとえば、石川知裕議員の逮捕―――

 身柄を拘束して自由を奪う行為は、国家が行使する公権力の中ではもっとも重大なものだと考えられています。それだけに、逮捕が公平・公正に行われたかのチェックはメディアにとってきわめて大切な行為です。一般に、捜査機関が人を逮捕する場合、(1)証拠隠滅の恐れがある場合と、(2)逃亡の恐れがある場合に限られます。刑事訴訟法上はさらに「諸般の事情に照らして逮捕の相当性があること」という要件もありますが、これを無制限に拡大しては法律の意味がありません。

 石川議員は、本当に証拠隠滅や逃亡の恐れがあったのか?
これは、多くの識者が指摘しているように、まずあり得ないことでしょう。石川議員はこれまで任意の事情聴取に応じてきました。近く、国会が始まろうという時期です。民主党の党大会前日に逮捕した理由は何だったのか。それこそ検察側の説明責任が問われます。

 また、2月5日号でやはり上杉さんがリポートした、捜査令状なしで石川議員の事務所を占拠した行為についても、われわれの取材したとおりの事実なら〝違法捜査〟に相当します。しかし東京地検は、この件に関してもいっさい取材に応じません(抗議書も来ていませんが)。逮捕にしろ、家宅捜索にしろ、捜査機関の強制力が法律に基づかないまま行使されることがあるとすれば、一般市民として強い恐怖を覚えます。

 そして、今回、上杉さんが書いた女性秘書に対する「騙し打ち」の事情聴取について言えば―――。

 共稼ぎで保育園に子どもを預けている親にとって、「お迎え」は何よりも大切なことだと思います。それを阻害してまで続けなければならない事情聴取があるでしょうか?
一刻も早い処罰を争うわけもない政治資金規正法違反の立件が、2人の子どもの子育てより優先されるとは思えません。子どもは国の宝です。東京地検はその捜査によって、世の中にどんなメリットをもたらしてくれるのか。税金を費消しているのですから当然、説明の義務があると思います。

 いずれにしても、当該女性秘書にウソを言って呼び出したこと、弁護士へ連絡をさせなかったこと、長時間にわたる取り調べを行ったことなど、いずれも違法・不当な行為です。法曹資格者たる検察官が法を順守しないというのは、いかがなものかと思います。

 わたしは、検察が信頼されない社会はとてもよくないと思っています。しかし、こんなことを繰り返しているようでは、市民の信頼を失うことは明らかです。

 もうひとつ指摘しておきたいのは、昨年3月以降(政権交代の可能性が具体的に見えてきてから)の捜査が明らかに「政治的に偏向している」という点です。検察当局はかたくなに否定すると思いますが、少なくともそう疑われても仕方ないでしょう。

 まず、3月の大久保隆規秘書の突然の逮捕―――。

 当時、検察OBをはじめとする多くの専門家は、「半年以内に確実に選挙があるというこの時期に、政治資金規正法違反という形式犯で野党第一党の党首の秘書を逮捕するはずがない」という理由から、「これは贈収賄やあっせん利得、あっせん収賄など実質犯への入り口だ」と解説したものです。以後、今回と同じく「談合」「天の声」「ゼネコンマネー」といった小沢氏に関する悪性報道が続きますが、結局、検察が起訴できたのは大久保秘書の政治資金規正法違反のみでした。

 しかし検察は、その捜査によって小沢一郎氏を代表の座から引き降ろすことに成功しているのです。

 今回の捜査もほとんど同じ経緯をたどりました。

 強制捜査着手前から小沢氏の悪性情報がどんどん流れ、ピークに達した時点で石川議員ら計3人が逮捕され、小沢氏本人も被疑者として2回にわたる事情聴取を受けました。ふつうに考えたら、小沢氏本人が贈収賄や脱税などの実質犯で立件されることが想定される事態ですが、これも結局は石川議員ら3人の政治資金規正法違反のみの起訴で終わっています。まるでデジャヴーを見るような思いです。

 しかし、この10カ月にわたる「小沢捜査」が小沢氏本人はもとより民主党政権にも大きなダメージを与えたことは間違いありません。検察にそういう意図があったとは思いたくありませんが、今年夏の参議院議員選挙にも間違いなく強い影響を与えることになるでしょう。うがった見方かもしれませんが、検察が証拠を見つけられず、法によって処罰できないからといって、イメージ操作で社会的な制裁を加え、政治的ダメージを与えるようなことがあったとしたら、それは先進法治国家とはいえないでしょう。

 今回、問題となった政治資金規正法違反については、「単なる形式犯」という識者もいれば、「国民を欺く重大な犯罪」という専門家もいます。わたしは、両方とも正しいと思っています。この法律はそれほど「悪質性」に幅があるということです。単なる「記入ミス」「記載漏れ」から意図的な「虚偽記載」、さらに、その意図の内容によっても悪質性が違ってきます。誰が考えても処罰の必要があると思うのは、ワイロ性が疑われるヤミ献金の受け取りです。個々の違反事例がどの程度、悪質なのかの判断は捜査当局にまかせるのでなく、わたしたち自身が国民目線でしっかり検証しなければならないと思っています。検察は、自らの捜査に正統性を与え、手柄を大きく見せるためにも、さかんに「悪質性」の宣伝をする傾向にあります。それは、検察にとってはごく一般的な手口なのです。

 石川議員らの事件に関しても、本当に起訴に相当するものなのか、処罰価値があるのか、さまざまな観点からの検証が必要でしょう。元東京地検特捜部長の宗像紀夫弁護士は2月5日付の朝日新聞(朝刊)に次のような談話を寄せています。

〈政治資金規正法は改正が繰り返されて厳罰化が進み、政党助成金が投入されるようになったことなどで、違反に対する認識が変わりつつあるのは確かだろう。だが、虚偽記載の起訴だけで捜査を終えるのなら、見通しのない捜査だったと批判されても仕方がない。同法違反で簡単に逮捕できるとなれば、検察が議員の生殺与奪を握ることにならないかも心配だ〉

 わたしは、この引用の最後の部分がとても重要だと思います。検察(官僚)が国民が選挙によって選んだ議員(政治家)の生殺与奪を握る社会がいいのかどうか。答えはおのずと明らかです。もちろん、検察にとって政治家の悪事を暴き、法に基づき適正な処罰をするのは重要な役割です。しかし、その場合は誰にも文句を言えないような犯罪事実を見つけ出し、誰にも批判されないだけの証拠を集め、正々堂々と公判請求するのが検察官としての矜持ではないかと思います。

 もちろん、わたしたちは小沢氏個人を擁護するためにこのようなことを書いているわけではありません。「小沢とカネ」に関する新たな疑惑や不正事実をつかんだら、検察より緻密な取材で批判・追及することになるでしょう。上杉さんが弊誌でたびたび指摘するように、検察が権力なら、小沢氏も権力の側の人ですから。

 今回、小沢氏に関して指摘されているさまざまな〝疑惑〟は実は、10年以上前から雑誌メディアで追及されてきたことばかりです。東北地方の談合に関する問題はジャーナリストの横田一さんらが1995年から「週刊金曜日」でキャンペーンを張ったもの、また政治資金団体による不動産購入など、いわゆる金脈問題については松田賢弥さんが主に「週刊現代」誌上でず~っと追及してきた話です。いずれにしても「小沢金脈」の全容解明は、検察ではなくジャーナリズムの仕事だとわたしは思っています。

 なぜ、小沢氏は不起訴で終わったのか。小沢氏周辺が大物検察OBを使って検察首脳と裏取引をしたという情報が、まことしやかに出回っています。もしこれが本当なら、「検察も小沢も」一蓮托生ということになりかねません。その真偽の確認もわたしたちジャーナリズムの仕事だと思います。民主党政権が今後、取り調べの可視化などを本気で進めるのか。みなさんと一緒に監視していきたいと思います。

 そんなわけで、九州出張から帰ったわたしは、東京地検の谷川氏のところへ電話を入れました。しかし、石川議員らの起訴でさすがに忙しいようでなかなか連絡が取れません。その間も、各方面から「いったいいつ『出頭』するのか」というお問い合わせをいただき、申しわけありませんでした。結局、谷川氏とは連絡が取れずじまいで、代わりに弊誌記者の新たな取材申し込みに対して広報官を通じて以下のような返事を受け取りました。

〈谷川次席から山口編集長に来庁していただきたいと連絡をさせていただきましたが、山口編集長が所用で来られないということでした。そのため、抗議の意を速やかにお伝えするために、2月3日に抗議書をFAXで送らせていただきました。抗議書はすでにお送りしていますので、現時点でご足労いただく必要はありません。また、改めての取材には応じかねます〉

 すみません、これが結末です。こちらも今週の締め切りに入ってしまったため、これ以上のツッコミはしていません。

 みなさん、お騒がせして本当に申しわけありませんでした。

 なお、来週発売号で、上杉隆さんの「東京地検の『抗議』に抗議する」を掲載します。ぜひ、ご覧ください。


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2010年2月5日金曜日

【新聞記事】 産経(ほくそ笑むのはまだ早い)

【小沢氏不起訴】ほくそ笑むのはまだ早い (社会部長・近藤豊和)
2010.2.5 08:03(リンク切れというか削除)


 ロシアの劇作家、ゴーゴリの作品に『検察官』がある。田舎町を訪れた青年を検察官と思い込んだ市長や官吏らが、日ごろの自身の悪事の露見におびえ、穏便に済ませようと金品を青年に渡し、青年は市長の娘をたらしこんだりする。出版時に印刷工や校正係が笑いで作業が進まなかったという逸話が残るほどの名作だ。

 作品の検察官像や話の設定とは全く異なることは言うまでもないが、民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件をめぐって跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する周辺のさまざまな人々を見るにつけ、『検察官』に描かれた「悪事や醜事が、一種の微分子のように空中に瀰漫(びまん)し、人間生活のいたるところに跳梁して、人生を醜悪、陋劣(ろうれつ)なたえがたいものとしている」(岩波文庫、米川正夫氏の解説から)という様相がだぶってみえてきた。

 最高実力者にこびるように検察との対決を声高にする小沢氏シンパの民主党議員たち。「政治とカネ」では同じ流派なのに、これ見よがしの自民党議員ら。何の怨念(おんねん)なのか、古巣批判を執拗(しつよう)に続ける特捜OB。テレビで「検察リーク」などとしたり顔のコメンテーターたち…。

 事件周辺には「微分子」がまさにハエのようにたかっていた。

 政権奪取を主導した小沢氏を軸とした政治状況の転覆をひそかに狙う民主党内の反小沢派も、政権復帰に悲壮感漂う無力な自民党も「検察の捜査頼み」という体たらくでなんとも情けない。

 検察の捜査について、「対決」とか「全面戦争」などとすぐに主張し始め、政治的な意図を絡めて根拠も十分にないような推論が展開されるような状況を“消費”しているだけでは、「政治とカネ」の根源的問題の解決には決してつながらない。

 「政治とカネ」の問題に、政界の自浄作用を求めるのは不可能なのだろうか。「政治とカネ」にもはや食傷気味の国民ムードもある。経済が悪化し、国力が衰退すれば、「政治とカネ」よりも「明日の生活」という思いが強まるのも理解できる。こうしたムードに乗じてか、「国会での不毛な『政治とカネ』の議論。国民は経済対策を望んでいる」などとテレビで公言する民主党議員すらいる。

 金絡みによる政治権力基盤がなくても、国、国民のために身をささげる有能な政治家がよりよい政策を遂行できるような「理想」を希求し続けることは必要だ。

こうした理想を失うと、悪徳政治家の思うツボだ。「ワイロ天国」の評判高いどこかの国のようなありさまにもなってしまう。「政治とカネ」の問題に疲れてはいけない。代償はあまりに大きいのだ。

 今回の事件の捜査は、小沢氏の最側近である石川知裕衆院議員、大久保隆規公設第1秘書らが起訴され、一方で小沢氏本人の不起訴ということで、ひとまずの「到達点」を迎えた。

 しかしながら、捜査の過程で表面化した、陸山会による東京都世田谷区の土地取引に絡む不明朗な億単位の金の出し入れや融資については、腑に落ちないことが多すぎる。また、陸山会による大量の不動産取得や政党助成金の移動など総額数十億円にも上る不明朗な金の動きに至っては、「疑惑の山」であり続けている。

 小沢氏の不起訴の観測が一気に拡大した2日夜。小沢氏側関係者たちは早くも「勝利宣言」をあちこちでし始めていた。この日昼、衆院本会議場で鈴木宗男衆院議員とほくそ笑む小沢氏の姿を報道各社のカメラがとらえていた。

 「疑惑の山」への捜査は継続されることだろう。そして、国民の注視もやむことはない。ほくそ笑むのはまだ早い。

【小沢一郎】 平野貞夫氏からみた小沢一郎

小沢一郎と田中・金丸・竹下の関係 』
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多くのマスコミは小沢一郎を田中角栄元首相、竹下登元首相、金丸信元自民党副総裁の政治的後継者とし、政治手法もそれを発展させたと報道している。これは誤ったものだ。たしかに田中元首相に目をかけられていたし、金丸元副総裁は猫かわいがりしていた。竹下元首相とは縁戚関係であったが、感性が合わず、両方から私に調整をしばしば頼まれていた。

かく申す私は衆院事務局に勤務していたことで、田中・金丸・竹下の三政治家とは、小沢さんより10年近く古くからの付合いだった。第一次佐藤栄作内閣の頃、竹下内閣官房副長官、金丸議運理事とは国会運営でアドバイスを求められたりした。特に園田直衆院副議長秘書時代、竹下・金丸両氏とは毎日会っていた。田中さんは園田副議長の使いで行くと、よく説教をされた。

私が小沢一郎という政治家と仕事を超えた人間関係となったのは、ロッキード事件の後政治倫理制度をつくる時代である。小沢議院運営委員長に就任してからだ。よく政治家としてのあり方を聞かれたが、「マスコミに迎合していては、良い政治はできない」と私の人生の師である故前尾繁三郎衆院議長の考えを伝えたことがある。その後の小沢さんの政治活動をみると、かなり影響を与えたようだ。


ロッキード事件の田中元首相の裁判を全部傍聴したことで知られている。これについて2つの見方がある。1つは被告の田中元首相と同じ発想で、検察憎しという姿勢だ。もう1つは点取り虫で良く思われたいからだろうというものであった。いずれも誤った見方である。

私には「総理までやった人間が、苦境に立ったとき、どのような生き様をするのか、これを学んで おきたかった 」と、語ってくれたことがある。朝日新聞のコメンテータをやっている早野透氏は、政治部記者で活躍している頃、「小沢一郎は田中角栄の内在的批判者だ」と論じたことがあるが、これが正しい見方である。


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『 小沢一郎の政治資金に不正なものがない 』
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自民党単独政権で、47歳で幹事長まで登りつめた小沢一郎について、世間では「さぞかし汚れた資金に手を染めているだろう」との風評がある。これが根本的に間違っている。田中角栄、金丸信、竹下登の3人については、問題のある政治資金に手を汚していたことについて、私も否定はしない。小沢一郎については、それがないことを私は証明できる。

私は国会運営の裏側で、さまざまな仕事にかかわり、昭和40年代から平成初期までの田中・金丸・竹下の3人は、小沢一郎を大事にしすぎて、問題のある政治資金について関わらせていなかったのだ。政治資金について苦労をさせていないのである。もっぱら、政治資金の透明化と政治倫理制度の確立について、衆院事務局職員の私と共に制度づくりの仕事に励んでいたのだ。

そのことを証明する話だが、私が参院議員となり平成5年6月、宮沢内閣不信任案を可決し、衆院総選挙となる。羽田・小沢グループは「新生党」を結成する。綱領と基本政策の政策を担当した私は、念のため羽田・小沢両氏の政治活動での資金問題を、法務検察首脳に調査してもらった。回答は自民党時代の2人の政治資金について、問題なし二重丸だとの返事であった。私はこれで真の政治改革ができると確信した。自民党離党した後の小沢一郎の政治資金に不正なものがないことは、私がもっとも知っている。

2010年2月3日水曜日

【官僚支配】 内閣法制局 ①

 内閣法制局は、本来法制的な部分で内閣を直接補佐する機関として設置され明治憲法発布より早い。

法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べるという事務(いわゆる意見事務)、閣議に付される法律案、政令案及び条約案を審査するという事務(いわゆる審査事務)を主な業務としています(内閣法制局HP。なお、厳密には内閣法制局設置法第3条)。

 通俗的な(あるいは護憲派的な)理解では、内閣法制局は行政府における「法の番人」であり、時の内閣が恣意的に憲法の運用を行わないようチェックする機関とされている。ゆえに護憲派といわれる方々の意見の中には、小沢氏の国会での官僚答弁禁止に対し反対意見が多いのは納得ができるのではあるが、現実には、政府・行政府内の憲法解釈について最終的な決定を行う権限を有するのは、あくまでも内閣ですが、その決定に際しては、法の専門家・プロフェッショナルとしての内閣法制局の意見が最大限尊重されるべきであるという慣行あるいは(実質的な意味での)憲法的慣習が成立していると見るべきでしょう。

 内閣法制局長官の国会答弁も、このような文脈で捉えられるべきです。政党間の力と力がぶつかり合う国会審議の場において、内閣法制局長官が与党とも野党ともある程度の距離を置き、法の専門家・プロフェッショナルとして法制的な観点から客観的な見解を述べることは意義のあることであり、国会の側からそのような意見を求めることも、国会のひとつの見識として評価されるべきでしょう。しかし、本当にそうであった場合の話ではあるが。



内閣法制局長官 鳩山政権で役割変質か
2010.2.3 07:46
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100203/plc1002030747003-n1.htm

 「法の番人」とも呼ばれた内閣法制局長官の役割が今年から変わった。鳩山政権が今国会から官僚答弁を原則禁止し、憲法解釈に関する答弁も政治家が行うことになったからだ。官房長官らによる答弁には稚拙さが目立つが、内閣法制局による憲法解釈の独占には批判も根強かった。首相でも容易に手を出せなかった「聖域」は、選挙で選ばれた政治家の手に渡りつつあるのか。(杉本康士)

                   ◇ 

 「法制局長官は法的見地から内閣に助言する立場だ。『法の番人』という認識は少し違う」。平野博文官房長官は1月14日の記者会見でこう力説した。

 本来、政府の憲法解釈権は首相を長とする内閣が持っており、内閣法制局は法律問題に関する「意見を述べる」(設置法)役割が与えられているにすぎない。しかし、高度の専門性や歴代内閣の一貫性を重視する立場から、これまでは内閣法制局が事実上、有権解釈権を握ってきた。このため、国会審議では内閣法制局長官が憲法解釈答弁にあたってきた経緯がある。

 一方、鳩山政権は官僚答弁を禁止する国会審議活性化関連法案を今国会に提出した。政府は法案成立を待たず、国会答弁ができる「政府特別補佐人」から内閣法制局長官を除外した。こうした動きには、各府省庁から「法制局の解釈は絵空事が多かった。憲法解釈は首相が総合判断する立場なんだから、現政権の判断は正しい」(外務省筋)と歓迎する見方も多い。

 内閣法制局はこれまで、同盟国に対する攻撃を自国への攻撃とみなし反撃する集団的自衛権を「保有するが行使はできない」と矛盾した解釈を打ち出し、政府の政策判断を縛ってきた。とはいえ、憲法には集団的自衛権を禁止する明文規定はなく、日米安保条約や国連憲章51条では固有の権利として認められている。

 政治家による憲法解釈が定着すれば、批判を受け続けた憲法解釈が見直される可能性も生まれる。だが、道のりは必ずしも平坦(へいたん)ではない。

 1月21日の衆院予算委員会では、天皇陛下の国事行為と公的行為の違いを聞かれ、平野氏はメモの助けを受け取るまで「後刻答える」と立ち往生した。また、政府・民主党は永住外国人に地方参政権(選挙権)を付与する法案の提出を検討中だが、これに関しても「参政権付与は憲法違反との指摘が強いので、政権に都合のいい憲法解釈をするために法制局長官の答弁を禁止したのでは」(公明党関係者)との見方もある。
                   ◇

 ■安倍元首相も説得に腐心
 「ここはアンタッチャブル。近寄りがたいよね」

 鳩山内閣発足直後、官僚出身のある副大臣は、東京・霞が関の合同庁舎4号館にある内閣法制局長官室の前でこうつぶやいた。

 内閣法制局は各府省庁がまとめた法案を審査する役割も担う。憲法を含む他の法律と矛盾しないとお墨付きをもらわない限り、閣議決定までたどりつけない。

 自衛隊の海外派遣に関する法律を担当したある官僚は、内閣法制局側の見解とことごとく意見がぶつかり、一時、出入り禁止を申し渡されたという。

 内閣法制局の定員は77人。大半が全府省庁から出向してきた法律に詳しい官僚で、その頂点に立つのが内閣法制局長官だ。天皇陛下の認証が必要となる認証官ではないのに閣議に出席できるのは内閣法制局長官のみ。戦後5人の長官OBが最高裁判所判事を務めている。

 安倍晋三元首相は集団的自衛権の行使を検討する懇談会を設置する際、宮崎礼壹長官(当時)を3回にわたり首相官邸で説得するなど、配慮に腐心した。集団的自衛権に関する政府解釈を見直したい安倍氏に対し、法制局側は長官以下幹部らの辞任もほのめかして抵抗したとされる。

【主張】通常国会召集 疑惑解明に国政調査権を
2010.1.18 03:01
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100118/stt1001180301000-n1.htm

 平野博文官房長官は法改正を待たず、内閣法制局長官に答弁させない方針をとった。集団的自衛権の行使の問題など国益にかかわる政策の憲法判断を、内閣法制局に任せていたことを改めようというものだ。
 日米同盟の強化につながる集団的自衛権の行使容認に向け、行使を阻んできた法制局長官答弁の枠を離れた議論を歓迎したい。

 「通年国会」への転換が与党の改革案に入っていないのは不十分だ。会期を決めた後は、政策の中身より法案審議の日程闘争に重きが置かれる従来のやり方から、早急に脱しなければならない。



“法の番人”不在に 内閣法制局長官の答弁を禁止 通常国会冒頭から
2010.1.14 16:18
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100114/plc1001141618009-n1.htm

 平野博文官房長官は14日の記者会見で、18日召集の通常国会から、内閣法制局長官には国会答弁をさせないことを明らかにした。官僚答弁を禁止する国会審議活性化関連法案の成立を待たずに、法制局長官を国会答弁ができる「政府特別補佐人」から除外する。憲法解釈に関する答弁は各閣僚が質問に応じて行う。

 法制局長官は自民党政権下で憲法解釈権を事実上握り、「法の番人」と呼ばれたが、平野氏はこのような考え方を「法制局長官は法的見地から内閣に助言する立場だ。法の番人という認識は少し違う」と退けた。
 政府が永住外国人に対する地方参政権(選挙権)付与法案を国会へ提出した場合、憲法論議は必至のため、法制局長官の答弁禁止は審議に影響を与えそうだ。



民主党国会改革の内部資料が判明 法制局から「憲法解釈権」剥奪
2009/12/10 01:46
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/334073/

 民主党政治改革推進本部(本部長・小沢一郎幹事長)が作成した官僚答弁の禁止など国会改革の詳細を記した内部資料が9日、明らかになった。資料は国会法など国会審議活性化関連法案の骨子と想定問答集。想定問答集は、内閣法制局長官について「憲法解釈を確立する権限はない。その任にあるのは内閣だ」とし、自民党政権下で内閣法制局が事実上握ってきた「憲法解釈権」を認めない立場を強調している。

 さらに「内閣の付属機関である内閣法制局長官が憲法解釈を含む政府統一見解を示してきたことが問題で、本来権限のある内閣が行えるよう整備するのが目的」と明記した。法制局長官の国会答弁を認めないことを通じ、憲法の解釈権は国会議員の閣僚が過半数を占める内閣が実際上も行使する方針を示したものだ。

 ただし「憲法解釈の変更を目的にして、今回の改正があるわけではない」と、憲法9条の解釈変更への道を開くとして警戒する社民党への配慮も示した。

 法案骨子は(1)国会で答弁する政府特別補佐人から法制局長官を除く(2)内閣府設置法と国家行政組織法を改正し副大臣、政務官の定数を増やす(3)衆参両院の規則を改正し政府参考人制度を廃止(4)国会の委員会に法制局長官を含む行政機関の職員や学識経験者、利害関係者からの意見聴取会を開く-の4点を挙げた。

 民主党政治改革推進本部は9日の役員会で骨子案を大筋で了承した。来週にも与党幹事長会談を開き、合意を得たい考えだ。

与党3党 官僚答弁禁止の法改正で合意
2009.12.7 12:19
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091207/stt0912071119001-n1.htm

 民主、社民、国民新党の与党3党は7日午前、国会内で幹事長・国対委員長会談を開き、官僚答弁を原則禁止する国会法改正など国会改革の進め方について、与党間で国会改革関連法案の法案策定作業に着手し、来年1月召集の通常国会冒頭で法案を提出することで合意した。平成21年度第2次補正予算案とともに成立を図る考えだ。

 社民党はこれまで、内閣法制局長官の答弁制限によって「憲法解釈が変更されかねない」として慎重姿勢を取っていた。このため、民主党は「新たな場」を設けて官僚から意思表示をさせて議事録に残すなどの妥協案を提示。社民党はこの案を受け入れることを基本的に了承した。国民新党は改正に賛成している。国会改革については、民主党の小沢一郎幹事長が強い意欲を示してきた。


新政権、憲法どこへ 小沢幹事長「法の番人」封じ
朝日新聞(2009年11月3日)

 日本国憲法が1946年に公布されてから、3日で63年。改憲問題をめぐる民主党の対応に注目が集まるなか、小沢一郎幹事長が唱える「官僚答弁の禁止」が論議に悪影響を及ぼしかねないと心配する人たちがいる。ただ、目の前の課題や党内事情もあって、新政権にとって改憲は「後回し」の状態だ。

 「これは官僚批判の名を借りて、憲法の解釈を変えてしまおうという思惑では」

 神戸学院大法科大学院の上脇博之教授(憲法学)は、ニュースで見かけた民主党の動きを気にかけている。

 発端は先月7日の小沢一郎幹事長の記者会見。「法制局長官も官僚でしょ。官僚は(答弁に)入らない」と語り、国会法を改正して内閣法制局長官の国会答弁を封じる意向を示した。

 内閣法制局は「法の番人」とも呼ばれる。法理を駆使して、ときの政府の意向をかなえる知恵袋の役を果たす一方で、例えば海外での武力行使をめぐって「憲法9条の下ではできない」との見解を守り続け、憲法解釈に一定の歯止めをかけてきた。

 一方、小沢氏はかねて「国連決議があれば海外での武力行使も可能」と主張し、何度も法制局とぶつかってきた。新進党首だった97年には、日米ガイドラインの憲法解釈をめぐって橋本首相に代わって答弁した法制局長官を「僭越(せんえつ)だ」と国会で批判。03年には自由党首として「内閣法制局廃止法案」を提出した。

 こうした過去の言動を見れば、憲法解釈も政治家が行うというのが、小沢氏の隠れた真意だと上脇教授は見る。

 「もしそうなれば……」。ある元法制局幹部の頭によぎるのは、05年まで衆参両院で開かれていた憲法調査会の議論だ。「きめの粗い感情的な憲法論に終始し、国政が混乱する」と元幹部は懸念する。

 「法制局なしでやってみたらお分かりになると突き放したいところですが、憲法上できないことを『できる』と政治家が言い張って、被害を受けるのは国民。その被害が、二度と回復できないものだったら、どうしますか」

 04年までの2年間、長官をつとめた秋山収さん(68)は、小沢氏の狙いを「9条の解釈が気にくわないという、その一点でしょう」と言い切る。

 内閣が変わるたびに、法制局は、長年積み重ねた国会答弁をもとに「戦争放棄」の9条や「政教分離」の20条など憲法の課題を新首相にレクチャーする。議員が提出する質問主意書の政府答弁にもすべて目を通す。

 秋山さんは、そうした後ろ支えがなければ、政治家の「脱線答弁」が頻発し、それが定着してしまうという。国の基本的なあり方は、憲法改正という民意を問う手続きを経るべきだと秋山さんは考える。「その時々の多数政党の力で9条の解釈が揺れ動くのは憂慮すべき事態だ」